137 グレイの帰省 妖精村 2
グレイは新しい花畑用の土地を確認して、スラの妖精印の肥料を広い畑にまき散らした。ここなら魔素が濃く土さえ良ければフェアリーリリーの種まきがすぐにできる。長老たちは一度は外界に出ている。魔法が使えるはずだ。
「長老、土魔法ができる長老たちで新しい花畑の土を耕してください」
グレイはモスの真似をして土をポコポコと耕し先ほど撒いた肥料と土を混ぜ込む。水魔法が苦手だがグレイは水撒きをする。これを見本に長老たちに働いてもらう。
「長老たちはまず新しい花畑の準備をしてから、フェアリーリリーの種を撒いてく下さい。花の芽が出るまで時々水撒きをして、風魔法で魔素をかき混ぜてください。新しい花畑に妖精花の花蜜がなるまでこれを続けると良いと思います。そして残りの妖精花の花蜜を少しずつでも収穫してください」
「暴れん坊のおまえが・・・たいしたものだ」
グレイは新しい花畑を長老に託し、元の花畑で残りの種を回収した。長老に教わった魔法がこんな時も役に立つことに感謝しなければならない。収納と時間停止で花の種を保存しておくことが出来る。種を採取した花は見る間に枯れていった。フェアリーリリーは1000年の時と共に実を残すことで次代につなげているようだ。
「魔素が薄い?1000年も使われた畑なら仕方ないか。これから1000年かけて畑を癒すことでフェアリーリリーにあった畑がつくられる。まだ半分くらいは花が数個咲いているが、このままではすぐに実をつけ枯れてしまう。モスがいれば・・・」
モスが新しい屋敷の裏の畑に枯葉を混ぜ込んでいたことを思い出した。スラの肥料だけでは足りないものがあると言っていた。ここに足りないのは魔素なら魔素を含んだ枯葉や枯草を運び入れれば今の残っているフェアリーリリーを長持ちさせることが出来るかもしれない。
グレイは数日新しい花畑の準備を手伝ったのち長老に相談を持ち掛けた。さすがにグレイ一人で広大な妖精村の枯葉を集めることは出来ない。またそれを畑に撒きこむこともできない。長老たちも新しい畑づくりと種まきでへとへとの様子だった。
「長老たちお疲れ様、無事に種まきが終わるまでまだかかります。さらに芽が出て花が咲くまで長い時間かかります。一休みしましょう。お茶を飲みませんか?」
「おお、助かった。フェアリーリリーが花をつけるまでに数十年かかるようだが少しは短縮できそうだ。ありがとう」
グレイは幾枚かのお皿にライが作った魔力入りのたまごボーロをのせ、お茶と共に差し出した。妖精猫は基本魔素だけで生きていける。お茶をたしなむのは外界に出たことのある妖精猫だけだ。妖精村のどこにでも咲く黄色い花の根をお茶にしたものだ。
日当たりの良い所に群生する花弁が細長く多数の花びらが円盤状に頭花をつけ緑の葉は細長くギザギザがある。茎や葉を傷つけると白い液が出るが毒は含まれてはいない。長く伸びた根を良く洗い、刻んだものを乾燥させてお茶にしている。グレイは魔法でお茶を淹れ長老たちに差し出した。
「「「おお、久しぶりのお茶だ」」」
「・・・長老たちはこのお茶を飲んでいませんでしたか?」
「先代の長老が良く出してくれたが作り方は消失した」
「なんで?」
「俺たち妖精猫は寿命が来たら突然消えるからな」
「それだからちゃんと記録に残さないと後のものが困ります。今回のフェアリーリリーのこともそうだけど」
「そう言うがどうにかなるもんだ。おい、この丸いものはなんだ?凄く美味しいぞ」
「「「美味い」」」 「「「美味い」」」
「このお茶だって、お菓子だって村で作れます。体に優しいお茶だから作り方を教えますから皆さん覚えてください。このお菓子は芋から作られています。畑を作ればこんなお菓子をいつでも食べることが出来ます。このまま何もせずいたら妖精村は消えてしまうかもしれません。べつに外界に出ていくことが唯一ではないと思います。村の中で自給自足すればいい。何かをする楽しみを皆が持てばいい。枯れ始めたフェアリーリリーの畑だって、皆に手伝ってもらえば細々でも妖精花の花蜜を収穫できます」
