表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お江戸物語  作者: 六子
4/10

二話目:3つの小さなフルーツ牛乳【後編】

星麗は生粋の日の本人ではない。

日の本人の母と中華人の父を持つ

ハーフである。


魔法界への留学終了後も

父親の母国、中華国で

両親と共に暮らしていた星麗。


数か月前、母親が実家の銭湯を継ぐ事となり

それに付き添う形で一家揃って

母親の実家近くに引っ越してきた。



まさか母親の実家の銭湯が

毛利兄妹の家の近所だとは思ってもおらず


わかった当初は、大層驚き

お互いに再会をとても喜び合ったものだ。



今ではお互いの店に、時間を見つけては

足繁く通う関係である。



ーーーーー



「お!次の特集は空間移動系の魔法か

これは絶対見ないとな」


いつの間にやらエンディングを

迎えていた魔法特集番組だったが


次週の放送が

自身の使用する系統の魔法の特集だと知り

晴は若干目を輝かせる。



「…晴兄の魔法ってほんと便利だよネ」


そんな晴の様子を横目で見ながら

星麗はポツリと呟いた。


「どうした急に?」


「別に、晴兄の空間移動の魔法が

羨ましいなって思っただけヨ


もし私も魔法が使えたとしてさ

自由に使う魔法も選べるなら

私、絶対空間移動系の魔法を選ぶもん」


「うーん…まぁ便利な面はあるんだけどさ

この系統の魔法って結構疲れるんだぞ


1つ間違うと大怪我に繋がるし

出来れば俺は、シンプルな魔法が良かったよ」


自分の魔法を羨ましがる星麗に対し

晴は自身の魔法の欠点を挙げる。




【時空渡り(ときわたり)】


空間移動に分類される、晴の魔法は


空間を飛び越えて転送・移動が可能な便利な魔法だが

集中力・精神力を多く要求される難しい魔法なのだ。




-----

 



「ふ~ん、そうなんだ」


「魔法が使えるのも良い事ばかりでもないんだって


ま、まだまだ魔法はわからない所が多いからな


もし星麗が今後魔法が使えるようになってさ

使用できる魔法が空間移動系の魔法だったら

色々相談とかのるからな」



2人の会話が一段落した所で

女湯の入り口の扉が開き


腰の上付近まである綺麗な黒髪を1つに束ねた

晴に容姿の似た素朴な女性


晴の妹、毛利瑚子が待合室にやってきた。


瑚子の姿を目にした晴は

星麗に2人分の入浴代金を渡し

さりげなく帰り支度を始める。



「お兄ちゃんお待たせ」


「いや、俺も10分ぐらい前に出てきたばっかだよ

さ、湯冷めする前に帰ろうか」


「うん!あ、そうだ、お代お代」


「もう晴兄から貰ってるヨ、瑚子姉ここねぇ


「…もう、今日は私が払うって言ってたんだけどな」



銭湯のお代は兄妹2人、交互で払う様に

決めていたはずなのだが

晴が気づかない内に払ってくれる事が

最近増えているのだ。


出してもらえるのは非常に有難いのだが

兄にばかり出してもらってばかりで

瑚子としては申し訳ない気持ちになる。



何とも言えない表情を浮かべていた瑚子は

ハッと何かを思いついた様で


待合室の冷蔵庫に視線を向けると

先程星麗が晴に奢ってもらったものと同じ

フルーツ牛乳の紙パックを2つ


冷蔵庫から取り出し、その代金を星麗に渡すと


「星麗ちゃん!これもらうね」


店の入り口で待っているであろう兄を

慌てて追いかけていった。



-----



恐らくは兄妹仲良くフルーツ牛乳を飲みながら

家まで帰るのだろう。


その情景が簡単に脳内に浮かんできて

星麗は小さく微笑んだ。


(ほんと、仲のいい兄妹アルな)


甘く美味しいフルーツ牛乳を飲んだお蔭なのか


いつの間にやらぼんやりとしていた気分は

今は影を潜めている。



「さ、ボチボチ片付けれる所からやり始めヨ」




翠春が閉まるまでは後もう少し…


星麗は、晴に奢って貰ったフルーツ牛乳の

残りを一気に飲み干して気合いを入れるのだった。




二話目:3つの小さなフルーツ牛乳~完~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