第二話
「──それでは、お疲れ様でした」
「んー。お疲れー。学校頑張ってねー。無茶はダメだからね」
「はーい。ありがとうございました」
バイトが終わり、現在7時20分。学校はあと10分後に始まる。ここのコンビニは学校に近いのでそのまま歩いて行く。
ちっ、あんまりガチャチケ集まらなかったか。授業中は触れないしなぁ。
と、ものの5分もしないうちに学校に着く。
いつもルーティン化しているこの日常を思い返すことは、思ったより楽しいなあと思う自分がいる。
…………フラグか? 死ぬのか、私。いや、私は何があっても死なないぞ? くるみんのイベントでくるみんをひくまでは絶対に死なないぞ!
ああ、これこそ死亡フラグか。
もしや私の本能では死にたがっているのか? そんなまさか。
こんな日常に嫌気がさし始めている? 無意識に精神的、身体的に限界を迎え始めている?
まあくるみんのお陰で長らえている生命だと言っても過言ではないのだが。
そこまで限界なのだろうか。高校一年生になった時から続けている生活だと言うのに。
それに今私は受験生だ。学校を休むわけにはいかない。
大学受験をするにはお金がいる。バイトを休むわけにもいかない。
ん゛な゛あ゛あ゛あ゛ーーっ!
もう、面倒くさいってば。いちいちそんなこと考えたって意味がない。
私にとって学校は静かにいられる場所だし、バイトは美緒さんとたくさん話せる場所だし、家で一人の時は思いっきりギャルゲーができる時間だし。
お父さんがいる時は……少しだけ、苦しい時間。
私はお母さんに会ったことがないのに、それが分かってるはずなのに、毎日毎日お母さんの話をしてくる。
顔を合わせる度に私とお母さんの似ているところを熱弁してくる。
美緒さんに言った通り、お父さんには感謝している。
私のためにずっと働いてくれている。
妻が死んだと言うのに、だ。
私の中に居るはずもない、母の面影を探して、追いかけて。
だって、そうでしょう? 私はお母さんに会ったことがないのだから。
そんな私に、母の、月神紫音の、何が残るのだろうか。
顔?
身体付き?
声?
性格?
何かが残っていたとしても、私は知らない。
お父さんが言うそれは、お父さんの中で美化されたものかもしれない。
そんな未知のものを信じ込んで、お母さんとの共通点を見つけて喜ぶだなんて、馬鹿らしい。
ただただ、『お母さんはこんな人だったんだよ』『お母さんはこんなところがあったんだ、里楽と似てるね』とか、そんなことで良いのに。
『紫音は、こんな女だったんだ』『紫音はこんなところがあったんだ、君と似ているね』。
……確かに、私だって最初は嬉しかった。私にお母さんと似ているところが少しでもあることを喜んでいた。
でも。
お父さんのこの言い方は、本当に私に寄り添っているのだろうか?
私を見る慈愛に満ち溢れたあの瞳は、本当に私を見ていたのだろうか。




