12. 涼期
その昔、太陽が昇っている時間帯に活動できていた頃には『四季』があったと聞いたことがある。
昔ははっきりと『暖かい』『暑い』『涼しい』『寒い』と感じることができたという。
現代は5月から10月の『夏期』、11月から4月の『涼期』のみで、春と冬、秋とはもう誰も言わなくなった。
そして今、11月の『涼期』に入ったため、学校も週末の2日間は登校できるようになる。
登校日以外はリモートで授業だ。
「ふぅ、今日も沢山拾った。学校の準備をしなくちゃ。」
帰宅する頃には外は暗くなっていた。
拾ったゴミを片付けていると、リラの悪態が聞こえてくる。
「あの、目の前でゴミを捨てた奴。
今度またやったら、セイに言って海に引きずり込んで、浮いてるゴミの一部にしてやる……」
随分と恐ろしい事を言っている。
独り言のようなので聞こえないフリをして支度を始めた。
射光室の机に学用品をセットし、リラを水槽へ戻そうと様子を伺う。
ご機嫌で髪の毛を梳かしている。
「僕これから授業があるから待っていてくれる?
お昼ご飯の時間には一度戻って来るから。」
「わかった、ゆっくり過ごすわ。
陸の生活は初めてのことばかりで、少し疲れちゃった。」
水槽へ戻してあげるとすぐにスイっと部屋の奥へ姿を潜めた。
朝食を取り、部屋のヤドカリ達への餌やりを一通り済ませる。
朝礼5分前のチャイムが鳴ったので射光室へ入り、スイッチを入れると、上から光が降り注ぐ。
学校の教室の様子が等身大のホログラムで映し出され、実際に教室に居るような光景が広がった。
リモートの日は、射光室で光を浴びながらの授業となる。
生徒たちが 賑やかに教室の中を走り回ったり、お喋りしたりで騒がしい。
ホログラム投影なので触ったりはできないが、互いの顔を見てお喋りしたり交流は問題なくできる。
「間に合ったぁ。」
「おはよう。無事間に合ったね。」
「おはよう、いろは。
なんとかね。昨日は色々ありがとう。」
「どういたしまして。で、次はいつ来るの?」
「次の休みかなぁ。」
「えーっ?今週は登校日があるし、木曜日からリラを連れてまたおいでよ!」
「木曜日”から”?」
「どうせ一緒のクラスなんだし、僕んちに帰ってきて金曜日も一緒に登校すればいいよ。
キミの両親もしばらくは忙しいと思うから。
また中庭でみんなで寝よう。」
「そんなに頻繁に行っていいのかな。」
「ふふっ、良いにきまってる。じゃあまた後で。」
いろはがニコリとした所でちょうど本鈴のチャイムが鳴った。
午前の授業を済ませ、昼食用の水草を持って水槽の様子を見に行く。
「リラ?お昼だよ。ご飯持ってきたよ〜」
声を掛けるが出てこない。
相当疲れが溜まっていたのだろう。
「寝てるのかな?水草ここに置いとくね。」
返事がないので少し不安になるが、今朝は起きるの早かったしな、と思い直し、自分も大きなあくびをしながら射光室へ戻った。
いろはと向かい合って食事を始める。
「それで、リラは海を見るだけで落ち着いたの?」
「うん、夜中にお父さんの声が聞こえたって言うんだ。
テレパシーとは違うって。
リラのお父さんが怒ったら海が荒れるらしいけど、全然荒れてなかった。
静かな海を見たら安心したっぽい。」
「なるほどね。
まぁ目的があってこっちに来てるわけだし。
どんどん身体もきれいになってきてるしね。
わざわざ汚れたところには帰りたくないかもしれないね。」
「家族と離れて暮らすって、さみしくないのかな。」
「僕は血のつながりは全く信じてないから。
本当に一緒にいたい人のそばに居られたらそれでいい。
そういう繋がりを求めて、飛び出してきたのさ。」
「そんなもんかなぁ。」
「そうだよ、僕を見てきたセヴァならわかるでしょ?」
いろははセヴァの目をまっすぐに見つめて言う。
「もうおばあちゃんは居なくなっちゃったけど、またいつか会えるって信じてる。
セヴァの近くが今は一番心地良いな。小さい頃からずっと。」
キャーッと教室の隅から女子の叫びが聞こえてきた。
いろはのこういった言動には慣れっこのセヴァだが、所構わずこういう事を言うのでどうしても注目を集めてしまう。
特に学校の女子達に騒がれるのは恥ずかしい。
ほっといてほしいのに。
「そういう誤解されるようなことを。大きな声で言わないでよ!」
顔が少し熱い気がしながら残りのご飯を食べ進める。
「正直な気持ちは、伝えられる時に伝えておかないと。
後悔しちゃうからね。」
ニコニコとご飯を頬張るいろはを睨みつけ、食事を続けた。
◇世界観設定◇
◯暦
1日→24時間
1年→1月〜12月
季節→涼期(11月〜4月)
夏期(5月〜10月)
年度始まりは1月です。
1年通して生活サイクルはほぼ同じですが、日照時間や、季節により学校の時間が変わります。
-------------✙✜----✙✙-----✜---✜----
作中でも描かれている通り全員が昼夜逆転生活を送っています。
本来なら作品内でしっかり説明すべき所ですが図にしてみました。
時間の流れや曜日は私たちの世界と同じです。
これから随時、人物相関図やセヴァ達のイラストも追加していきたいと思っています。
育っていく物語を見守っていただけましたら幸いです。
お読み頂きありがとうございます。
添木かもめ




