第三話「友としての約束」
小太郎と話し始めてだいぶ時間が経った。
すると
「おい!!小僧!!サボるなっっ!!!!」
と、怒声がどこからか聞こえた
小太郎「あっ!鬼が来た!!」
そういうと小太郎はまた石を積み始めた。
オイラは辺りを見渡した。
するとたしかに鬼がいた。
どんどんこちらへ近づいてくる。
しかしオイラは逃げなかった。
小太郎「一兵衛!早く逃げなよ!!」
小太郎はオイラの身を案じてか必死の形相で言ってくる。
しかしオイラは、
「どうして逃げなきゃならないんだ?別にオイラたちは悪いことなんてしていない。
親より先に死んだからといってずっと変なことを言いながら石を積んでいる方が自分自身が不幸だと思う。」
オイラは本心で思ったことを小太郎に言った。
すると小太郎は目を丸くして
小太郎「、、、一兵衛はやっぱり、優しいね」
と言った。
オイラは少し照れくさかったから「オイラが思ったことを言っただけだ」と、顔を背けて少しぶっきらぼうに言い放った。
しかし、反応がない。
どうしたものかと思い背けた顔を小太郎に移すとガタガタと震えている。
それも石を積みながら。
まさか、と思いオイラは後ろを向いた。
するとそこには先程の鬼がすごい形相でオイラを睨んでいた。
鬼「おい河童。
誰が親より先に死んだ親不孝者と話をしていいと言った?」
表情からして相当怒っているようだ。
小太郎はガタガタとまだ震えている。
しかしオイラは
「そんなの、オイラがコイツと話をしたかったからにきまってるだろ。」
と、萎縮せずに言った。
すると鬼ら目を剥き、
鬼「俺達鬼に口答えをするのか!貧弱な河童ごときが!!!」
と言うとオイラの腕を掴んだ。
その光景を近くでずっと見ていた小太郎は驚いた顔している。
何かを言おうとしているのがわかった。
しかしオイラは首を横に振り、「大丈夫だ」と言うかのように小太郎を見た。
オイラの言いたいことが分かったのか、小太郎は頷くとまた石を積み始めた。
そしてオイラは腕をつかんでいる鬼に蹴りを入れた。
しかし、なんともないようだ。
鬼「無駄な悪あがきはするな。
貧弱な河童ごときが世で一番強い鬼に叶うとでも思ってるのか?」
と、鼻をフン、とならして小馬鹿にするように言ってきた。
オイラはこの鬼の態度に怒りが湧いてきた。
「、、、さっきから貧弱な河童って何回も言ってうるさいんだよ!!
お前達鬼はオイラたち河童と違って視野が狭すぎるんだよ!
可哀想な種族だな、鬼ってのは。」
と、嫌味ったらしく言ってやった。
すると既にキレかかっていた鬼がさらに怒り狂った。
鬼「もう我慢ならん!!お前は閻魔大王のところに連れて行って鬼を侮辱した罪を償ってもらう!!!」
そう言うとオイラの腕を掴んでいた力がさらに強くなった。
正直痛いがこの鬼の前で弱さをさらけ出すのはどうもいけ好かねぇから我慢した。
「勝手に連れていけ。河童に手を出したことをあとから後悔するのはお前の方だから。」
鬼に向かってオイラはそう言ったが鬼は怒り狂っているため耳に入ってないらしい。
オイラが鬼に連れていかれるのを見ている小太郎の方を見た。
小太郎「一兵衛!絶対僕のところに帰ってこい!!!友としての約束だから!!」
必死に涙を流しながらオイラに向かって叫んできた。
「、、、あたり前だ」
と、小太郎に聞こえるか聞こえないかの声の大きさで言った。
すると小太郎はオイラの言ったことが聞こえたのか、嬉しそうな顔をして、大きく頷き、「約束だよ!!」と言った。
小太郎は森の奥にある地獄と天国の境目にいる閻魔大王のところに連れていかれるオイラをずっと見つめていた。