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ビヨンド・ソルジャー  作者: 弘鷹
第1章:サモンデイズ
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03:平等に不平等なスキル配布

お約束のスキル回

「くっそ、オマエマジふざけんな、なんだあのスキル構成。ほとんど『雷神』じゃねえか」


「あっれー?どうしたんですかー?『お医者さん』?いやでも魔力低いんだっけ?じゃあ無理ですね!ていうか九狼どう考えても前衛じゃんご愁傷さまです」


「うるせえ」


いやでも頑張ればワンチャン『隊長』に……いやしかしぐぬぬ、と呻く九狼と勝ち誇り、煽り、ドヤ顔を見せる八雲。そんな二人を見て苦笑する五樹の三人。それなりに八雲の声は大きかったのだが、周りはクラスメイトだけでなく、騎士達すらもただ一人を囲んでいた。


囲まれているのは陽川龍一。日本にいた時からクラスの中心人物であり、召喚後の王族や貴族との対面でも動けない、動かない周囲とは違い真っ先に発言した人物である。


そんな彼をクラスメイト達は口々に褒めそやす。何故なら先ほど彼らの能力値を計測する為に使われた『アーティファクト』と呼ばれた装置(九狼は一目見て「音ゲーの筐体みたいだ」と感じた)によって可視化された情報が、彼が『そうである』と確信させるものだったからだ。


姓名:陽川龍一

種族:人間

称号:魔法剣士、聖剣士、勇者

魔力等級:8

スキル:剣術(S)、体術(B)、光魔法(B)、炎魔法(A)、魔力回復速度向上、魔力放出向上、魔力拡散向上、金剛壁、不動如山、守護の刃、聖剣の担い手


1から10までで表示され、数字が大きければ持ちうる魔力も多量であることを示す魔力等級はクラスメイトの中でも上位に位置する8。そして他の生徒達が多くても5つ程度のスキルをただ一人だけ11個持つという破格ぶり。更にはその人物の方向性や適性を示す称号には魔法剣士、聖剣士、勇者というこれまた『らしい』優遇っぷり。


羨む者は確かにいるが、皆一様に「陽川ならしょうがない」と納得してしまっている。


「それに比べて九狼くーん!」


「よし、殴る」


「ま、まあまあ」


ニヤニヤとこちらを見る八雲に全力でいこうと拳を握る九狼。彼の時に表示されたものはといえば


姓名:葉山九狼

種族:人間

称号:戦士、剣士

魔力等級:4

スキル:剣術(C)、空間魔法(D)


「無能系主人公枠になるには微妙に空間魔法ってレアらしいし、つまり結局モブです!」


ちなみに種族が人間の場合、大半が生まれつき魔力等級1や2であり、戦いとは無縁に、平和に暮らしていればほぼ2か3程度で一生を終える。4は一般兵や魔法が得意な新兵レベルである。


「なあ、五樹。ここはまだスタート地点だから今の俺でもこのバカ殴り倒せるよな?」


「やめなって……」


煽りに煽る八雲ではあるが、彼の魔力やスキルは


姓名:鳥井八雲

種族:人間

称号:魔導士、戦鎚士、戦斧使い

魔力等級:8

スキル:雷魔法(A)、戦鎚術(B)、戦斧術(C)、魔力回復速度向上、魔力効率上昇


更に拳を握る九狼を宥める線の細い少年、仙堂五樹は


姓名:仙堂五樹

種族:人間

称号:傀儡師、錬金術師

魔力等級:6

スキル:傀儡魔法(B)、造形魔法(B)、錬金術(C)、地形探査


「……」(全力ドヤ顔)


「……」(申し訳なさそうな顔)


「……」(二人まとめて箪笥の角に頭ぶつけろと思っている顔)


今にも八雲の顔面に拳を叩き込みそうな雰囲気だが、そんな九狼の後ろから声をかける人物が一人。


「ふふふ、異世界に来ても葉山君達は仲良しですね」


「常磐?その友情も今日この瞬間が最後になりそうだけどな」


「お、常磐のお嬢じゃん。見てろよ、俺の華麗なる雷神伝説が今始まる!」


「ああ、もう……」


そんなやり取りをパーマのかかったボブカットの少女、常磐三徳はニコニコと微笑みながら見る。


「……ちなみに常磐はアレ、なんて出た?」


「測定結果ですか?魔力等級は6でした。スキルは5つほど」


「諦めろ、九狼。どう足掻いても九狼が魔力もスキルの数もクラス内ワーストだって」


「だよなあ……」


煽るのではなく諭すような八雲の口調に九狼も現実から目を逸らすポーズはやめて、改めて龍一を囲む者達、正確には近衛騎士達を見る。


アーティファクトでの計測が行なわれた際、八雲が嬉々として一番手を担当し、そして龍一が二番手だった。表示された龍一の数々のスキルや称号、魔力等級の高さに及び腰となったクラスの男子達が三番手(いけにえ)を誰にするのか交わした視線は、最終的に九狼に収束された。


