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お江戸物語  作者: 六子
8/10

五話目:初めての料理【前編】

✳︎魔法の存在する架空の江戸時代。

携帯やら何やら江戸らしからぬ物も登場します。





ーーーーー






「わ〜これがお江戸の町なのですね!!」


お江戸の町に着くなり

名門武田家の御令嬢、武田ひことは

まるで子供のようにはしゃいでいた。


城で籠ってばかりの姫様にとっては

見るもの全てが新鮮なのだろう。



(俺も初めて町に来た時はこうだったな)



はしゃぐひことの姿に

第八代征夷大将軍 徳川雷は


かつて初めてお江戸の町に

遊びに出た日の自分の姿を重ねて

笑みを浮かべた。




ーーーーー




神楽屋にひことを連れていきたい旨を

伝えてから早3週間…


今日はこの後、12時半にひことを連れて

神楽屋にお邪魔することとなっている。



候補の日時の連絡を、店主の晴から受けた際

どれも普段は神楽屋が閉まっている

日時ばかりで、雷は大層驚いたものだった。



恐らく、定食屋初体験のひことが

少しでも寛げるようにと

他に客のいない日時を選んだのだろう。



(ほんと…昔から気のまわる男だなあいつは)


同い年でありながら、たまに晴が

とても年上の兄の様に感じる事が雷にはある。


(やっぱあれか?料理をする影響か?

 自然と相手を思って

 気遣いする力がつくのかねぇ…


 うーん…俺もたまにはメシ作ってみるか)



そんな事をぼんやりと考えていた雷だったが

聞こえてきた12時を告げる鐘の音に

ハッと我にかえった。


ここから神楽屋までは15分程かかるので

ぶらぶら町を眺めつつ、神楽屋に向かい始めて

丁度いい頃合いだ。


「ひこと、町ん中みながら

 そろそろ神楽屋へ………?ひこと?」


…先程まで、はしゃいでいたひことの姿がない。


雷は瞬時に状況を察すると

ひことを探すために慌てて駆け出した。





ーーーーー






一方その頃


神楽屋の看板娘、毛利瑚子は

兄の晴に頼まれた卯の花を


先程、雷やひことのいた付近の

豆腐屋で購入し、急ぎ足で

帰宅している最中であった。



「今川焼き〜今川焼きはいかがですか〜!」


今川焼きの、のぼり旗がゆらめく屋台から

聞こえてきた声に瑚子は思わず足を止めた。




今川焼き


小麦粉・卵・砂糖を水で溶いた生地を

型に流し込み、餡を加え

焼いて作られた和菓子である。


餡は小豆のものが一般的だが

最近は、カスタードクリームなどが

入ったものも発売されているとかいないとか…



御座候、大判焼き、回転焼き…

全国で色んな呼ばれ方をする菓子だが


日の本人にとっては馴染み深い

和菓子の1つと言えるだろう。


晴も瑚子も、この和菓子は好物だ。



(よし、買って帰ってお兄ちゃんと

 今日の夜にでも食べよ♫)



早速財布を取り出そうとした瑚子だったが


「すみません」


「?はい?」


「この今川焼き?なるものは

 どの様な食べ物なのでしょうか?」


突然背後から話しかけられ

振り返った瑚子は一瞬言葉を失った。


そこには以前、雷が見せてくれた

写真通りの…


いや写真でみた以上に美しく

気品のある女性がそこには

立っていたのである。



「あの…もしかして…ひこと様…でしょうか?」


「?あら?私の事をご存知で?」





ーーーーー





「まぁ!神楽屋の兄妹様だったのですね!


 雷様より以前から話は伺っておりましたが

 お会い出来て光栄です!」


「こ、こちらこそお会い出来て光栄です」


「それにすみません、菓子までいただいてしまって」


「いえ、お、お気になさらず」


「帰ったら婆やと一緒に食べるのが楽しみです✨」



(うーん、これは…

 ひこと様はまだ気付いていない様だけど

 雷さんとはぐれちゃってるパターンだよね)



ひことの傍に雷がいない時点で

頭のいい瑚子は、何となく状況を察していた。


今川焼きの屋台の傍には

他にも沢山の屋台や店が並んでおり


先程から、ひことは目を輝かせつつ

眺めてまわっている。



隙を見て、瑚子は自身の携帯を取り出し

雷と晴にメールで連絡は入れたが

未だ返事はない。


ひことから目を離さないよう注意しつつ

雷と晴からの返事を瑚子は待っていたのだが…



トラブルというのは重なるものだ。






「武田家の令嬢、武田ひこと殿とお見受けする。

 …悪いがちょっと我々について来てもらおうか」



人通りの途切れた所で、突如として

瑚子とひことは、柄の悪い数人の浪士に

囲まれてしまったのだった。



五話目:初めての料理〜中編に続く〜

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