第四話
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第四話
昭和一七年(1942年)十月二三日、昨日の米重爆撃機との邀撃戦から一夜、私達四名は小福田大尉に率いられて、新型機が運び込まれたと言うカビエンへ受領の為向かった。
カビエンはニューアイランド島の北端に位置する基地で、日本が占領するまでは英国軍の基地が有った、此処には港もありラバウルほどは敵の空襲が無い事から帝国陸海軍は物資の陸揚げ場所にしていた。
九六式陸上輸送機でブイン基地からカビエンに向かった私はそこで見慣れない戦闘機と出会った。
巨大な発動機を収めたエンジンカウル、それから機体後端まで大胆に絞り込んだ胴体、その胴体とは不釣合いなまでに小さな主翼、垂直尾翼から離されて前方に取り付けられた水平尾翼。
その機体は、見慣れた零式艦戦に比べると酷く異質な存在に見えた。
それが私と〈蒼電〉の初めての出会いだった。
ここで今更ではあるが、当時の帝国海軍の航空機について、種別と命名法を記しておこうと思う。
まず前提として覚えて置いて欲しいのだが、これまで我が陸海軍の航空隊では、基本的に制式採用された年号の末尾を採ってき機体の名称としてきた。
例として皇紀2600年(西暦一九四〇年)に制式採用された艦上戦闘機は零式艦上戦闘機と命名されている。しかし、1941年採用の陸軍戦闘機、一式戦闘機に〈隼〉の愛称を付けて国民に披露したところ広く受け入れられた為、海軍でも皇紀2602年以降、つまり二式以降の機体に制式な名称を付けることとした。但し陸軍ではその名称に特に規則性は無く機体ごとに任意に命名されていたが、海軍では機種別に命名に規則性を持たせる事とした点に違いがあった。
甲戦(艦上戦闘機・制空戦闘機・水上戦闘機を含む)・・・風由来の名称(烈風・陣風・強風など)
乙戦(局地戦闘機)・・・雷・電由来の名称(雷電・蒼電・震電など)
丙戦(夜間戦闘機)・・・光由来の名称(月光・極光・閃光など)
偵察機・・・・・・雲由来の名称(彩雲・紫雲・瑞雲など)
攻撃機(艦上攻撃機・陸上攻撃機)・・・山由来の名称(天山・深山・連山など)
爆撃機・・・・・・星・天体由来の名称(彗星・流星・銀河など)
哨戒機・・・・・・海由来の名称(東海・大洋など)
更に海軍の命名規則では機体名の後に二桁の数字で形式を表す決まりとなっている。
例として零式艦戦三二型は、制式には零式艦上戦闘機三二型となり、十の位の三が二度モデルチェンジした三番目の機体を意味し、一の位の二は発動機が二番目に採用された発動機を意味する事となっている。また三二型の場合はこれに甲型・乙型の長さの違う主翼が有るのでそれが機体形式の名称の後に付く事になる。
さて、ここで再び我々が乗る事にになる局地戦闘機〈蒼雷〉に話を戻そう。
〈蒼雷〉開発の経緯については塚本大尉、並びに小福田大尉による説明があった。
「〈蒼電〉の開発に先立って、十四試局地戦闘機について説明したほうが良いでしょうね。
という訳で、小福田先任説明よろしくお願いします。」
そう塚本大尉に切り出されて小福田大尉は少し塚本大尉を睨むと渋々と言う表情で説明を始めた。
「〈蒼電〉開発に先立って塚本の言う十四試局戦が開発されていた。俺は六空に転属するまで空技廠の飛行実験部でその十四試局戦の担当をしていた。
聞いた奴も居るかもしれんが、〈試製雷電〉の名称で一部の機体がラバウルにも配備されている。所謂実戦試験中なのだが、こいつが上手く行っておらんのだ。」
そこまで言って小福田大尉は苦い表情を浮かべた。
「先ず海軍が局地戦に求めた性能を言っておこう。
最大の任務は大型爆撃機の迎撃だ。
その為に必要ななのは、
第一に、敵の爆撃機が飛行している高度に短時間で到達する上昇力だ。
