第十話
「──お。おかえり」
「ただいま! 今までで一番すっきりした気がする!」
「その話はやめぃ。……んじゃ、今度こそこれからを話し合うぞ」
「結婚すんの?」
「しねぇよ。真面目に話せ」
「結婚しそうな口ぶりだったからつい」
「……まあ、オレも言ってて少し思った」
「だよね」
「……本題に入ろうか? まずそもそもオレ、急遽泊まりなせいで着替えも何も持ってない」
「それは……そこまで体格違わないし勇吹輝のを借りれば良いのでは?」
「そうする予定」
「じゃあ何も話し合うことないじゃん」
「いや……そもそもお前がここに転生してきたんだろ? その目的、というか信念? みたいなのやつのおかげで」
「胡桃ちゃんは世界を救うからね。少なくとも私が生きる世界は救ってくれた」
「……胡桃……って、雪風胡桃のことか?」
「うん……てか前にもそう言ったような?」
「……あー。言われたような気がするけどその時はまだ飲み込めてねぇな。話半分で聞いてた」
「まあそらそうだわな」
「雪風胡桃って、一年D組のだよな」
「そうだけど。おぉん? 狙ってんのか? 許さねぇぞ?? おぉん?」
「圧。狙ってねぇよ。こちとら恋愛なんざからっきしだかんな」
「あらまあ意外ですこと」
「お前が友達だとオレらは霞むんだよ」
「あぁ……それはなんというかすまないな」
「別に謝ってもらわなくても大丈夫」
「そんで? 胡桃ちゃんがどうかした?」
「雪風胡桃に未練があって転生してきたってことだろ?」
「まあそういうことになる。ジュンブライベ逃したもん」
「ああ。学園であるイベントのことか?」
「え!? そんなもんあんの!?」
「え……知らなかったのか……?」
「知ってるわけねぇだろ! 今日転生してきたんだぞ!?」
「転校してきたくらいのノリで言うな。……まあそれもそうか。それで、そのイベントについて。学内であるわけじゃないんだが、希望者が参加できるドレス着る体験? みたいなやつ」
「何それ」
「来週にある」
「え!? えー。じゃあ無理やん。胡桃ちゃんと話したこともないし。そもそもそれ女の子しか行けないのでは?」
「まあそうだな」
「くっそ、ゲーム内ならどうやってイベント化する予定だったんだ……?」
「……確か、一人だけ行ける、みたいな話を聞いたような」
「男!?」
「ああ。その、希望した女子たちがエスコートされたい、まあされてもいいかな、みたいな男子を一人選んで、それが一番多かった人が選ばれる」
「そんな、全員違う人だった場合……?」
「じゃんけんかあみだくし」
「運試し。そもそもその名前に俺が書かれる可能性は限りなく低いのでは?」
「そうだな」
「というか、それに胡桃ちゃんが参加するとも限らないのでは?」
「そうだな」
「じゃあこの話は終わろう」
「……そうだな。じゃあこっちから質問していいか?」
「うんいいよ。てかそっちからしか質問されてないような」
「ギャルゲーってことは、ヒロインが何人か居るはずだよな。誰なんだ?」
華麗にスルーされた。
「えっと、まず春原桜。幼馴染で、まあやべぇやつだな。ストーカーしてるやつ。水曜は塾だからしてないっぽいけど。桜髪。んで、夏愛綺羅々。二年生の部活の先輩。良家の生まれ。大人っぽいけど子供っぽい。蒼髪。次は、秋来紅葉。中等部三年で、部活の後輩。カチューシャをつけてて、髪のインナーを染めてる。教室では丸眼鏡かけてる。橙髪」
「……ちょっと待て、部活の先輩やら後輩やら、って言ってるが自分が何部か知ってるのか?」
「? 知っているわけないが」
「……ふむ。……じゃあ、何部だと思う?」
「えぇ……」
男女混合の部活とか限られてくるよな。
文化部ってことだろ。うぅ~ん……。
美術部、文芸部、吹奏楽部、合唱部、放送部、演劇部、競技かるた部、茶道部、書道部、ってとこか?
えー。
ワタシ、ブカツ、シタコトナイ、カラ、ワカラナイ。
「分からん! 答えは?」
「演劇部」
「え、演劇、部、だと……!?」
「大丈夫か?」
「なにも、だいじょうぶ、な、こと、ない」
「息しろー」
「すーは一すーは一」
「大丈夫か?」
「まあ。もう部活辞めればいいかな」
「何でだよ。さすがに行ってみてから決めろよ」
「まあ辞める気はこれっぽっちもない」
「おぉう、そうなのか?」
「うん、部活したことないからちょっと楽しみだった」
「あ、あぁ、そ、そっか」
「なんか心外そうな顔なんだけど」
「気のせいだ」
「ちなみに霞伊は何部なので?」
「……軽音部兼吹奏楽部」
「…………」
運動部かと思ってた、いが〜い。
「……なんか意外みたいな顔されてるんだが」
「気のせいでしょ。『運動部かと思ってた、いが~い』って思っただけだし」
「思ってんじゃねえか」
「まあまあそんなことは置いといて」
「それ忘れ去られるやつだろ」
「お、い、と、い、て」
「圧」
「次のヒロインは、冬許寒那。中等部の頃三年間おんなじクラスだった人。月見勇吹輝とね。ショートヘアでちょっと癖っ毛。灰髪。もふもふ、って感じ。次は──」
「ちょっと待て、あと何人いる?」
「えーっと、八人?」
「まじか......」
「続きを言ってもよろしくて?」
「どぞどぞ」
「花木美々。職場体験の時、同じ体験場所だった。小悪魔系あざと女子。肩につくくらいの桃髪で、ハーフツインテール。
此処夏ココ。もともとこの人とは関係がないかな。高等部にあがってから初めて会う、って感じ。ギャルでお婆ちゃんっ子。翠髪で、前髪は作ってなくて、後ろでポニーテルにしてる。
高瀬奈々美。修学旅行の自主研修の時同じ班だった。頭がいい。茶髪で、前髪が長くて、眼鏡かけてる。
雪風胡桃! 中三の時に同じクラスだった! 可愛い! 髪の毛ふわふわ! 可愛い! 好き! 薄青髪!
……………………。
朝陽有栖。現在同じクラス。気だるげ系ギャル。紅髪。サイドテール。メイク好き」
『テンションの落差が酷い』とでも言いたげに顔を顰めてきたが、私は気にしない。気にしないぞ!
「日輪向日葵。中等部の頃からずっと同じ委員会に所属している。ちなみに図書委員会。ちょっとふわっとしたストレート髪。肩につかないくらい。黄髪。
夕星宵。生徒会役員の一人。読書好き。中等部の頃に生徒会役員の応援演説を頼まれた。髪の毛はめっちゃ長くて、さらさらストレート。白金髪。
最後は、星空修羅。現在同じクラス。星が好き。お嬢様。紫がかった黒髪。腰くらいまである。ハーフアップ。
以上! どうだ!」
「……まあ、大体は知ってる奴だったな」
「……自慢か? 自慢なのか? 自分はコミュ力あるよ自慢なのか!?」
「……ちげぇよ……」
本日何度目か分からないため息をつかれた。




