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7 同期会


同期会には参加した。

家に帰りたくなかったし、ちょうど残業がなくなった時期でもあったから。

同期といってもほとんどが男だった。

あとから、合流したらもうみんな出来上がってた。

「おー!!朝子―!」

唯一の同期の女子でデザイン部の雪絵がいてくれて助かった。

「雪絵!」

「久々ジャン!どう?元気でやってんの?」

「うーん。まぁぼちぼち。」

この質問には苦笑いだった。

それにピンときたのか雪絵はそれ以上は何も言わなかった。

その後は、周りの他の同期たちにも話しかけられて話は反れた。

「水瀬、飲み物何にする?」

そう言って、楜沢が近づいてきた。

今日も今日とて爽やかな空気をまとって緩んだネクタイがすこしセクシーだと思った。

「えーと、飲み物は生で。それから、楜沢くん。ありがとう。今日。」

「了解。いや、来てくれてよかったよ。やっぱおまえがいた方が華があるし。」

お世辞でもちょっとドキッとした。

「楜沢、イイ男になったよねー。」

雪絵が楜沢がいなくなってからそう言った。

「そうだね。」

「どうなの?幼なじみとして。恋心復活とかあるの?」

「ないね。てか、レベル高すぎてこれまでだってなかったよ。」

「やっぱり?あーいう男って見てるだけでいい感じだよね。」

「え?俺ないの?」

「ぎゃ!」

「色気ね―。」

「いつから聞いてたの!楜沢!」

「最初から。」

いたずらっぽく笑ったその顔さえにあってた。

隣に座って無意味にドキドキ。

「えー?じゃぁ楜沢はあったの?!」

雪絵が食い気味で楜沢に聞く。

「うー・・・・あった。」

彼は少し考えたあとちょっと恥ずかしそうにそう言った。

「うそ!!!!」

私はそれにやたらでっかく反応してしまって大恥をかいた。

「うそって・・・おまえ。酷い奴だな。俺のことなのに。」

「ないないない!だって!いつ?!樹、幼稚園時からモテモテだったじゃん!!」

つい、昔の呼びなれたファーストネームを呼んでしまって口を押さえたけど遅かった。

「なんだってー!」と、その場の注目を浴びてしまう。

「やっぱり付き合ってたんだ!」

「ちが!!違うって!」

「でも、今「樹」って・・・」

「コレは!その。昔そう呼んでて!!いt・・・じゃなかった。楜沢くんも弁解して!」

あわてる私をよそにひょうひょうとしてる。

「まぁ、そういうことになるかもしれないし。いいじゃん。」

「えぇええええええええ!!」

意地悪な顔で笑っていた。このッ悪魔!!

「ひゅーひゅー」と古すぎるもてはやされて私は小さくなるしかなかった。


それから、2次会となって

「おまえらは抜けちまえ!」と二人でなぜか追い出された。

普通、抜けだそうかとか当人たちが言ってそうなるんじゃないの?

「じゃーねー!朝子―!また飲みに行こう!」

そう言って雪絵は3次会へ向かっていた。


二人だけで残された路上。

「朝子。」

「え?!」

「家、どこ?送ってく。」

「え、そんな、いいよ!別に。タクシーで帰るし!」

「遠慮すんなよ。たしか、家同じ方向だったし。」

「え?」

とたんにバツの悪そうな顔をする。

「あ・・・いや、その。よく朝見かけるんだよ。おまえ。あ、誤解するなよ!ストーカーとかじゃないから!」

「や、もちろん。そんなこと思ってないよ。声かけてくれればよかったのに。」

「いや、その。彼氏も一緒ぽかったし。最近はそうじゃないみたいだけど。」

「あー・・・・・うん。まぁ。」

「元気ないっぽいし、心配してたんだ。今日もカラ元気ぽかったし。大丈夫か?」

「うん。まぁね。心配してくれてありがとう。」

「いや、いいんだ。幼なじみだろ?」

「でも、中学までだけどね。あたし、まさか同じ会社にはいるとは思わなかったなぁー。あのあとは全然見かけなかったケド。」

「俺も、おまえと会った時はびっくりしたよ。でも、おまえと違うのはあの後も実は何度もおまえを見かけてるんだ。」

「うそ!初耳。」

「おまえぼーっとしてるからなぁ。」

「そんなことないと思うんだけど。」

「そんなことある。というか、俺は今でも幼なじみだと思ってる。だから、辛いことがあったら昔みたいに支えてやりたいし、おまえには元気で笑っていてほしい。幼なじみって家族みたいなもんだろ?」

「そうだね。ありがとう。すごく嬉しい。」

私はたくさんの人に支えられてるんだなと思った。

「だから、楜沢君じゃなくて前みたいに、さっきみたいに名前で呼んでよ。なんかおまえに楜沢君って言われるの違和感があるんだよな。」

「ふふふ。実はあたしもすっごい違和感あったんだよね。しかも言いずらいし、くるみさわって。」

「だよなぁー。俺も自分の苗字たまに噛みそうになるよ。」

「あたしも朝子でいいよ。」

「そうする。」

昔みたいに話せてることが嬉しかった。あの頃に戻ったみたいだった。

マンションまでの道のりのおしゃべりは楽しくて今だけは忘れられそうだった。


「ここ。」

「へぇ、結構広いとこだろ?ここ。」

「うん、でも、来週引っ越すんだ。」

「そうなのか。」

「うん。だから、もしかしたらもう朝見かけないかも。」

「そうか。」

「うん。・・・・家、あがってく?って言いたいけど今部屋ちらかってて。」

「いや、よくないからいいよ。」

「幼なじみでも?」

「俺は昔おまえが好きだったんだぞ?」

「ねぇ。ソレ本当なの?全然信じられない。」

「本当だって。今もおまえがかわいくてしかたない。」

「・・・・・・・・うそだ。」

「まぁ、嘘だけど。」

「おい!!」

「まぁ、もう遅いし。早く風呂入って寝ろ。肌に悪いぞ。」

「わかってるって・・・・・」

「引っ越し。手伝ってやってもいいぞ。」

「え?」

「男手がないと大変だろ。夕食1回で雇われてやる。ちょうど来週末暇だし。」

「ホント?ありがとう。助かる。高くないとこなら出すよ。」

「作れよ。ハンバーグがいいな。でっかくて煮込みでチーズが乗ってるの」

「注文多いよ!・・・・まぁわかった。」

「詳しく決まったら連絡くれ。」

「うん・・・・それじゃ。」

「おう。また。」


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