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三途の川の河童  作者: ちゃっ河童
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第2話「命名、一兵衛」



気がつくとオイラは水の中にいた。





しかし、いつもオイラがいた川の水の感触ではない。





おいらのとこの川は体に吸い付くような滑らかでさらさらとした肌触り。





だけどここは、、、少しだけヌメヌメとして水質が硬いような……。





オイラは勢い良く沈みかかっていた体を一気に地上へと向かわせた。





あたりを見渡すと・・・・・・





「なんだ、ここ・・・。知らないところだ。」





不思議に思い、記憶を巡らせる。





「あ・・・そうか、オイラ人間のヤツに殺されたんだ。」





もう河童の世界には行けない。




人間に殺されましたなんて言ったらきっと迫害されるだろう。




まぁ、オイラはもう死んだ身。気にする必要なんてないのかもしれないんだけどな。





とりあえず肌に馴染まない川から地上へと上がる。






すると、人間がいた。




オイラはもう死んだも同然。いや、死んだんだけどな。




だからその人間に話しかける。





「おい、そこの人間。」




するとその人間は顔を驚かせた。




その人間は子供のようだ。




そいつは石を積んでいるようだ。




「何故、石を積んでいるんだ?」




唐突に質問をした。




子供「僕、病で母上と父上よりも先に死んだんだ。石を積まないと、あの世に、、行けないんだっっ!!!」




そう言いながら必死にまた石を積み始めた。




オイラは人間のすることに興味なんてないから「ふーん」と一言いうと木陰があったからそこに向かった。




木陰で此処はどこなのか色々と考えてみた。




死んだら無の世界だとおもっていたんだが・・・。




ふと先ほどの人間の少年の方をチラリと見る。




するとそこには赤いからだをした鬼がいた。




此処は鬼もいるのか、、、。




でも人間の少年はあの世に行けないみたいな事を言っていたということはまだあの世という死後の世界に完全に行けた訳ではないということなんだな。




すると




「やめておくれよっ!僕は早くあの世に行きたいんだ!!」




と先程の人間の少年の声が聞こえた。




またチラリと木陰から少年のいる方を見る。




鬼「黙れっっ!!親より先に死んだ親不孝者めっ!!あいつらみたいに文句を言わずに親が死ぬまで石を積んでいろっ!!!」




そう言って鬼はその少年を殴った。




オイラは内心殴るのはかわいそうだと思ったが生まれてから今まで人間は弱い生き物だから。という固定概念が邪魔して、ただその様子を木陰から見つめるしかできなかった。




鬼は何処かへ行くと少年はまた石を積み始めた。




そういえば、生前、河童スクールの校長から聞いたことがある。




校長「ワシら河童には親はいないも同然だからあまり関係無いのじゃが、人間は親子の愛や絆を大切にする生き物。

ワシらのように生まれてから1人では生きていけない弱い生き物でもあるんじゃが・・・。

まあ、その親子の愛や絆が災いしてかどうかは知らんが子が親より先に死ぬとあの世には行けんというあの世の手前、三途の川のルールがあるらしい。

親が死ぬまで先に死んだ子は石を積み続ければならんのじゃ。」




校長はこう言っていた。





ということはここは三途の川。




だからあの少年は石を積んでいたのか・・・。




オイラは少年の元へ歩み寄った。




少年は涙を流しながら「一つ積んでは母のため。二つ積んでは父のため。」とブツブツ言いながら積み続けている。




「おい、人間の坊主。」




すると少年は




「河童さんか、、、。」




と何の興味も示していないように言った。




しかしオイラはそんなこと気にせずに質問した。




「そんなにずっと石を積んで楽しいか?そんなに親ってのは大切なものなのか?」




すると少年は




「親は大切だよ。・・・河童さんには親いないの?」




逆に質問された。




「ああ。オイラたち河童には親なんていないよ」




と言った。




すると少年は「可愛そうだね」と言った。





かわいそう?オイラたち誇り高き河童が?人間に同情される?





オイラはこの少年の放った言葉に自分たち河童という種族に疑問を持った。




「河童は、、、かわいそうなのか?親がいないのは、かわいそうなのか?」




すると少年は少しだけ困ったようにこう答えた。




「かわいそう、なんじゃないのかな?だって、親の温もりをしらないんでしょ?それってすごく、かわいそうなことなんだと思う・・・。」





「そう、か。親の温もりか・・・。・・・人間っていうのは温かい種族なんだな。」





と、オイラは思ったことを素直に言った。





すると少年は嬉しそうな顔をして大きく頷いた。






それからその少年は河童のオイラを怖がらずに沢山話をしてくれた。石を積むのを少しだけ中断した。





少年は上級武家の次男だったらしい。





親は好きだけど生まれつき体の弱かった少年はあまり相手されてなかったらしい。




だけど親から初めて貰った竹刀をずっと大切にしていた、という話を聞いた。






他の話の内容は、人間から見た河童の印象、親について、少年の死因の病、それと、、、





「そういえば僕の名前、小太郎っていうんだ。河童さんは?」




「名前、、、?」





名前について聞かれるとは思わなかった。




「オイラたち河童は名前なんてないよ。仮に名前があったとしても、大体は一人でいるから呼ばれる機会なんてない。」





すると少年はとても驚いた顔をした。





「でも、河童スクールっていう寺子屋のようなところに行ってた時は名前がないと不便じゃなかったの?」





「そこではみんな番号で呼びあっていた。」





「、、、そんな罪人みたいな呼ばれ方してたの?可愛そうだよ!!!だったら、僕が君に名前を付けてあげる!」




そう言うと小太郎は1人でああでもないこうでもない、といいながら名前を考えていた。





オイラはそんなのいらないといおうと思ったが小太郎のさっきまでの暗い表情とは打って変わって楽しそうな表情を壊したくなかったから軽く頷いて名前を考えてもらっていた。





それから数分後。。。





「一兵衛!!一兵衛だよ!!!」





決まったらしい。





「一兵衛、か。ありがとう。それにしても、どうして一兵衛なんだ?」




すると少年は




「僕の一番最初の友達、そして兵衛っていうのは僕が生きていた頃の大切な竹刀の名前。だから一兵衛!」




小太郎は嬉しそうに言った。




「わかった、オイラは一兵衛!、、、なんか名前があるって嬉しいんだな・・・。死んでから名前を付けてもらうのも変な話だけど」




と言いながら小太郎とオイラ、もとい一兵衛は河童と人間という異種族だけど仲良くなることが出来た。





小太郎という人間と仲良くなったことにより、人間は弱い生き物なんかではないような気がしてきた。














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