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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
134/176

134  楽しいお菓子作り

 ライの引っ越し祝いを兼ねて屋敷に来たミリエッタは屋敷の中に人の気配がない事に気が付いた。


「ライ、屋敷の使用人はどうするの?私が手配しましょうか?」


「いいえ、わたしは貴族としての社交は出来ないから侍女なども必要ないです。自分のことは自分で出来ます。庭師は以前からモスたちとの付き合いがありますし、彼は精霊や妖精に好かれていますから残ってもらいました。食事などは私が作れます。他の家事は魔道具を使うので大丈夫です。人外がのびのび暮らすには人を雇えません」


「リリーが大変ではないの?」


「リリーには迷惑かけますが、彼らを守るためには仕方ないと思っています。わたしも出来る事を頑張ります。元々貴族のお嬢様ではありませんからどうにかなります。グレイも手伝ってくれます」


 そんな話をしていたらリリーは人型になりミリエッタに挨拶をした。リリーの挨拶が終わると静かにその後ろには紺色のワンピースに白いエプロンをつけた小さい魔蜘蛛たちが手なのか足なのかに箒やモップ、雑巾に桶を持って部屋に入ってきた。


「あら、可愛いメイドさん達ね。リリーがこの屋敷の家政婦長になったのね。この子たちはリリーのお弟子さんかしら?」 


 うやうやしくリリーはミリエッタに頭を下げた。


「そうなんです。屋敷が広いのでリリーを助ける手はあった方が良いと思っていたら、リリーが見つけてきてくれました。気まぐれな妖精や精霊は使用人に向かないそうです。小さい魔蜘蛛たちは真面目でリリーの教えをすぐに理解して仕事をしてくれています。リリーが家事魔法も少しずつ教えているようで、いずれは立派な家事魔蜘蛛になるそうです」


 リリーは小さな笛を一つ吹くとメイド魔蜘蛛たちはきれいに整列してミリエッタに向かい深いお辞儀をした。その後もう一度笛を吹くと出口に近い魔蜘蛛から手を振りながら廊下に向かって部屋を退出していった。綺麗に足をそろえ歩く姿は集団演技のようだった。ライはメイド魔蜘蛛達を見送りながら小さい魔蜘蛛の数が増えたような気がした。メイド魔蜘蛛が退場する姿を最後まで見つめたミリエッタは少し困った顔をしてライに声を掛けた。


「随分個性的なメイドさん達ね」


「そうなんですが優秀ですよ。ミリ様以外に人は招かないからこれでいいと思います。ここは精霊や妖精、人外の憩いの庭であり屋敷になっていますから」


「そうね。以前より屋敷の外観も綺麗になっていますね。家事精霊が住む屋敷とは素敵ですね。ライと出会えていろいろなことを知ったわ。わたしたちは、人だけでなくすべてのものが暮らしやすい領地にしないといけないわね」


 オズとミリエッタとライで昼食を済ませ、お茶をしながらライとミリエッタは取り留めない話をしていた。ミリエッタの腕の中でサファイアは寝ていた。外からはオズの声が聞こえる。


「ライ、お邪魔するよ。ミリばっかり先に来てずるいよ」


「あらら、ここにも子供がいましたね。サファイアが目を覚ましてしまいましたわ」


 ミリエッタに抱かれていたサファイアはオードリアンの姿を見たら、オードリアンに手を伸ばしていた。今にも落ちそうになっているサファイアをオードリアンは軽々抱きあげ庭を駆け回っているオズを見せた。


「にーに。にーに」

 

 サファイアは小さな手を振りながらオズに声をあげる。オードリアンとサファイアに気が付いたオズはジルに乗りながら応接間のテラスに飛び込んできた。オードリアンは目の前の窓ガラスに古竜が張り付いたのを目にして固まってしまった。


「にーに、わんわん、かーいね」


 サファイアはオードリアンの腕からオズに手を伸ばした。オズはサファイアを受け止めるとジルの背に乗った自分の前に乗せた。「きゃきゃ」と声をあげながら白い毛を触るサファイアをオズはしっかりと抱きかかえる。ジルはテラスから花が咲き誇る庭に静かに飛び降りた。サファイアとオズを乗せたジルは先ほどとは違い庭の小道を静かに散歩し始めた。その横を古竜がゆっくり歩く。さらにその周りを光の粒が取り囲んでいた。


 妖精や精霊の見えないミリエッタとオードリアンには白いオオカミとその大きさの竜が子供を乗せて散歩しているようにしか見えない。それさえも超自然な風景ではあった。


 オズは昼食後もミケとグレイと一緒に庭園で遊び東屋でお茶をしていた。サファイヤとオードリアンはミリエッタの部屋で仮眠をとっている。


「ライ、お昼のコロッケというもの、オズがとても喜んでいたから調理長に作ってもらいたいの。レシピをお願いしてもいいかしら?」


 ライは快くグレイに届けてもらうと伝えた。ミリエッタは母として二人の子供を慈しんでいるのが良く分かり子供たちもとても懐いていた。そこにオードリアンが入るとさらに賑やかになる。幸せな家族となったミリエッタをライは馬車が見えなくなるまで見送った。


