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セヴァと人魚の物語  作者: 添木かもめ
1章 -現代-

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8. 図書館(2)

今まで図鑑ばかり読んでいたセヴァは何から探せば良いのか分からず困っていた。

所長には答えられないと昨日言われたばかりだし、ひとまず自分の力で調べてみようと思った。

人魚についての資料はないかと本棚の間を歩き回る。




本の中身を丁寧に確認しながら探していた為、あっという間に2時間ほど経った。

1日では回りきれないほど大きい図書館であるため、まだたどり着けていない棚がたくさんある。

これからも何度か通う必要がありそうだ。

ここなら実在の人魚に関する資料があるかもしれないと期待していたが、それらしい本は見当たらない。

ひとまず人魚伝説やおとぎ話を数冊手に取り、2人のところへ戻ることにした。


いろは達が待つ閲覧スペースと本棚が並ぶスペースは壁で区切られているため気が付かなかったが、スーカがいつの間にか合流しており大騒ぎになっていた。

「お静かに……!」と司書がスーカにあわあわと話かけるが完全に無視されている。

急いで戻ると同時に母も駆けつけてきた。

「スーカ!!!静かにしなさい!!!!」

誰よりも大きな声でスーカに注意する母。

全員黙る。


「司書さん、お騒がせしてごめんなさい。

スーカ!お利口さんにするって約束したでしょ!」

「はーい。ごめんなさーい。」

「……本当にわかってるのかしら。

セヴァ、今日は泊まり込みで仕事にになってしまったから、あなた達も今日はここにお泊まりよ。」

スーカはニッコニコだ。お泊りが嬉しくて仕方がないようだ。

「お兄ちゃん!人魚さんとっても可愛いね!

今日は人魚さんとスーが一緒に寝る!」

「スーカの寝相は酷いからなぁ、僕、お泊りの時いっつも夜中に蹴られて大変なんだよ。

リラの水槽ひっくり返しちゃったらどうするつもりなのさ。

僕と一緒に寝よう、ね?」

と、いろはがうまくスーカをリラから引き離す。

一瞬「やだ」と言いそうな顔をしたが

「絵本読んでくれるならいいよ」

とすぐにいろはに乗り換えた。


いつも僕が返事をする前に割り込んでくるなぁ、とため息をつきながら母に返事をする。

「お泊りはいいけど、リラの食事の水草を余分に持ってきてないんだ。

所長に分けてもらえるか聞いてもらえない?」

「もちろんいいわよ。夕食までまだ少しあるから遊びながら待ってなさい。

今日もどうせ1日中図書館に居たんでしょう?

