夢
目が覚めたのはお昼過ぎのことだった。
母は2時からパートの為、
化粧をして身支度をしていた。
俺は体を起こし、すぐさま冷蔵庫を開け食料を探していた。
「そー言えば、あんたが二度寝してる時パトカーがたくさん来てて大変だったんだから。
なんか殺人事件だったらしいよ。聞いたら、よく覗きとかがあったお家らしくてね。 あんたも戸締り気をつけなさいよ。」
おいおいおい、まてよ。
なんでこんなに冷静なんだ?
人が近所で殺されたんだぞ?
「おかぁ、、 事件の話聞いた時どう思った?」
俺は変な質問をしてしまった。
まるで自分が犯人で、犯行現場を見たのか?
と、脅しているようなものだ。
「それはびっくりするに決まってるでしょうが! びっくりしない人なんていないわよ。人間なら!」
それを聞いて俺はなぜだか安心した。
その後、母は玄関を出て仕事に向かった。
台所の窓から外を見ると、テレビなどでよく見る
黄色いテープが貼られていた。
それを見て、今日は外に出ないでおこうと決心して、窓を閉めた。
昼飯を食べ終えた俺は、
オンラインゲームをしながら時間を過ごした。
時計はいつのまにか20時を過ぎていて、外には月が登っていた。
タバコが吸いたくなったので、ベランダに出た。
その瞬間、久々の立ちくらみにあった。
以前は少し貧血気味で頻繁にあったのだが
最近は調子が良かったので、すごく懐かしい
感じだった。
タバコを吸い終えた後、少し眠くなったので
軽く仮眠をとることにした。
今日は二度寝したから、あまり眠れないかなと
思いつつ、布団に入ると急激に睡魔が襲った。
瞼が重く、暗くなった視界が飛び出たり引っ込んだりしていて、何故だか少し楽しい気分になった。
「もしかして、異世界にいけたりして!!」
と考えてるうちにすっかり眠ってしまった。
どのくらいだったのだろう。急に意識が戻り
目を開けた。 壁掛けの時計に視線を移すと
一時間しかたっていなかった。
とても喉が渇いたので、起き上がろうとした。
、
、
、
、
身体が動かない。声も出ない。
「 金縛りか!?」
すると玄関が開く音がした。
母が帰って来たのだ。
どうにかしようと、全力で母を呼ぶが声が出ない。すると、身体が押しつぶされるような感覚に陥った。また、周りから霧のようものまで出現した。
この感覚はとてもキツイ。尋常じゃない程に。
だが何故だ?ワクワクしている。
もしかして異世界にでもいけるのではないか?
「すまない母さん。20歳のいい大人がこんな事言いたくないけど、、、 少しハーレムしてきます!!」
そう心で呟いた矢先、霧ががかった白い風景が
赤色に変わった。そして体も動くようになった。
すこしガッカリしたが
体力は寝ているだけなのに相当けずってしまった。
だが、視界は赤色のままだ。
赤以外何も見えない。
自分の腕さえ見えず、体の感覚だけがある。
とりあえず歩いて見ることにした。
何というか怖いというより楽しかった。
それは確実に現実世界ではないと確信していたからだ。
だが異世界では無いと感じる。
もしかすると夢かもしれない。
さっきの金縛りも含め今現在夢を見ている。
そうなると、明晰夢に違いない!
でも何かがおかしい。頭の中で 想像したものが出てこない。近未来の様な街並み。絶世の美女。
お菓子。ゲーム機。どんぐり。
とりあえず何も出てこない。
赤色のままだった。
よく掲示板などで目にする
「想像した世界が出てきて、やりたい放題」
と書かれているが、あれは嘘だったのか。
ふざけてやがる。起きたら絶対に通報してやる。
そう独り言を呟きながら延々と歩いていた。