出会いの話2/3
「ねぇ!あなた、私と同族だよね!?」
私はたった今すれ違った男性・・いや、男装の彼女に声をかける。
「え?」
彼女の方も振り返る。そして私を見つめて目を見張った。
「きみもそうなんだ!?」
「よかったら少し話さない?同族に会うなんて滅多にないし。」
「いいよ。ぼくも夜まで時間あるから。」
「うーん。2人になれる場所の方がいいよね・・。」
私は個室があるレストランかカラオケかなーなんて考えてたら、
「じゃあ、ぼくのお店来るかい?」
なんて言い出した。
「店?」
「ぼく、バーテンダーで近くにお店を持ってるんだ。夜までは閉めてるし、元々あんまりお客さんも来ないし。」
それはそれで大丈夫なの?とは思ったけど口には出さないで好意に甘えることにした。
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「ちょっと暗いね。」
「今は灯りもつけてないからね。」
彼女はそう言いながら階段を下っていった。私もその後に続く。彼女が開けたドアから中を見る。結構趣ある感じ。でもこじんまりしてる。
「狭いって思ったでしょ。」
彼女は疑問形ではなく断定形で言った。確かにそうだったけど。
「別に儲けようと思ってやってるわけじゃないからね。」
私は進められるまま席に座った。
「お酒飲めるなら何か出すけど?」
「飲めるし好きだけど今日はやめとく。明日朝から大事な商談があるから念の為。」
「そっか。じゃあコーヒーは?」
「コーヒーも好き。」
彼女はじゃあそれを出すよと言いながら慣れた手つきでコーヒーを入れてくれた。うわおいしい。
「ところでぼくはバーテンダーをやってるけどきみはこっちで何かやってるのかい?」
「私?私は普通に会社勤めだよ。まあ成績上位者ではあるけどね。」
「じゃあキャリアウーマンってやつだ。でも会社員って面白いの?」
「やってみると結構面白いよ。私たちの世界にはないしね。」
「まあ、ぼくもあっちの世界にないからバーテンダーなんてやってるんだけど。」
私はもう1口コーヒーを飲む。本格的なやつはやっぱりおいしいな。
「こっちにはどのくらいいるの?」
「ぼくはー・・もう50年くらいかな。そっちは?」
「私もたぶんそれくらいかな?話変わるけどこのコーヒーおいしいね。」
私は素直に思ったことを口にする。そんな言葉に彼女は少し照れていた。
「ありがと。50年も入れてれば上手くもなるけどね。きみはなんでこっちの世界来たの?」
「なんだったけなー・・・?確か退屈だったから刺激を求めてだったかな。ほら、あっちの世界って変化がなくてつまらないじゃん。」
「確かにね。アレでだいたいのことは出来るから、こっちみたいに科学の発展とかもないもんね。」
「そっちはなんでこっちの世界に来たの?」
「ぼくは見学のつもりだったんだよね。」
「見学?」
「そう。こっちの世界ってどんな感じなのかなーってさ。こっちに住み着くつもりは全然なくて。今じゃ面白くてすっかりこっちの住人だけどね。」
「わかる!私ももう魔女の世界に戻る気なんてないもん。」
「1度人間の世界に来ちゃうと戻れなくなるよね。」