 ライはオズの好きなコロッケやハンバーグ、ポテトサラダにマヨネーズの作り方や応用を書き始めた。オズはライの所で過ごしている時にリリーやライの手料理を食べていた。塩を中心としたこの世界の料理では物足りないかもしれない。最初からそれだけ食べていれば当たり前になるが、スパイスを使った料理になれると物足りないと思う。オズは我が儘を言わず今の食事になれているようだがさすがにライの料理の食いつきの良さにミリエッタは気が付いたようだ。


 ライはグレイとモスが作ったハーブや胡椒も一緒に持たせることにした。さすがに味噌や醬油は馴染みがないのでやめておいた。その代わりサファイアのためにたまごボーロを一緒に持たせることにした。ジャガイモが沢山とれたので片栗粉を作ることができた。孤児院の子供たちにもおやつ用に作りジルに届けてもらうことにした。以前はグレイが転移で野菜などを運んでいたが、今はジルが子供たちに見つからないように院長室の窓下に配達場所を変えて運んでくれていた。


 たまごボーロは屋敷の精霊や妖精、魔蜘蛛たちにも喜ばれ沢山作ることになった。メイド魔蜘蛛は小さな口に入れやすいように米粒の大きさのたまごボーロを上手に作っていった。小さな袋に10個ずつ入れてリボンを掛け、箱型の保存箱に山ほど保存していた。リリー家政婦長が頑張っているメイドや精霊たちに渡すおやつとなった。メイド魔蜘蛛は二対の足で立ち残り二対の手を上手に使ってお手伝いをしてくれる。ライは数が多いので錬金釜で魔力を込め、たまごボーロを焼き上げていった。さらにライは蜂蜜から小さな飴を色々な果物味にして追加で作っておいた。


 古竜やジルやスライムたちには、たまごボーロは物足りない。ライは米粉で醤油味のせんべいを作ってみた。これが大人たちには好評で、塩、チーズ、味噌、胡椒、砂糖など張り切って作ってしまった。リリーはせんべい派のようで工房の魔蜘蛛や魔羊などに差し入れしていた。おせんべいの後には甘いものが食べたくなる。バターと砂糖のたっぷり入ったクッキーを作りだしたら、メイド魔蜘蛛たちも匂いにつられ集まってきた。メイド魔蜘蛛はライの横で自分たち用に小さなクッキーを作り出した。


 ジャガイモなら薄切りを油で揚げたジャガイモフライに塩を振りかけてパリパリ感を楽しんだり、厚目に切ったジャガイモをゆっくり揚げて塩をまぶしたほっこり揚げ。これは大人組も子供組にも大人気で、グレイはチーズを粉にしてまぶしたものを好んで食べていた。


「食べ過ぎるとおデブさんになるよ」


「「「えっ・・」」」


 山盛りのジャガイモフライに伸びていた手が止まったのにはみんなで笑ってしまった。グレイは一皿自分の収納に確保した。それを見ていたモス達精霊は小さなジャガイモ薄切りフライを収納の付いたポケットに押し込んでいる。それを見たメイドたちも白いエプロンに押し込んだ。白いエプロンが油染みが出来てしまった。リリーは慌ててメイド蜘蛛たちを注意しようとしたがライがそれを止めた。汚れたエプロンに『クリーン』をかけ小さなポケットに収納魔法を付与することにした。


 ライは以前、高熱病の治療方法を発見後に教会に感謝を伝えに行ったとき、女神より二つスキルを授けてもらっていた。ストーンの魔法に見習い神とザッツ国騒動でグレイはライに伝えることを失念していた。


 ライはグランド国に戻ってからグレイにスキルを教えてもらった。一つは付与魔法でもう一つは取り寄せ魔法。付与はライの持っている魔法なら人以外の物に魔法を付与できる。取り寄せ魔法はライの持ち物を離れていても取り寄せることができる。


 座っていても本が読みたかったら本のタイトルを思い浮かべれば手元に本が現れる。便利なのかはよく分からないが、盗まれたりしたものも簡単に取り戻せる。しかしこれも鑑定と同じで何度も使って育てないと付与の種類や力が増えない。取り寄せも距離や量が制限されるらしい。まず手始めにメイド魔蜘蛛の小さなポケットに保存と拡張魔法を付与した。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
チーズ味のお菓子は苦手だけどチーズが乗ってるお菓子は割と好きですわ
[一言] メイド魔蜘蛛、かわいいねえ。コミカライズされないかなあ。
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