表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

第九話

 大人しく靴を脱ぎ、靴箱の下の空間に入れる。そして、玄関と台所を繋ぐ引き戸に手をかける。

「(今気付いたんだけどさ)」

「(……なんだ?)」

「(…………うちの構造と似てる)」

「(……まあ、お前の誕生日でスマホも開いたんだし、似てていいんじゃね)」

「(そっか。……え、まず入ればいいかな?)」

「(……部屋に行くとかではなく?)」

「は? まずは手を洗うのが常識でしょ」

「そうだけど」

 霞伊(かい)は少し間を空けて言う。

「(何処かよくわかってねぇんだろ?)」

「(……いや。たぶんだけど、わかる)」

「(…………信じていいやつか?)」

「……駄目なやつとは」

「お前ずっと適当に喋ってるから」

「うるせぇよ」

「(……本当に大丈夫か?)」

「(やめて? 不安になるから。……たぶん、大丈夫)」

 たぶんうちの構造と似てるんだとしたら、まあそもそも洗面所なんてすぐわかるだろ。

 ガラガラ、と引き戸を開ける。

「──随分と長い立ち話だったわね」

 おお、お初にお目にかかります、月見(つきみ)勇吹輝(いぶき)のお母様。

 身長は思ったより高い。170弱くらい? 知らんけど。月見勇吹輝より少し低いくらい。

 顔立ちもめっちゃ整っているので、これだけ見ればモデルでもしているのではと思うほどだ。

 体型もばちくそスレンダー中のスレンダー。何言ってるか分からんけど。ははは。ここまで来ても死にたいと思わせてくるのか。死にたい。

「もう、早く手を洗いなさい」

「…………はい」

「? あ、えっと、改めまして、お邪魔しますね」

「霞伊くん、ごめんなさいね? 勇吹輝が長いこと玄関に居させてたみたいで」

「い、いえいえ。大丈夫です。こちらこそ、急に来てすみません」

「…………」

「…………?」

 そのあとは無言で手洗いうがいをした。終えると、瞬時に荷物を取り、自室があるであろう二階へ向かう。

「…………」

「…………?」

 霞伊がずっと頭にはてなを浮かばせているけれど、無視して進む。

 自室へ向かう途中でも、もちろん無言である。

 なぜかといえば。

「──はーーっ!」

「わっ、びっくりした。急にでかい声を出すな!」

 自室(仮)(ほぼ確)についた途端に私が大きく息を吐いたら霞伊に怒られた。

「……いや、よく考えたら私お母さんと話したことないんだったと思って」

「……いや、よく分からんのだが?」

「あれ、言ってない?」

「……言われてないと思うが?」

「お母さん私が生まれた時に死んじゃったんだよ」

「…………。それ、は……ご愁傷様で?」

「別に。……まあ、お父さんとは話したことあるけど」

「あるけど? なんかあったのか?」

「いや、なんというか……。お父さんはまだ、お母さんが死んだことを受け入れきれてなかったというか」

「あー…………」

「……なんか言いたげな顔だな?」

「それでは遠慮なく言わせてもらうと。……おっっっっっっもい」

「はい?」

「そんなおっっっもい話を急にし始めんな!」

「えぇ? そんなに重い?」

「おめぇわ! 急に母親死んだ話してそれを父親が受け入れ切れてなくてその中でお前が生きていたとなるとくっそ重いストーリーだわ!」

「ごめん何を言っているのかがよくわからない」

「…………ああ……まあいいや」

「何でだよ」

 なんかちょっと哀れみを帯びた瞳で見られた。

 心外なんですけど。

 まあいいやならまあいいやなんだろう。

 まあいいや。これからどうするかを考えよう。

 思考を切り替えると、霞伊も同じような思考に至ったのか、数瞬早く霞伊が口を開く。

「とりあえず、これからどうするか考えようぜ」

「そうだね。わたっ、俺も同じことを言おうとしていました」

「別にオレといる時は『私』でも──いや、『俺』で慣れたほうがいいか。何でもない」

「一人でぶつぶつ喋んなよ。怖い」

「何でだよ……。まあいい。とりあえず早くこれからのことを決めてしまおう。まずは、泊まるっつ一話だが、まあ別にそんなすることないよな?」

「え? あるでしょ」

「……例えば何だよ」

「お風呂一緒に入る」

「入らねぇよ!?」

「え!? 入るよね!?!?」

「え、何の話だよ、そんなこと言われてねぇよ」

「トイレとかどうすればいいの? もうすでに尿意が半端じゃないレベルなんだけど?」

「は? さっさとトイレ行けよ!」

「いやだからどうやって?」

「トイレ行って普通に座ればいいだろ!」

「そうなの!?」

「ちげぇの!?」

「トイレ何処なの!?」

「知らねぇよ!」

「あの辺かな!?」

「知らねぇけどさっさと行け!」

「う、うん」

 霞伊を部屋に残し、私はおそらくトイレがある場所へ向かう。

 階段を降り、左に曲がる。その突き当たりにある扉を開くと──。

「──っ」

 トイレ! よっしゃあい!

 そして私は言われたとおりに用を足す。

 まあそんな変わらんか? 女の時と。

 ようわからん。

 詳しくはまあ言わないほうが良いだろう。

「──っし」

 関門一つクリアですな!

 るんるんと階段をのぼる私。

 次の関門? そんなもにゃあない!

 はははっ! 今のあたしゃあ無敵じゃい!

 よっし。死のう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