当然断われる空気ではなく、引き延ばしても結果は変わらないと九狼は躊躇い無く計測を行った。その結果、龍一の時には賞賛でどよめいた騎士達が今度は落胆にどよめき、背後のクラスメイト達は安堵の息をつくのだった。


その後は九狼の計測結果を基準に、自分達の結果はまだマシだったと喜び、そして頭二つ三つほど突き抜けた龍一を賞賛する現状の完成である。


「そういえば先ほど騎士の方に教えていただいたのですが、スキルというのは実のところイコール本人の才能というわけではないらしいですよ?」


「そうなのか?」


「ええ。剣術の高ランクスキルを持っている新兵と低ランクスキルのベテラン兵士が試合をした場合、ベテランの兵士が完封した、という話もあるそうです」


「……つまりスキルランクだけじゃなく、本人の練度も関わってくるってところかな?」


「え、てことは九狼が陽川をしばき倒す可能性もあり?マジかよ九狼ガンバ!」


三徳からの情報と五樹の考察に八雲はいい笑顔でサムズアップ。対して九狼はサムズダウン。


「やるかバカ。陽川って元々剣道やってるだろ。それに喧嘩売ったらその時点で女子の大半敵に回すし、今ならそこに漏れなく騎士達もつく。お得どころの話じゃねえぞ」


「深夜の通販もびっくりだな!下剋る?」


「しねえっての。女子から嫌われる=そのまま男子からも弾かれる。味方いなくなるわ」


「いやいやいや、男子一同心から九狼に勇者(大バカ)の称号を贈らせていただきたく」


「びっくりするほど費用対効果が釣り合ってない……」


「ていうかその称号は日本にいた時からオマエのもんだろうが」


なお、全方位型オタクの八雲だが、持ち前の社交性と顔の良さ故かほぼ全員から好感をもたれているが、偶にやらかす為にクラス内での評価は「顔も性格もいいのに頭が残念」という評価だったりする。


「今日から俺のことは『雷神』と呼んでくれ!……いや、『嵐を駆る者(ストームライダー)』とかも良くないか?お嬢、どう思う?」


「葉山君なら名前にちなんで狼に関係のある二つ名がいいと思いますよ?」


「いや、お嬢様?なんでそこで俺?」


スルーされた八雲の肩を叩く五樹。優しい叩き方がなんだか目に沁みる。


「冗談ですよ?鳥井君は雷に加えて鉄槌と戦斧でしたか……」


人差指を顎に当てて目を閉じる三徳。しばし考えて出した結論は


「……やっぱり『暴雷砕槌(ミョルニル)』とか『剛力無双(メギンギョルズ)』とかでしょうか」


にこりと、有無を言わさない雰囲気で微笑む三徳。むしろその組み合わせで他になにか候補があるんですか?という風情である。


「『空っぽ頭(エアヘッド)』で十分だろ」


「誰がバカだゴラァ!」


「オマエだ『嵐を駆る者(ストームライダー)』」


そこからはギャーギャーワーワーと幼馴染(バカ)二人による普段通りのやり取り。そんな様子に溜め息をつく五樹に何が()しいのか微笑む三徳。


同じ部屋でそんな風に騒がれては周りの目も自然とそちらに向けられる。


九狼と八雲、普段からバカな話で喧嘩をしては次の瞬間には何もなかったかのように話を続け、何かあれば息ぴったりという生まれが一日違い(双子同然)の幼馴染故に出来る芸当。


地球にいた時からよく見た光景に、クラスメイトのみならず教師二人も呆れながらもどこか安心したような目を向け、騎士達もまた、似た視線を向けるのだった。








しかし、何事にも例外は存在する。


例外は4つ。1つは侮蔑。1つは哀れみ。残る2つは獲物に向ける視線。


故にこの瞬間、彼の運命を決める歯車が回りだした。







◆◆◆◆◆




「さて、各自に割り当てられた部屋に荷物を置いて、そろそろダウンしそうだから五樹の部屋に集まったわけですが」


八雲の仕切りによって始まる話し合い。


体力面に不安のある五樹に配慮して、部屋の主はベッドに入っている。二人はその脇に椅子を置いた上で顔を突き合わせていた。テーブルの上には部屋付きのメイドが淹れてくれた紅茶が湯気を立てている。


「早速魔法試してみないか?」


八雲がニヤリと笑う。それは正しくいたずら小僧丸出しといった様子だった。



本編でも後々出て来るけど設定の補足

スキル=本人の才能 ではなく スキル=本人の才能に対する『補正』

成長速度(経験値)と現在の能力にどれだけプラス補正がかかるかどうか。

S~Eで表示される。スキルで本人の限界値が変わるわけではない。

なので才能無しスキル持ちと才能ありスキルなしでは最終的な到達点が違ってくる。

自分にあったスキルを得られるかどうかは結局のところ運次第。

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