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甘い香りがする。
眼前の美しい少女が、限りなく白に近い水色の髪を風になびかせ、すみれ色の瞳を潤ませてこちらを見返している。手を伸ばし、彼女に触れたい。しかし体は言うことを聞かず、ぴくりとも動こうとしない。
少女が微笑みながら、優しい声音で言う。
──泣かないで。最期くらい、君の笑顔が見たい
世界の終わり、という表現が相応しい光景を背に、目の前に広がる光の洪水に向かって、少女がゆっくりと歩き出す。
──さよなら、ユイ。愛してる
一言残すと、少女は洪水の中へと飛び込んでいった。
──大好きよ。
薄れゆく意識の中、少女の声が、微かに聞こえた気がした。