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セヴァと人魚の物語  作者: 添木かもめ
1章 -現代-

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5. 人魚の目的(2)

「あ、あのぅ……」

「何かしら?王子様のところへ行ける方法が見つかったのかしら?」

「そういうわけじゃないけど……」

「なら一人にしてちょうだい!」


プイッと家の中へ帰ってしまった。

人魚は突然しゃべり始めるし、王子様に会いたいと言われるし、初めての事が一気に押し寄せてきてセヴァは大変混乱した。


「ひとまず落ち着こう。」

射光室へ入り、考えた込んだが良いアイデアは全く浮かばない。

部屋の生物たちに餌をあげ、水槽の点検等を始めることにした。


学校の宿題を済ませたところでちょうど昼食時となる。

母が用意しておいてくれた昼食を食べ、新しい水草を持って人魚のところへ行くと、手ぐしでまた髪の毛を整えていた。

整えてはいるが、あまり変わっていない。


「髪の毛を解く櫛を用意しようか?」

「あら、私が櫛を使って髪の毛を梳かすと、あなたはこの水槽に頭を突っ込んで死ぬことになるけど、いいの?」

相変わらず髪の毛に顔が隠れており表情は見えないが、口元がニヤリと笑っているように見える。

「そんな怖いこと言わないでよ。櫛はいらないってこと?」

「櫛があれば最高なんだけれど、いらないわ。

あなたが持っているその水草、くださる?」

「お昼ご飯の時間になったから持ってきたんだ。どうぞ。」

「ありがとう、この草とても美味しいわ。」


人魚は水草を受け取ると束から一茎すくい、髪の毛に沿って梳かし始めた。

すると不思議なことに、手でほぐしても形が変わるだけだった髪の毛がほぐれてきた。

まだ少しゴワゴワしていそうだが、水草を櫛として使う様子を見ているのは面白い。


「あれから少し考えたんだけど、やっぱり今すぐに王子様に会いに行くのは難しいから、時間をもらえない?

とりあえず図書館へ行ってみようと思うんだ。」

「図書館?」

「王子様へ会いに行く方法を探しながら、調べ物をしたくて。」

「そうね、私も子供のあなたに無理を言ってしまったと少し反省したの。ごめんなさい。」

突然素直に謝ってくれたことに驚いた。

さっきまでの勢いはなく、会話ができることが嬉しくて、人魚に無茶な要求をされても少しも嫌な気分にはならなかった。

むしろもっとお話したいと思った

わがままだって何だって、はっきりと要望を伝えてくれる人魚にセヴァはすっかり心を奪われていた。


「ひとまず、次の週末に図書館へ連れて行ってもらえるように両親に頼んでみるね」

「今すぐ行きたいわ」

「僕達は夜にしか外へ出られないし、子供だけで外を歩くのは危ないんだよ。」

「明るいうちに行けばいいじゃない。」

「日中は気温が高すぎるし、、日光に当たると肌が傷んでしまうんだよ。

だから日没後の夜の間しか外へ出られない。」

「人間も色々あるのね……

そう言われてみれば、最近海でヒトが泳ぐのを全然見かけないし、今はたまに宇宙人みたいなのが海辺をうろついているだけね。」

「海で泳いでる人を見たことあるの……?」

「昔、私がまだ子供だった頃の話よ。

カラフルな服を纏った人間が、プカプカと水面で浮いているのを見るのが好きだったのよ」


海水浴をする人間を見たことがあるだなんて、この人魚は一体何歳なんだろうかと驚く。

「すごいや……

ぼく、昔の青くて透き通った海の映像や写真を見たことがあるんだけど、泳ぐことができたら、どんなに気持ちがいいんだろうって何度も思うよ。

夢にもよく出てくるんだ。

どうにかして元の綺麗な海へ戻せないかって沢山勉強を頑張ってるんだけど、大人たちは無理だって笑うんだ。

研究所の人たちは笑わずに応援してくれるんだけどね。」

「あなたを笑うヒトたちは傲慢ね。

海を汚して、責任を放棄して何も考えていないようでは、この先どこへも行けないわよ。

私のお姉さまがたは汚れた海が嫌だって言いながら、次々にこの星からいなくなったの。

残ったのはお父様と私と数人の人魚だけ。」

「…………お姉さんたちがいなくなった?」



ーーーピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪ピンポン♪



人魚の話に愕然としていると連続で家のチャイムが鳴らされる。

この鳴らし方をする人は一人しかいない。

「あぁ、ぼくのお友達がきた。ちょっと出てくるね」

「ごゆっくり〜」

ショックを受けたセヴァを特に気にする様子もなく、人魚は残りの水草を食べ始める


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