「ほ、本当か?」
「村の森の枯葉を残ったフェアリーリリーの畑に撒いて魔素を補ったら白い花が一個から三個になっていた。1000年使われた花畑の魔素がへっているようです。俺の力では数本のフェアリーリリーしかできないが、村中の妖精猫に定期的に森の枯葉や枯草を集めてもらい、新しい花畑が出来上がるまで、古い花畑を育てててみたらいいと思います」
「でも村の妖精猫は働かないぞ」
「そこでこのお菓子を餌にしたらいいとおもう」
「餌に?」
「これ美味しいでしょ。籠一杯の枯葉を集めたらこのお菓子をあげるとしたら・・・」
「「「いける」」」
「村の妖精猫は自由気ままに生きている。欲しい物がなければ動かない。働いて得た対価のお菓子の美味しさに夢中になると思います。今長老たちがしている仕事も少しづつ村のみんなにやらせればいい。畑づくりの経験のある長老は畑で芋を作りお菓子を作ればいい。中にはそういうことに目覚める奴もいます。お茶だって同じこと。
あと村の森に木の実がなっています。あれの中にも美味しく食べれるものがあります。村の中で出来る新しいことに目を向けないのはもったいないです。美味しい木の実は種があるからそれから木を育てれば沢山の実がなります。
少しずつでいいです。妖精村の中で楽しみを見つけて過ごしてほしい。変化を嫌うものはそのままでもいいが、できたことが出来なくなるのは食い止めた方がいい。フェアリーリリーの畑が消滅したまま新しい花畑が出来ない間に妖精猫風邪が流行ったらどうなりますか?古い記録にきっと災害の記録があるはずです。せっかく外界に出た経験を見ぬふりして生きていかないで活かしてほしいです」
「遥か昔、妖精村が消滅しかかった記録がある・・・」
「長い時を出来るだけ楽しく生きぬく工夫をした方が良いと思います。俺の知っている妖精たちの中には妖精王の祝福を受けて、妖精なのに人化出来たものもいます。俺でさえ魔力が増え転移の力が強くなりました。フェアリーリリーの花をなるべく長く咲かせれば、他の村を助けることもできます。その手段があるのに使わない手はない。俺は俺なりに外界でフェアリーリリーを探してみます。あとは長老にお任せします」
俺はまだ新しい長老補佐になった「引きこもり兄さん」にライが魔法瓶に詰めたたまごボーロをすべて渡した。
「引きこもり兄さんが一番新しいことを受け入れる下地がある。だからこのお菓子を渡しておきます。瓶には劣化防止の魔法が付与されています。空き瓶になったら野菜でも木の実でも入れておけば長持ちします。フェアリーリリーの種さえも保存できます。何かの拍子に枯れても種があればどうにかなる。うまく活用してください。
それとこれがお茶で、作り方はこれに書いておきました。あと木の実はこれらが食べると美味しいです。この苗たちは甘い実をつけますから森の近くの畑に植えるといいです。これを使えば簡単なお菓子が作れます。私の仲間はお茶とお菓子を木の実や薬草と交換して食べる「カフェ」を営んでいます。結構妖精や精霊に人気があるんですよ」
「お前は・・・」
「俺は感謝しているんです。ここまで生き残れたのはお兄さんのおかげなんです。今の俺は本当に良い奴と契約しています。このお菓子の魔力は優しいです。俺が村に帰るといったら土産を沢山持たせようと沢山ライは作ってくれました。でも妖精村には毒になるからこのたまごボーロだけにしてもらいました。これが村の活性化に役に立てばいいです。変化を嫌うならお兄さんが食べてくれればいい」
「お前の契約者はライというのか。お前は一回りも二回りも大きくなって帰って来たな。とりあえず残っているフェアリーリリーを長く持たせることに専念するよ。おまえの持ち帰り分の妖精花の花蜜は渡しておく。三毛色の奴をよろしく頼む」
グレイは「引きこもり兄さん」にすべてを託しライの待つ屋敷に向かった。
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