鈴木太郎の日常
サイコな女の子を書きたかったのです。
俺の名前は鈴木太郎。
どこにでもいる平凡な中学二年生。
成績も顔も体も、全てが普通。
ただし、声だけは違う。
練れた太い声で、周りからはイケボだと言われる。
いや、家庭環境も特殊だろう。だが今回、それについて話す気はない。
今は朝のホームルーム前。ゾロゾロと生徒が教室に入ってくる。
物語の始めのため、こんな自己紹介をした。
まあ今日も。特別なことは何も起きない、平凡な日常が始ま―――
「おはよう。タロー君」
隣の席に腰掛けながら、女子生徒が話しかけてきた。
こいつは黒石雫。
顔は普通。痩せていて身長が180cmもある変な奴。
別にこいつは友達でも恋人でも幼馴染でもない。
ただの隣の席の女子生徒ってだけ。
しかし。
こいつはちょっと他の人と違うところがある。
それは―――
「昨日ね。駒田先生の浮気現場見てさ。写真撮っちゃったんだよね。放課後、奥さんに送ろうと思う」
これだ。
「やめとけ。家庭崩壊するって」
「分かんないよ?喧嘩だけで終わるかもしんないじゃん。それは駒田先生と奥さん次第だよ」
こてんと小首を傾げる隣の悪女。
それにつられ、三つ編みのおさげが揺れた。
黒石は、『人の幸せを壊すこと』が大好きだ。
「黒石は何でいつも、そんなことするんだ?」
「目の前にある幸せに気づかせてあげてるんだよ。今が幸せなのに気づかず気づこうともせず、それどころか蔑ろにしてる愚かな人々にね」
マジでサイコだな。
「ほんとやべーよ」
「そうかな?」
そこで始業のチャイムが鳴った。
一時間目は数学。
あはは。1次関数ぅ?なぁんですか、それ。
俺の脳細胞、破壊しに来ないでくれます?
二時間目は理科。
よりにもよって超苦手な人体。
覚えること多すぎんだろ。クソッ!
三時間目は国語。
これは・・・・・・特に何も無かった。
四時間目は体育。
いや、スポーツは苦手なんですけど。
バスケで相手の陽キャチームにボッコボコにされた。
昼休み。
好きなラノベを読んでいると。
「またエッチな本読んでる」
黒石が話しかけてきた。
頬づちをうちながら、こっちに顔を向けていた。
「エッチな本じゃねーし!ただのラノベだし!」
変な勘違いされて頭に来た。
「ふーん。ラノベか」
「文句あるかよ」
つまらなそうな態度がさらに腹立つ。
「これくらいの年の男子なら。いつでもどこでも、エッチな本読んでるかと思ってたんだけどな」
「黒石の中の男子って野生動物か何かなの?」
「それに準じた人間、だよ」
「もうちょっと知的にしてくれよ」
「それは君次第かなー」
そんなこんなで昼休みは終わった。
五時間目は地理。
食事の後だから、うつらうつらとして―――
「ほらぁ。起きろー。今は授業中だぞー」
おじさん教師・郡谷に起こされた。
六時間目は美術。
今取り掛かっているのは静物画。
光と影を表現って。無理難題だよ、俺にとっちゃ。
そんな感じで、一日はあっという間に過ぎた。
放課後。陰キャな俺はもちろん帰宅部である。
ポツンと一人で帰り道を歩いている。
その時。
ある一軒家の前に人影を見つけた。
うちの中学のセーラー服を着ている。
バカデカいから、すぐに誰か分かった。
「黒石・・・・・・」
「あ。タロー君。奇遇だね」
俺の呟きも聞き取ったようだ。地獄耳だな。
「そこ、黒石の家じゃないだろ」
「うん」
そんな聞き方をしたが、俺は黒石の家を知らない。
でも朝のことを思い出して――もしかしたらと思って聞いた。
「まさか駒田先生の家?」
「うん。今ポストに写真入れたとこ」
平然と己の悪事を告白できる度胸に驚いた。
「マジでやったのかよ」
「うん」
元気に頷くから、驚きを超えて呆れてくる。
「じゃあ、バイバイ。また明日」
そう言って、足早に黒石は去っていった。
「え?おい待・・・・・・」
止めようとして、やめる。
俺が止めたところで何の意味があるんだ?
浮気したのは駒田先生だ。
二人の仲が壊れようと、そんなの駒田先生の自業自得じゃないか。
俺がとめることはない。
俺はその場から去っていった。
可能性は低いですが、続編が出るかもしれません。