ほっとくと勉強ばかりしてるんだから、遊んで待つのよ。

それより、この子リラっていうのね!よろしく、リラ」

「よろしく、しばらくお世話になるわね。」

リラが挨拶をするように水槽の中でくるんと泳ぐと、いろはとスーカが「可愛い!」と叫ぶ。

「まぁ!お喋りができるのね!!」

と母も叫ぶ。

司書はもう諦めたようでいつの間にか姿を消していた。

全員あまりにも騒ぐので、持ってきた本を貸し出しし、部屋を移動することにした。



4人が移動したのは広大な研究施設の中央に位置する中庭だ。

中庭は天井がガラス張りになっている。

昼はシャッターで太陽光を遮り、夜はシャッターが格納され、夜空が見えるようになっている。

天気がよければドーム状のガラスがが開き、外の空気と触れ合える。

そして庭の中央には立派な大木がある。

地面はきれいな芝生、至るところに植物が植えられ、美しく管理されていた。

そして子供が走り回っても問題ない広さだ。

この施設は、泊まり込みが多い研究者のために、家族を連れて快適に過ごす事ができるよう工夫されている。

中庭だけでなく、娯楽施設も別の場所にある。


庭に入ると、スーカがお喋りをやめ、大木へと向かっていった。

スーカはあの大木が大のお気に入りで、ここへ来ると必ず木と向き合ってしばらく動かなくなる。


セヴァといろはは腰を掛け、ふぅと息をつく。

「セヴァのママは遊んどけって言ってたけど、何する?」

「僕、借りてきた本読みたいな」

「だよね、その前に何か飲も。おしゃべりしすぎて喉カラカラ。ちょっと待ってて」

いろはは中庭を出ていった。


「リラ、借りてきた本一緒に読む?」

「……」

リラもスーカと同じく大木をじっと見つめ、動かずにいた。

なんとなく、声を掛けてはいけないような気がして、静かに本を開く。


人魚伝説の本を読んでいると、いろはが戻ってきた。

クリームたっぷりのフラッペをトレイにしっかり人数分乗せている。

「脳を働かせた後は甘い物だよね~」

にっこりと側のテーブルに置く。

こちらに気がついたスーカがスイーツめがけて走ってきた。

「リラにも持ってきたよ〜」

いろはが用意した水草は、うちにある物とは種類が違うが、瑞々しく美味しそうだ。


ここで一旦休憩だ。

全員でいただきますと頬張る。程よい甘さがじんわりと体をとかす。

クリームたっぷりだが、いろはお手製なのだろう。

甘さ控えめで重くなく、さっぱりとした味わいだ。

「僕の庭のベリーが食べ頃になってたからさ、スムージーにしてみたよ。

美味しいでしょ?」

「うん、ほんのり酸味もあって、いくらでも飲めそうなほど美味しい。」

いろははこの研究所に直結する建物を住まいとし、所長と2人で暮らしている。

庭というのは、いろはが所有する温室で、さまざまな植物を育て、研究している。

セヴァもそれなりに実力を認められているが、いろはは桁違いだった。

植物だけでなく、様々な分野で活躍しているらしい。

海外の専門家相手に講義を行ったり、論文を書いたり。大人顔負けであった。


「いろはの温室にまた今度連れて行って、お願い」

スーカがいろはにお願いする。

「いいよ、ベリーが成り過ぎてちょっと困ってたんだ。

明日収穫して持って帰ってよ。」


明日の予定が決まったようだ。

気がつくと、水草を横に置いてリラがじっとこっちを見ている。

こっちというより、フラッペを見ていた。

「これ、飲んでみる?飲めるのかな?」

「ベリーをミキサーしただけだし、大丈夫だと思うよ。

僕達があげる水草を食べられるならベリーも問題ないと思うけど。」


「それ、美味しいの?

きれいな色ね。少しだけくださいな。」

リラもフラッペから目が離せないといった様子だ。

「じゃあ、まずは少しだけ。」

リラはすぐに横に置いた水草の葉一枚をちぎり、折り紙をするようにサササッとカップを作った。

スプーンで少しだけカップに入れてあげると、香りを嗅いで一口頬張る。

「……」

もぐもぐしながら、動かない。

セヴァ、スーカ、いろはの3人はその様子を見て不安になってきていた。

やはりあげてはいけなかったかも、病気になってしまうかも、と思い始めた時。

「美味しい…なんてこと…なんてことかしら…」

と小さな声で囁きながら夢中で飲み始めた。

何ともなさそうな様子を見て3人は胸を撫で下ろす。


「セヴァ、水草は自由に持っていって良いってさ。

キミのママからの伝言。」

「本当?よかった、ありがとう。」

「これからもリラを連れてきた時は自由に使っても良いらしい。

これ、キーね。これは所長からだよ。僕も持ってる。」

いろはから受け取った『キー』は、宝石のような青色の石がついた細身のバングルだった。

「……これがキーなの?みんなが使ってるようなカードキーじゃないんだ?」

「ちょっと特別な鍵なんだよ。誰でも入れる場所ではないからね。

研究所に来ないときでも、学校に行くときも、家から出る時は肌身離さずに持っていてほしい。」


見たことがないような真剣な表情でじっと見つめられ、いろはと目を合わせていたが少し恥ずかしくなってきて、ふいと目を逸らす。

いろはの瞳はヘーゼル色でよく見るといろんな色が混ざっていてとてもきれいだ。

仲のいい友達とはいえ、いろはの美しい瞳でじっと見つめられるとムズムズしてくるのだ。

「わかったよ。約束する。」

バングルを右手にはめるとシュッと腕にピッタリのサイズに変化した。

とても軽く、ずっと着けていても気にならないだろう。


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