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お江戸物語  作者: 六子
9/10

五話目:初めての料理〜【中編①】〜

「逃すな!!」


瑚子はひことの手を引き、必死に

すぐ背後に迫り来る浪士達から逃げていた。


瑚子が咄嗟に自身の魔法を使って隙を作り

何とかあの場は逃れることに成功したが

複数いる男達から逃げ切るのは難しいだろう。


「っ、このっ!」


再び瑚子が魔法を使い、発生させた

小さな氷の粒を浪士達の方へ飛ばすが


先程隙を作ったのと同じ方法は読まれていた様で

1人の浪士に、刀で一瞬にして切り刻まれた。


(くっ、やっぱり私の魔法じゃ無理だわ)



和深雪なごみゆき


氷属性とそして治癒属性を

持つ瑚子の魔法は


怪我などを治すのを早める

特殊な氷を生み出すことは出来るが

天然の物に比べれば脆く、戦闘には不向きだ。




何とか浪士達を撒く方法はないかと

走りながら考えていた瑚子だったが


「!?ひこと様っ!」


全力で走っていたせいだろう。


草履の鼻緒が勢いよく切れてしまい

体制を崩したひことを咄嗟に庇った瑚子は

ひことと共に地面に倒れこむ…


その隙を浪士達が見逃すはずもない。


ひことと瑚子はあっという間に

浪士達に取り囲まれてしまった。




「人質が2人になるとは想定外で

 少々手間取ったが、まぁいい。


 徳川雷を呼び寄せる為の餌は

 多いに越したことはないからな」


「何、大人しくしていれば命までは取りはせん。


 まぁもっとも……

 徳川雷を葬った後は人質は好きにして良いとの

 お達しはあるがな」


「へへ…」



瑚子が、隣で身体を縮こませ怯えながら

震えているひことを庇う様にしつつ

下衆な笑いを見せる浪士達を睨みつけるも

効果はない。


「2人共中々可愛い面してやがるからな。

 俺らが可愛がって飽きたら遊郭にでも

 売り飛ばしてやるよ」


女好きであろう1人の浪士が

反抗的な目を向ける瑚子の顔に手を伸ばすが…



「…気安くこの子に触らないでくれるか」



浪士の手は、瑚子の顔に触れる直前で

突如現れた眼鏡をかけた男により妨げられた。


「貴様何者だ!いつの間に!?」


突如乱入してきた見知らぬ男の姿に

浪士達は慌てながらも一斉に刀を構え出すが


刀を向けられても尚

眼鏡をかけた男は全く動じる気配はない。


それどころか強い怒りのこもった

眼差しを浪士達に向けている。



「俺はこの黒髪の女の子の兄貴さ。


 …お前らよくも大事な妹を危険な目に

 合わせたな」



その言葉と同時に、先程瑚子の顔に

手を伸ばしかけた浪士の身体が

一瞬姿を消し、地面へと叩きつけられる。


「ぐはっΣ」


「正和!貴様ぁぁあ!皆の者かかれ!!」


それをきっかけに、浪士達は一斉に

眼鏡の男めがけて斬りかかってきた。






戦闘が始まり、怯えるひことの手を

優しく握りながら、瑚子は穏やかな声色で

話しかける。


「大丈夫です、ひこと様。

 私のお兄ちゃん…いえ、兄は意外とやる人なので」


恐る恐る、顔を上げたひことの目にうつったのは

兄の勝利を信じてやまない妹の眼差しであった。



五話目:初めての料理〜中編②に続く〜

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