ゲレイ
◯◯に出会って僕は変わってしまったと思う。それは自分でも制御出来ないほどの大きな“何か”と、紛れもない“生”の言葉に惑わされてたんだと思う。
*
目を覚ました僕を襲ったのは、この世のものとは思えない程の虚無感だった。脱力した空気の中、息を吸うのがやっとの僕に、一縷の望みをくれたあの小説を、今でも覚えているのだろうか…
*
人間としての感情が消えてしまったのは、いつからだろうか。それを愉しんでしまう自分がいる。酷く悍ましい何かに取り巻かれているのかもしれない。でも、何も恐くない。僕は強いから。そう思ってた。
あんなことが起こるなんて神様も、想像なんてしてなかったんだから。
*
暑い。熱い夏の日、それは夢の中で共存するのだと、僕は初めて知ったんだ。そんなもの、ただの汚物でしかないことに、今更気付いたって遅いじゃないか。
*
来ました。孤独です。
襲われました。猛毒です。
ドクドク溢れる一筋の血光です。
赫く染った僕の心臓です。
前に廸むのです。
いつまでも。
そしたら、見えるのです。
希望に化けた絶望が。
*
抉り取られたその眼と合図して。 引き裂かれた腹を追い抜いて。ぶち撒かれた内蔵に背を向けて。斬られた首は、転がして。抜かれた舌は投げつけて。埋められた土を掘り返し、君を見つける7月6日。
*
透き通った綺麗な夏に似合わないような唄を歌って、遠くに出かけた少年兵が、死にました。
戦争なのです。
また独りで、一人で、死んでいく。
友達は、死にました。
お母さんは要りません。
僕は独りで生まれ変わるのです。




