6 傷は大きかった
数日後
私は、やらかしていた。
それまでも小さなミスを連発していた。
意識散漫。
プレゼンも近いのに・・・・
そして、今回の大きなミス。入社以来初なくらいだ。
発注を間違えたのだ。
もうすぐ開催されるイベント。私の抱えてるプロジェクトの一つだ。
「どうしたんだ。水瀬。」
「すみません。今から問い合わせて当日には間に合わせます。」
「最近ちょこちょこミスしてるらしいし、おまえが頑張ってるのはわかってるけど。」
「すみません・・・・」
「みんなもごめん。でも、がんばって」
「大丈夫ですよ。あんまり気落ちしないでがんばりましょう。」
「絶対成功させましょう。」
上司に叱られ部下に慰められて
情けないけど
やるべきことは決まっていて時間に追われる。
「水瀬さん」
残業中の夜もう誰もいない休憩所でひとりたそがれてると沖田君が来た。
「沖田君、ありがとね。もう帰ってもいいよ。」
「いえ、手伝わせて下さい。俺、水瀬さんの力になりたいんです。」
「ありがとう。嬉しいけど。」
「水瀬さん。俺あなたに憧れてるんです。」
「えぇ?」
「いつも、笑顔で仕事早くて的確で。でも、最近何かあったんですか?顔色日に日に悪くなってますし、調子悪いですし。でも、辛いなら頼って下さいよ。」
「・・・・・あ、うん。」
「これまでがんばって一緒にがんばってきたじゃないですか。」
「そうだね。がんばろうか。」
彼の真剣な瞳に可愛いだけじゃない強さを見た。
ふわっと笑った顔に安心して私もつられて笑った。
「あとちょっとだ!」
「はい!!」
最近あまりのどに通らないのはたしかだった。
いいダイエットになってるとは言い難い。
仕事に集中すれば、気は紛れるかと思ったのにゆられる自分がいる。
こんなに弱い人間だっけ?
そんなに支えになってた?
4年という月日は思ったより長くて思ってたより大きかった。
あの家に帰るのが辛い。
私は、次の休みに引っ越しすることを決めていた。