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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
117/176

117  盗賊の村  1

 ライはザッツ国の王都からいくつかの街や村で治療や薬の鑑定、薬の交換をしながら馬車で十日ほど走ると細い街道に出た。街道のずっと遠くに草原の中にぽつりと高い石壁が見える。石壁の高さもあるが幅も広い、大きな街の様なのでほっとする。久々に寝台で休めるかとライたちは期待しながら石壁の街に向かった。


 石壁の門で、門番に高熱病の治療しながら毒の熱さましと正規品の交換に回っていると伝えた。ザッツ王宮からの指令書(身分証明)を見せた。門番はよく見た後にしばらく待てと別室に案内した。案内された部屋は石に囲まれた牢の様になんの家具もない部屋だった。鉄格子がないから部屋と言ったのだろう。


『随分厳重だな。お触れはとうに出ているはずだ』

「グレイ、随分高い石壁だったね。半分ぐらいまでは古かったけど最近増築されたみたいだね」


「グレイ、普通に話してもらえないか?俺たちに念話は理解できないから話が見えない」


「えっ、護衛の騎士さんが・・・」


「ライ、本当に気が付いていなかったのか?ライの知ってる護衛騎士だぞ」


「えっ、もしかしてストーンさん?」


 恥ずかしそうにいつも俯き加減の護衛騎士は顔を上げた。そこにはグランド国の王都で別れてたストーンがいた。ストーンの話では、魔力暴走を防ぐために魔力感知から魔導師団で訓練を始めたばかりだったが、魔導師団がザッツ国に向かうことになり、ストーンの指導員もザッツ国に出向くため訓練は一旦中止になった。


 東の公爵地に帰ってもいいと言われたが、ストーンは今は魔導師団の籍になっているので帰るところがない。それならザッツ国に護衛目的の派遣ならストーンでも役に立つだろうと参加を申し入れたらすんなり許可が下りた。


 ストーンは勢い込んで魔導師団に向かったのに、何も身に付かないうちにライと顔を合わせるのが恥ずかしく、隠れまわっていた。今回ライが王都外に出るなら、御者でもいいから共に出たいと魔導師団副団長に願い出た。エックは同郷ならライも気詰まりがしないだろうと許可を出して、ライの御者兼護衛として一緒に街や村を回っていた。ライは御者に話しかけてもうつむいたまま頷くか首を振るだけだったので、人見知りと思い無理に話しかけなかった。グランド国にいると思っていたから、まさかストーンとは微塵も思わなかった。


 やっと別室から石壁内の街中の教会に案内された。教会には10人ほどの聖職者が出迎えてくれた。


「王都より熱さましの薬とポーションを運んできました」

「ご苦労様です。この街には小さいながらも薬師がおりますので、薬には困っていません。次の街に回してください」


「熱を下げる薬を見せていただけますか?」


「なぜそのようなことを言われるのですか?」


「森で繁殖した毒のアス草で作られた薬が症状を悪化させるからです。高熱が出てとても苦しい思いをしますし回復に時間がかかります」


「高熱病は苦しいのが当たり前です」


「亡くなられた方はいますか?」


「我々は誠意を尽くして治療しています」


『城壁が立派な割に街の中に人が少ない。ガラの悪い男たちが教会を取り囲んでる』


「いえ、教会の働きを疑ったわけではありません。王宮からの指示なので、各村や街を回っています。最近神託がおりませんでしたか?」


「神からの神託ですか?特別に何もありません」


 ライと向かい合う聖職者は落ち着きがない。少しずつ苛立ちが増している。うしろに控える聖職者の体はとっているが、今にも襲い掛かろうとする気配がみられる。馬車からエックおじさんが下りてくる。


「いや、娘が済まない。先ほど盗賊に襲われ、やっとの思いでここにたどり着きました。薬を配る仕事は大変でね。ザッツ国の王宮からの使命に燃えている我が娘は口がきつくなって困っています。ところで、先ほど盗賊と対戦で怪我をした者がいます。此処で休ませてもらえないだろうか」


「ここは高熱病のものしか看れない。あと一日馬車を走らせれば隣の町に出る」


「いやいや、そこまで馬車を走らせたらこいつの体がもたない。薬も世話も全部こちらでするから休ませてほしい」


 教会の聖職者たちは顔を見合わせた。聖職者の一人が外に出て話をつけてくれたのか、空き家を渋々貸してくれることになった。明日にはここを出て行くことを念押しされた。人家の端の空き家と言ったが十分住める家だった。


