最終話 What's done cannot be undone.
目を覚ます。
いつも通りの朝が来た。
なぜだか涙が頬を伝う。
長い夢を見ていたような、いや記憶だ。確かにここであったことだ。
どうして忘れてしまったんだろう。あれからどのくらい経ったのかわからない。確かめなければならない。あの場所に行けばわかるはず。
私は走り出した。この記憶が本物であることを信じて。
辺り一面に白い花が咲き乱れている。その真ん中には大きな石がある。あれは墓石だ。ここで久遠が眠っている。
「久遠、ごめんね。でもね、思い出せたよ。一緒に暮らした二年間。一緒に過ごした十数年を。ねぇ久遠。起きてよ。もっとお話ししよう。私に会いに来てくれたんだよね。久遠は一度だって約束を破ったことはなかったもん。ありがとう。だからお願い。もう一度目を覚ましてよ」
私は溢れ出る涙を抑えることができなかった。久遠はもう二度と帰ってこない。分かってる。でも願ってしまう。もう、あの日々を忘れてしまいたくないから。
今なら分かる。この花はユーフォルビア・ダイアモンドフロスト。別名ユキハナソウ。私と久遠の一番好きな花。
今はただ思い出をかみしめて、空に願う。
あなたにまた会いたい。
ユーフォルビア完結です。
読んでくださり、ありがとうございました。
今後の励みになりますので、ぜひ感想や評価等よろしくお願いします。