第四話「閻魔大王からの仕事」
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鬼「閻魔大王様、例の河童を連れてきました。」
やばい、本当にオイラは連れてこられた。
さっき小太郎とあんな約束を交わしてしまったが本当に守れるのか不安でしかない。
閻魔大王「うむ。その河童を中へ入れよ」
鬼「はっ!
ほら、早く入れ!!
、、、これでお前は本当にあの世行きになるかもな」
鬼はオイラにしか聞こえないくらいの声で嘲笑するとオイラを無理やり閻魔大王のところに入れた。
閻魔大王は扉の奥にいる。
オイラはつばを飲み込み意を決して扉を開けた。
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閻魔大王「もっとこちらへ参られよ」
「、、、。」
オイラは返事をせずに閻魔大王の元へ向かった。
ていうか、閻魔大王って美声なんだ。
だって今すごく透き通った声してたから。
オイラは閻魔大王の目の前に着くと一応膝まづいた。
閻魔大王「そなた、名はあるのか?」
「、、、一兵衛といいます」
小太郎に名付けてもらった名で名乗った。
閻魔大王「そうか、、、一兵衛というのか。
河童にも名があるものがいるんだな。」
そう言うと閻魔大王はフフッと笑った。
閻魔大王はオイラに背を向けて椅子に座っている上、体が布のようなもので隠れている為どんな姿をしているのかわからない。
閻魔大王「それで、、、一兵衛。
君がここに連れてこられた理由、、、本当は別にあるんだ。」
「えっ?」
オイラらしくない、間抜けな声が出てしまった。
閻魔大王「フフッ、驚いているようだね、無理もない。
それで、本当の理由、、、それはね、君は河童という立場を使って三途の川の主になってもらいたいんだ。」
「三途の川の主、、、ですか。」
正直言うとなりたくない。
だって、あの川オイラは苦手な水質だから。
「でも、オイラ、、、あの川は嫌いだ。」
閻魔大王「、、、やはり、君もか。」
閻魔大王はハァ、とため息をつくと後ろ姿でもわかるくらい大胆に肩を落とした。
、、、オイラ、まずいこと言ってしまったのか?
でも、それより気になること、、、
「君もか、って、オイラ以外にもそう言ったやつがいるんですか?」
閻魔大王「、、、何回もね。
最初は海坊主。他は人面魚や人魚。」
「はぁ、、、」
なんだ、この世界は化け物しかいないのか?
いや、オイラも人間からすると化け物のようなものなんだがな。
閻魔大王「だから、私は川に最も適している河童、、、
君が来るのを、ずっと待っていたんだ。」
「、、、だけど、どうしてその川に主が必要なんだ?」
それはオイラがさっきから疑問に思っていたこと。
すると閻魔大王は静かにこう言った。
閻魔大王「あの川、、、子供たちが沖で石を積んでいるだろう?
そこで石を積むことに嫌気をさした子たちが死んでもなお自殺をするかのようにあの川に飛び込むんだ。
あの川はね、、、人間が浸かってしまうと姿形は最初から無いものとされて残留思念のみが川にまとわりついて、、、
、、、君も川に浸かった時、変だと思わなかったかい?」
「、、、それって」
あのなんとも言えない重ダルさといいヌメヌメ感といい、、、あれはその残留思念だったのだろうか。
閻魔大王「、、、気づいたようだね。
あ、どうして心の中を読めるのかって?
私はね、相手の感情を読み取ることができるんだ。
そんなことはどうでもいいんだけどね。
それで、、、もうあの川を変えられるのは君しかいないんだ、一兵衛。」
「、、、でも、オイラにどうやってあの川を変えろと?」
オイラなんてただの河童に過ぎない。
閻魔大王みたいに変わった能力も無い。
閻魔大王「能力なんてなくても大丈夫。
森に行って幻の薬草を取ってくればいいんだよ。」
、、、ただの雑用じゃないか、と思ったがそれは口に出さない。
「、、、それは他の者を連れていってもいいのか?」
小太郎、アイツと一緒に行きたい
閻魔大王「、、、人間の子供の、、小太郎くんだね?
彼がそういうなら、もちろんいいよ。」
確かに小太郎がなんて言うかはわからない。
だけど、オイラはまた綺麗な川に浸かりたい。
「、、、だったら、、引き受ける。」
そう言うと閻魔大王はくるりとこちらを向いてその反動に布がパサリ、と落ちた。
にもかかわらず
閻魔大王「本当かいっっ!?ありがとうっっ!!!」
と勢いよくこちらへ来るやいなやオイラを強く抱きしめた。
、、、閻魔大王って、、美声の上に人間のような容姿に角が生えているだけで、、綺麗な顔立ちをしているのか。
閻魔大王「じゃあ、この仕事が終わったらまた私のところに来てね!!」
「はい」
閻魔大王はその綺麗な顔に笑顔を浮かべると部屋を出ていくオイラを見送った。