『ライ、少し出てくる。此処おかしいぞ。こんなに大きな石壁の街なのに子供がいない。声もしない。』


「気を付けて、危なくなったらすぐ逃げて、それとここもしかしたらお酒を密造してるかもしれない。お酒なら貯蔵庫として地下があると思うから気にかけてみて」


 グレイは、頷き姿が消えた。ライは家に入るとすぐに『クリーン』を掛け掃除を開始した。台所もそれほど汚れておらず、薪もすぐそばに置いてあった。水がめは干上がっていたのできれいに洗って、魔法で水がめに水をためた。外の井戸水を飲むのは憚れた。ストーンは家に入ると怪我人のふりを止めて起き上がり、エックと外に漏れ聞こえないような小さな声で話を始めた。


「ライさん、猫は?」


「グレイは、探索に出かけました。街の大きさに比べ人が少ない上に子供がいないんです。ともかくまともな街人がいない。周りで目にする人はくすんだ赤ら顔で、特に鼻が赤いし皺も多い。さっきの教会で主に話した人とエックさんと年は同じくらいだと思う」


「俺、あんな年寄りじゃない」


「そうなんだけど、お酒の飲みすぎで、体を壊しかけてるんだと思う。きっとここで密造酒を作ってる。軒下に壊れた樽が結構数放置されていた」


「ライさんは、よく気が付きましたね」


「薬を作っていると匂いに敏感になるのかもしれない。それと、あの教会の人は聖職者じゃないと思う」


「神からの神託を受けていないからですか」


「当たり、ストーンさんは寝たふりして聞いてました?」


「当たり、それと奥にいた人は皆、剣を隠し持っていましたね」


「えっ、それは気が付かなかった」


「おじさんは嬢ちゃんのもの言いにドキドキしてたよ。怖いもの知らずだな」


 エックとストーンは、家の中から外の様子を窓の隙間から偵察した。ライは中央の井戸に水を汲みに行きながら解毒薬を入れておく。洗濯するふりして、川上から解毒薬を流す。山からの水だから酒を造るなら井戸か川から水を引いているはず。誰かに見られてる気配を感じながら、ライはてきぱきと仕事を済ませ借りた家に戻る。


 ライは一度馬車にもどり食料を持ち出す。魔法袋に入っているが見せかけは必要になる。きっと夜に馬車は荷探しされる。大事なものはないので何されても大丈夫。相手も国からの使者とここで荒事を起こすより、明日には出て行ってもらった方が助かるはず。野宿に慣れているのでそれなりの準備はしてある。


「おお、嬢ちゃん、美味しい匂いがする。結構料理出来るんだな」


「エックさん、ライさんは凄く料理が上手いんです。俺が食べ物がおいしいと知ったのはライさんのお陰です」


「ストーン、お前貴族の家だろ。ましなもの食べていただろう・・・」


 急にエックが唇に指を立てた。ライとストーンは話を中断した。「がだっ」と音を立てて家の戸が動いた。


「さきほどは、下の者の物言いが悪くて済まなかった。けが人は大丈夫ですか?長旅で疲れているだろうから少ししかないが、寝酒に飲んでください」


 突然入り口の木戸が開いて、見知らぬ老人が入ってきた。背は低く、腰が曲がっているが、足取りはしっかりしている。この人から深酒の気配はない。穏やかそうな好々爺に見えるが、入った瞬間に部屋の中をみわたす目は鋭い。


「いやー、ありがたい。なんせ、旅が長いうえに盗賊に会うわ、数少ない仲間は倒れるわ。本当に今晩だけでも地べたじゃないのが助かる。それに寝酒とは好々爺様は、酒の神ですか?」


「あはは、上手いことを言う。国からの使者を疎かにしてはいけません。食べ物はありそうじゃな。ゆっくり休んでください。ところで、盗賊はこっちに向かっていなかったかい?」


「なんか急いでいたようで、俺たちが戦ったのは遅れた下っ端のようです。東に向かいました」


「そうか、そうか、こっちに来なければいいんじゃ。では長居した。失礼するよ」


 好々爺は、腰を叩きながら木戸から出て行った。置いて行った酒をライが鑑定すれば、『禁止薬入り。意欲消失・戦意消失・深い眠り・密造酒2年物水増し』とでた。ライと怪我人は酒を飲まないから大人のエックを酒で酔わせて、情報を聞き出すか早く寝かせてしまえばライたちが何もできないと考えたようだ。明日早朝に街から追い出されるのは確実のようだ。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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