第六話
よし。連絡先一覧を見よう。
[秋来紅葉、朝陽有栖、此処夏ココ、高瀬奈々美、月見父、月見母、夏愛綺羅々、花木美々、春原桜、日輪向日葵、冬許寒那、星空修羅、夕星宵、雪風胡桃]
と、本来はなるはずなのだが……。
[朝陽有栖、海野霞伊、月見父、月見母、春原桜、星空修羅]
ん~? 目がおかしくなったか~?
両親とクラスメイトのヒロイン3人と、友人しかないんだけど??
てかゆーてクラスラインの中にいるだけだし、ヒロイン!
何で?
こいつなんも進展してねぇじゃん。
よし。写真見てみよう。くるみんとの思い出の写真が1000枚くらい入っているはずだが──空、星空、桜、海、山、紅葉、雪、などなど、自然の写真しかない。
……くそが友達いねぇだろコイツ! ざけんなよ!
……ふぅ。
一旦落ち着こう。月神里楽よ、冷静になれ。
「……くっそ…………」
「……お前大丈夫か?」
というか、今話してきたこいつは誰なんだろう。
「あの……。貴方の……お名前は?」
「は⁇ 殴るぞ?」
「ひぃっ。違うんです、違うんです……。殴らないでぇ……!」
「お前……大丈夫か? 様子がおかしいけど……」
「オマエ……イイヤツダナぁ……」
「カタコトだぞ。……本当に大丈夫か? 頭打ったのか? ……大丈夫か?」
「おまえ……なまえを……おしえてけろ……?」
「誰だよお前。オレが友達だったのはお前じゃないぞ」
「だっ、だから……名前を」
「海野霞伊だよ。わーったならお前も正直に本当のことを話せ」
思ったより素直だなコイツ。警戒心100かと思いきやガード0なのかよ。
「うみの……かい……ほえー……。なんて呼べば良いんでしょう」
うみのかいって……海の貝やん……。ウケる。あっ、そういえばさっき連絡先にあったな。
「お前今絶対に海の貝だウケるって思っただろ」
「えっ……」
エスパー……? 怖い……。
「(チッ。)オレの名前の漢字書いてみろ」
えっ、舌打ちした? ……気のせいか。
うみのかいさんは私に何かの裏紙とシャーペンを渡してくる。
連絡先見たい。なんだっけ漢字。
「えっ。……」
さっとしか見てないよー……。
うみのかい……。うみは、海、かな?
うーん……。
の? の、の、乃、之、野、のは多分このどれか。之かな。
かい? 貝しか知らんけど。かい……二文字とかかな? 夏、香、火、花、果……? しっくり来なさ過ぎる笑笑。
私は紙にささっと、“海之貝”と書く。
と、声をわなわなと震わせながら怒りを露わにして言い放つ。
「……ふざけてるのか?」
「いえ、至って真面目で御座います」
「……チッ」
舌打ちした! この人舌打ちした!
この人でなし! 私可哀想!
“海之貝”さんは私から紙とシャーペンを乱暴に奪い取り何かを書き始める。
海……野…………霞……伊……ふーん。
「海野さんってお呼びしますね」
「なんでだよお前霞伊って呼んでただろうが。何なんだお前、本気で。記憶喪失的な何かか?」
「記憶喪失というか……異世界転生的な?」
「は? 意味が分からない」
「っすよね」
「っすよねじゃねぇ。ちゃんと説明しろ。つーか真面目に話せよ」
「いや、こっちは真面目の中の真面目っつーか……」
スッと先程の紙を差し出してきて海野さんは言う。
「この紙に簡潔に書いてオレに渡せ」
「えぇ……」
なんて書けば……。ゲーム内の世界に転生しました。前世では、過労死しました。以上。
になるんだけど……。
分かりやすく? 難しいよ……。
ギャルゲー『A.S.C.T. GIRLSトキメキ☆ダイアリー』の世界に転生
↓
前世:月神里楽(高三)(女)
死因:過労死(6月15日)
↓
目が覚めたらいつの間にかここに!
よし、こんなもんか。
「できました」
「…………」
海野さんは眉に皺を寄せ顔を顰める。
なんだこいつずっと不機嫌だなオイ。
「意味が分からないんだが?」
「私が一番分かりませんが、貴方はまあ巻き込まれ事故ですね。というか今までの月見勇吹輝が一番の巻き込まれ事故です。この人の魂は何処へ行ったのでしょう? それとも私のゲームと連動しているんでしょうか? 関係値だけ初期設定に戻って? そもそも──」
「おーい。戻ってこーい。ブツブツ喋んなハッキリ喋れ」
「え。……声に出てました?」
「思いっきしな」
コミュ障オタク女よ、死ね! 今ここで死んでしまえ! というかいっそ殺してえぇーー……!
……あー。さっき死んだばっかだけどもう死にてぇ。
「……まあつまり、ラノベ的な事がお前の身には起こった訳だな? ……この、前世の名前はなんて読むんだ?」
「つ、つきがみりら、です」
つーか物分かり良すぎじゃね。育ちが良すぎじゃね。死にたい。
「……ほーん。オレは今からお前にどう接せば良いんだよ?」
「え……」
私にそんな事を申されましても……。今まで通りでいいんだけど。
今まで通りってなんだ?
うむむ……。どうしよう。
一旦黙って口を噤んでしまうと次を話し出しづらいんだけど……。コミュ障にはもう限界が近づいているんだけど……。てかもう今までで一番のコミュニケーション能力を使っている気がする。
もう無理。本当にも一無理。どうしよ。
待って、待って待って。どうしよ、どうしよう! 沈黙が辛い!
何で、なんか喋れよ海野霞伊!
おらぁ。まじでよぉ。なんか喋ってくれよぉ……。はあぁ……。死にたい。
「…………」
「…………?」
「…………っ……!」
息が詰まる。
どうしよう。どうすれば良いんでしょう。
助けて、誰か。誰か、コミュ強な方、誰か、誰か助けて……っ!
……ああもう月見勇吹輝でいいよ。月見勇吹輝の魂か何かでいいから助けて。コミュ強だからモテんでしょ? ギャルゲーの主人公してんでしょ?
出てこいやおら。おらおら。
もう本当に誰でも良い。
美緒さんでも良いから。
あの、隣の席だった……誰だっけ。名前知らないや。お前でもいいから!
いっそお母さんでも良いし!
もうこの際ならばお父さんでも良い!!
誰か助けて!!!! ヘルプミー、プリーズ!
…………死にたい。




