13.授業と叫び声
午後の授業が終わるまであと少しというタイミングだった。
突然リラの叫び声が聞こえてきた。
あまりの騒ぎっぷりに冷や汗が吹き出る。
いろはは最初は驚いていたが今はお腹を押さえ静かに爆笑している。
「あら!なんてこと!!!やだぁ!セヴァ!!!!セヴァーーーっ!」
名前を呼ばれてしまっては知らん顔はできない。
先生もセヴァの方を怖い顔でじっと見ている。
「あ、あの……すみません。」
「セヴァさん。
申し訳ありませんが、妹さんにあともう少しだけ声を落として頂くよう言ってきてください。」
「はい、すみませんでした……」
リラは変わらず騒ぎ続けている。
声から楽しそうな様子が伝わってくるので、怪我などではないだろう。
急いで部屋を出て水槽へ駆け寄る。
「リラ!ごめん、今授業中で、君の声が他の人にも丸聞こえなんだ!
…………!!」
「セヴァ!やっと来たのね!見て!」
水の中でふんわりと一回転するリラの髪の毛が、一緒にふんわりと弧を描いた。
先程まで茶色くゴワゴワしていたはずの毛先が、顔周りと同じように虹色にきらめいていた。
「わぁ……とってもきれいだね……」
「そうでしょう?
私、とっても疲れていたので家の中でぐっすり気持ちよく眠っていたの。
お腹が空いて、起きてみたら頭が軽くて、そうしてみたらどう?こうなってたのよ。」
本当に美しかった。
水中でふんわり泳ぐリラの透明感にセヴァは惹きつけられていた。
「よかった……何事もなくて……
……もう少しお話していたいんだけど、まだ授業が終わらないんだ。
あと少しだけ、声をおさえて静かにしてもらえると助かる。」
「あら、まだ終わってなかったのね。
わかったわ。終わったらまた後で見に来てちょうだい。」
「もちろん。また後でね、もう少しで終わるから!」
部屋へ戻ると授業は全く進んでいなかった。
一部の女子が怯えるようにして、泣いていたのだ。
泣くのをこらえている様子の男子も数名いる。
先生は戸惑った様子で生徒のそばで落ち着かせようと話しかけている。
いろははさっきまであんなに笑っていたのに、真顔で静かに座っている。
チラチラと視線を感じたが、どうしてこういった事になっているのか全然わからない。
隣の席の子に何があったか聞いてみても
「あー……
さっきの叫び声のことでちょっとね。」
と苦笑いだ。
いろはが遠くから『ま・た・あ・と・で』と口パクで言う。
女生徒が泣き止みそうにないので先生が全員に聞こえるように言う。
「今日はこれで終了します。
宿題については後ほど全員にメールを送りますので確認しておいてください。
それではさようなら、また明日。」
いっきに教室がざわめき始める。
結構な騒がしさだったため、先生が指揮棒をヒョイッと振り強制ログアウトをかける。
教室の景色が消えた。
泣いていた生徒以外はオフラインとなる。
「一体、なにが何だか……」
リラの叫び声がどうのとか言っていたか。
そんなに泣くほどの叫び声だっただろうか……
しばらく座ったまま考え込んでいると、通信機器に着信が来た。
発信者の名前はいろは。さっきのことかな、と応答ボタンを押す。
「おつかれー。いやぁ、大騒ぎだったねセヴァくん。」
「まさかリラがあんなに騒ぐとは思わなかったよ、焦ったぁ。
また髪の毛がきれいになっていたんだ、それではしゃいでたみたい。」
「まじ??今からそっち行くわ。」
要件だけ言って返事も待たずに切ってしまった。
いろははいつも自分の言いたいことだけを言ってすぐに通話を切ってしまう。
慣れっこだし、この後来ると言うので、別に良いが。
時計は5時前を指していた。
終礼を済ませ5時頃にログアウトするまでが学校の時間だが、今日は少し早めに終わった。
あと1時間もすれば日の出の予定だ。
涼期は太陽が少し出た後も1時間ほどは活動できる。
両親とスーカもそろそろ帰宅する頃だ。
いろはは即行動派だし、運転手さんもついているか直接陽を浴びる心配はないだろう。
友人の来訪に向け、少し部屋を整えることにする。
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12話にも載せた『セヴァの1日』のグラフでは学校は3時までとなってます。
登校日は3時まで、リモートの日は5時までが学校の時間です。




