6. 友人来たる
インターホンの画面を覗くと、笑顔でそわそわしている友人が映っている。
キーを解除するとこちらがドアを開けるよりも先に向こうから扉が開かれた。
「セヴァ!人魚拾ったって!?」
「昨日の事なのに、もう伝わってるの?」
この押しかけてきた友人は『いろは』という。
セヴァと同じ十歳で、クラスも一緒、所長の孫だ。
「見せて見せて見せて見せて」
「見せてっておもちゃじゃないんだけど!」
「会わせて!!!お願い!」
こうなると何を言っても引き下がらないとわかっていたセヴァはいろはを会わせることにした。
所長から聞いたということは、いろはに会わせても何も問題がないということだろう。
「おじゃましまーす!」
やった♪やった♪とスキップしながらセヴァの部屋へ飛んでいってしまった。
人魚を驚かせてはいけないと急いで後を追う。
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「はぁ……なんて美しいんだろう」
「ねぇ、人魚だよ。驚かないの?」
「とーーーーっても驚いたよ!
昨日おじいに聞いた時は心臓が止まったかと思うくらい驚いた!
興奮して眠れなくて、本当は朝一番に行こうと思ってたのに。
おじいが仕事をふってきたんだよ、ひどいでしょ???
人魚のことを教えてくれたのはおじいなのに、朝一番に仕事をさせるんだよ??
ところでこの子、名前はあるの?」
一息で喋る所がどこか人魚と似ているなぁと思いながら、今更名前を聞いていない事に気がついた。
「『リラ』よ」
「……喋るじゃん」
人間の言葉を話す人魚を見て、いろはは固まってしまった。
「……リラ、名前も聞かず、ごめんなさい。
この人はぼくのお友達で、『いろは』って言うんだ。
ぼくの両親が働く研究所の所長の孫だから、安心していいよ。」
「ふぅん。
この人とっても騒がしいけど、私のこと美しいって言ったから大目に見てあげる。」
コンコン、とリラが水槽をつつくといろはがハッと我に返った。
ずっと見とれていたようだ。
「可愛い人魚さん、よろしくね」
にっこりと話しかけるいろはに悪い気はしないようだ。
誰とでもすぐに仲良くなれるのはいろはの才能だ。
「いろは、あなたもとっても美しいのね。
もう少し大人だったら、私のお婿さんにしてあげたのに。
ところで、あなたは王子様がいる場所を知らないかしら?」
突然の質問にセヴァは簡単に説明をする。
補足だが、いろはは人形のような、すべてが作り物のような、人間離れした美しさを持っていた。
性別は男性だが、女の子に間違われる事があるほど中性的で綺麗な人だった。
ただ、リラの好みではなかったようだ。
「ひとまず図書館で調べ物をしようと思っていた所なんだよ。」
「なるほどね、そういうことならうちの図書館へおいでよ。
早速今から行こう!!」
「母さん達は仕事でいないよ。
送ってくれる大人は誰もいないから、また今度ね。」
「大丈夫、運転手さんを待たせてある。」
「すぐに出るつもりなら連絡してくれればよかったのに。」
「少しでも早くリラに会いたかったんだ。
リラも連れて行こう!研究所にならこの子を連れて行っても大丈夫だよ」
随分と用意周到だなと苦笑いをしながら外で待たされている運転手のことを考えた。
いろはは、いつでも好きに外に出られるようにお手伝いさんや運転手が普段からついている。
甘やかされているわけではなく、先程本人が言っていたように、研究所の仕事を任される事もあるため、いつでも自由に外出できるようになっているらしい。
そして親はいるには居るが、一緒に住んでいない。
とある事情があり、祖父である所長がいろはを引き取り一緒に暮らしている。
引き取られる前のいろはと、今のいろはは別人のようだ。
生き生きと楽しそうに過ごす姿を見て、所長がいろはのおじいちゃんで本当に良かったといつも思っていた。
「……じゃあ出かける準備をするからここで待っていて。
少し時間かかるから飲み物持ってくるけど、何がいい?」
「いらない!早く準備してきて!」
リラに夢中でこっちを見もせずにいろはは答える。
生物を保護する時に使う、持ち運び用の新品の水槽があったはずだ。
水槽を取りに、部屋を出る。