第二に、敵爆撃機に追いつくことが出来る速度を出せることだ。
そして第三として、敵に追いついた一瞬のチャンスを敵に致命傷を与えうる火力を持つことだ。
そう考えると〈雷電〉は決して悪い機体ではない。
上昇力と速度は零式艦戦とは比較に成らないものを持っているからな。
最高速度は高度5,500mで596.3Km/h、上昇力は高度6,000mまで五分三八秒となっている。
対して零式艦戦は21型で高度4,700mで533.4Km/h、上昇力は同じく高度6,000mまで七分二七秒と言うのが実績だ、大分差があるな。
ただ小型軽量な大馬力の発動機が無かったんで、陸攻用の〈火星〉を搭載し、太くなる胴体を中央部を最も太くし前後に引き伸ばした紡錘状の形状にして空気抵抗を減らす工夫をして対応しているのだが。
それが原因となっ不具合が続出してな、それが未だに解決できんのだ。」
小福田大尉は少し気落ちしたように言葉を続けた。
「何が問題となっておるのですか?」
倉本二飛曹が遠慮無く聞いてきた。
「その空気抵抗を減らす目的で機体の形状が紡錘形状になっている、この為に機首を絞り込むために発動機を目一杯後ろに置き延長軸でプロペラを回す構造になっているのだが、これが原因とみられる激しい振動を出てこの対策に時間が掛かっている上に解決の目処が立っていないのだ。
これ以外にも太い胴体から来る視界の悪さや旋回性能の低さが問題にされその対策に追われて大量生産に踏み切れないのが実情という訳だ。」
小福田大尉は最後には諦め顔でそう答えた。小福田大尉に拠れば〈試製雷電〉の改修はこの時点でも行われていた、振動に関しては相当根が深いらしく主にプロペラの形状や材質を変えることで軽減を図ったが速度が低下する割に決定的な解決策とは成っていないとの話だった。ただ視界や旋回性能の悪さはそれ(視界や旋回性能)を犠牲にして良好な上昇力や速度、さらに急降下能力を得ることが前提の機体に的はずれな指摘だとも言えるが、視界の悪さは胴体側面を平滑にして視界を確保したり風防を上に嵩上げしたりと可能な限り対策は取る予定との話を聞いた。旋回性能は本来の大馬力発動機のパワーと空戦フラップを使えば工夫次第で縦方向の機動で零式艦戦を凌駕する可能もあると小福田大尉は太鼓判を押している、つまり使う側が零式艦戦に慣れすぎそれ以外の機体を使いこなす工夫と知識が足らないのだ。
一通り一四試局戦についての説明が終わって、話は塚本大尉が引き継いた。
「〈試製雷電〉についての説明はここまでで良いでしょう。
開戦後、台湾やフィリピンで戦いった海軍航空隊にとって米軍の大型爆撃機は難敵でした、防御力、高々度飛行能力、速度、防御火力、どれを取っても厄介な物ばかりです。
しかもそれに対抗して作った機体は未だに使い物にならない。
それでも幸いと言っては変ですが、フィリピンを落としたことで当面は敵の大型爆撃機の脅威からは逃れることが出来ていました。
まあ勿論、あの米軍が現状のまま手をこまねいている訳はなくこの時間を有効に使う必要が有ったわけです。
案の定、一息つく間も無く米軍機による本土爆撃が有り対応の遅れから防空能力の欠如が露呈してしまい、加えて6月にはこのソロモン方面に戦力を集中し、南方より反攻に出る兆しを見せ始めていました。
その結果、対策に迫られた海軍航空本部が考えたのは〈試製雷電〉が使い物に成るまでの繋ぎの機体の採用でした。」
ここで一度言葉を切って私達を見回した塚本大尉はさらに言葉を続けました。
「前例は有ったのです、一五試水上戦闘機(後の〈強風〉)の開発の際に開発の遅れに対応するために既存の機体を改造して繋ぎにしました。皆さんご存知の〈二式水上戦闘機〉がそれですね。
一時は投入不可能と見られていた水上戦闘機を既存の零式艦戦を改造し単フロートを装着して早期に実戦投入した事例は良い参考となりました。
