1 この家を出ていこう
この家を出ていこう
この村を出ていこう
私はちびと呼ばれている。両親と兄二人年の離れた5歳の女の子だ。
小さな家と家の前の畑と裏の薬師のお婆ちゃんが私の世界だった。
小さい体。ほとんどしゃべらないので、陰気な子だと言われている。
黒髪に黒目は、両親にも兄たちにも似ていない。
毎日、裏の薬師のおばあちゃんの所で働いている・・・のだろうか?
お婆からのお駄賃を、毎日1鉄貨貰ってお母さんに手渡しているから、そうだと思う。
家に居ても野良仕事の役に立たない。お婆に子守を任せているようなものだ。
それでも少しづつ、お婆の手伝いが出来るようになった。
それが1鉄貨貰える理由。1枚の鉄貨がどれほどの物か私にはわからない。
だって家から出たことがない。お婆以外の村人なんて、たまに来る村長しか知らない。
それにお母さんもお父さんもお金を稼いでない。いつも家でできた野菜や森の実りをどこかにもって行く。それはパンになったり、少しの肉になったりして戻ってくる。
兄ちゃんたちは食べ盛りで、食料はちびのとこまで回ってこない。
物々交換が当たり前の村で貨幣は珍しく、そして貴重だ。
たまに行商の人が街からくる。お婆の所には商人は薬の買い付けに来る。
ついでに商品を売るらしい。お婆の薬草は特別らしく商人は喜んで買っていく。
その時甘くて、小さな塊をライにくれる。
お婆は「蜜玉」って言っていた。それ以来商人が来るのが待ち遠しくなった。
夜遅く父と母が、小さい声で話していた。
「ロンの結婚で金が必要だ」
「ちびの迎えも来ないし、もう良いんじゃないの」
「そうだな 飯は食わせたし大きくなった」
「そうね。結婚するなら部屋や牛小屋の増築も・・・」
「結構かかるな」
「・・・・・・」
「村長に相談して春に出すか?」
「そうね。村長も孫娘の嫁ぎ先に不審な子供が居るのも困るだろうし・・・」
「薬師のおばあには村長から言ってもらうわ」
「結構可愛がっていたからね・・・反対するかな?」
「うちが拾ったんだから…無理言わないだろ」
なんとなく分かっていた。ちびはここの家の子でない。だって、・・・・。
撲られたり怒鳴られたりはしないけど名前を呼ばれたことがない。
名前があるのかもわからない。
家か薬師のお婆のとこしか行ったことが無い。村の祭りも、行商人が来ても外には出してもらえなかった。
でも、それが普通だと思っていた。
ちびは、村から隠された居ない子供だった。
居なくなっても誰も困らない。すっと心の中のもやもやが消えた。
売られる前に、ここを出ていこう。
誤字脱字報告ありがとうございます。