夢〜脅迫〜
もうどのくらい時間がたったのか。
夢ならばいくら歩いても疲れるはずがないが
過度の運動不足によりそろそろ限界だ。
本来なら宙に浮いたり、瞬間移動できるはずだが。
というか、肉体よりも精神的にキツイ。
何もない空間で同じ景色を見続けるのは
おかしくなりそうだ。
「ようやく会えた」
背後から重い声が聞こえた。
何故だ。 顔も見ていないがやばい気がする。
俺は特に霊感など特異な能力は持っていない。
だが、体が勝手に拒絶している。
「おや。私の"気"を感じれるのですね。
やはり見込んだ通りだ。」
俺は振り向くと、そこには黒ずくめの男が立っていた。 フードを深くかぶっており顔はよく見えない。
だが安心した。見えたらトラウマになりそうな
気配を感じた。
この格好でも、夢が覚めたらトラウマになるのは間違いない。
「神様か何かですか?
ちょっと疲れたんでそろそろ夢から覚ましてくれないですか? それか小説などによくある、異世界の案内人とかなら早く連れてって下さい。」
俺は簡潔にまとめた。
関わりたくない。とても不気味だ。
そう言うと黒ずくめの男は
「現実に帰ったとしても、あなたに居場所はない。 あの世界の管理者に君は捕まる。だから私の世界に来い。」
あの世界の管理者??
警察のことか?
「すみませんが、俺は犯罪など犯してないので
捕まることなんてないんだが。」
「3月4日、お前はこの私に憑依され近所の家族を殺害した。その夜お前は家族を殺した。帰れる場所などない。私について来い。」
まてまて、理解できん。
俺はずっと家にいた。というか、憑依とはなんだ? ましてや家族を殺したとか何を言ってるんだこいつは。
ふざけた夢だ。
「朝に霧がかかっていただろ?その際お前は
動揺さえしなかった。だから憑依して契約を交わした。理由などない。
疑うのなら一度返してやる。確認できたら、ここに戻れ。 」
理由はないって、理不尽にも程がある。
これがアニメの話なら、一話で打ち切りレベルだ。
あの近所の事件と、朝見た霧が相当印象的だったのだろう。
その瞬間、またこの夢を見る前の白い霧が発生した。体と瞼が重い。
「あー、最っ悪の夢だ。
ハーレムどころか、脅迫だ。」
そうして、視界が暗くなり
意識が遠のいていった。
気がつけば、いつものベッドの温もりを感じた。