今回もそれを例に取って〈試製雷電〉の代わりとなる機体を開発することとしたのです。
しかしながら、それでもなお問題は残りました。
それは海軍にそれに可能な機体が無かったのです。
当然ですね。
局地戦闘機に転用可能な機体が有ったなら、この忙しい戦時にわざわざ〈雷電〉を開発する必要は無かった訳ですから。
それで、その対象となる機体を輸入機や民間、さらに出来れば避けたかった陸軍にまで広げ探したところ、やっと転用可能な機体に巡り会えたのです。
それが陸軍の二式戦闘機、愛称〈鍾馗〉だったわけです。但し二式戦の性能はギリギリ及第点と言った水準でした。
速度、上昇力については陸軍が迎撃用の重戦闘機として開発した経緯もあってまずは問題がないものでしたが、武装に関しては陸軍が大口径機銃の開発に手間取っている事もあって非常に貧弱で、海軍の要求する水準から大きく遅れていたのです。
もっとも、最終的にはその点が最終的に陸軍が海軍に二式戦の転用を認める結果ともなった訳ですが。
つまり、陸軍は二式戦を海軍用に転用する見返りとして海軍が採用している九九式機銃の陸軍への提供を求めて来たのです。
最終的には二式戦の海軍転用の機体は海軍向けの資材により製造し、陸軍向けの九九式機銃の製造は陸軍向けの資材を使用することで大筋合意したわけです。」
塚本大尉の話により〈蒼電〉が開発された経緯は解った、しかし、これで終わりでは無い。なぜなら〈蒼電〉=二式戦〈鍾馗〉では無いからだ。
海軍用の機体と陸軍用の機体では、名称や作動方法を含めて多くな違いが幾つかある。
スロットルが海軍機が押して全開、陸軍機が引いて全開、機銃の発射スイッチが海軍ではスロットル付いているのに対して陸軍では操縦桿に付けられて居るなどは判りやすい例だろう。
更に使用する燃料のオクタン価や、弾薬の規格も違うな、どこれでよく戦争遂行に支障が出なかったのか疑問に思えるレベルでの対立や半目が陸海軍には有ったのが事実であった。
この背景的事実に加えて二式戦自体の問題点も有った。
その問題点は。
何より問題とすべきはその貧弱な武装であった、二式戦の武装は12.7mm×2門と7.7mm×2門もしくは12.7mm×4門で、20mmを常用する海軍から見れば酷く貧弱なものであった。
これに関しては海軍の二〇ミリの九九式機銃、それも最新型の二号銃を搭載することで解決可能であり、それに合わせた主翼の補強が行われ一一型で二門、二一型では更に二門の追加を可能としている。
この他では、離着陸時の安定の悪さの解消が主な改造で主翼の延長(50センチずつ両翼を延長)と垂直尾翼の縦方向への延長が検討された。
この改造は最終的に全体のバランスを見直す中で行われる事と成り、一一型では改造は行わず二一型として全面改造することとなっていた、ちなみに我々が搭乗した〈蒼電〉はこの改造後の二一型であった、一一型は単純な転用のみでスロットル周りなどを海軍用に改造した程度であったと言う話で事実上の試作機扱いであったらしく中には海軍の二〇ミリ機銃を搭載した機体も有ったらしい。
「実際に実戦配備と成ったのは〈蒼電〉は発動機を一五〇〇馬力の〈魁〉二一型に替えた〈蒼電〉二二型からになります。
二二型は二式戦の二型への改良に合わせて開発が行われ、発動機の出力向上と主翼と胴体の再設計など改修箇所は多岐にわたることに成るのですがここで大きな問題が起こったのです。
それは開発に当たる人材の不足でした。
何時も思うのですが、何故か説明文章が多くなります。
もっと面白く書きたいのですが・・・。
文才無いな><
こんな文章を読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字有りましたら一報ください。