眠るから、その前に。
掲載日:2020/05/14
すー、すー、すー。
半渇きの髪の先を掠めていく。
そっと触れたい華奢な寝息。
静寂を細い視線でかき混ぜる。
すー、すー、すー。
半べその頬の坂を駈けていく。
そっと抱きたい未熟な寝息。
静寂を滲む視線でかき混ぜる。
カッ、カッ、カッ。
革靴で刻むように、細切れの時間に急かされた。
同じ体温でいいよ。
顔も見せない誰かに言われた気がした。
同じ眠りでいいよ。
名前も言わない誰かに言われた気がした。
同じ道でいいよ。
チッ、チッ、チッ。
大人に化けた子どもたち、正体ばれたら舌打ちされる。
激しい夜と闇のせめぎ合い、倦怠と孤独を飲み込ます。
しー、しー、しー。
沸き立つ焦燥を宥めて、綿菓子のように静寂を爪に絡めて。
しー、しー、しー。
眠りは邪魔しないで、絡めた静寂を味わって。
噛み締めた唇に、言えなかった願い事が激しく滲みる。
すー、すー、すー。
ひび割れた指先で、役立たずの魔法をかけてみる。
同じ夢が見れたなら。
同じ眠りが、同じ痛みが続くなら。
同じ道を行くのなら、それなら永久に。
しー、しー、しー。
危うさは素知らぬ顔で添い寝する。
育む季節を忘れないで、役立たずの魔法を解いてみる。
夢見るよりも、明日のことは解らない。
今はにじり寄る予言を飛び越える時間。
不確かな運命は邪魔しないで、目を閉じて。
そっと静寂と寝息をかき混ぜて。




