第2話 In the scent of memories
「ここってどんな場所なの?」
どんな所なんだろう?まずは、自然が豊かで…し、自然が豊かで…あれ?それ以外なにも思い浮かばない。この世界に何があるかなんて考えたことなかった。でもやっぱり、ここの魅力と言ったらこれでしょ!
「お花がたくさんある場所!色んな所に色んな花がたっくさんあるの!」
「いいね!じゃあ、花冠とか作ろうよ!シロツメクサもいっぱい生えてるし」
「はなかんむり?しろつめくさ?」
「ちょっと待っててね」
久遠が何やら作業を始めた。しろつめくさをたくさん集めて…編んでるみたい?すごい難しそう。
「完成!なかなかの出来だと思うけど、どうかな?」
「すごい!あのお花がたくさん集まって輪っかになってる!」
はなかんむりってことは、これを頭に被せるのかな?
「ちょっとそれ貸して!」
「もちろん」
久遠から借りた花冠をそのまま久遠の頭に乗せる。
「わっ、俺に被せるのかよ」
「久遠かわいいよ!」
照れているのか、少し顔を赤らめている。
「いいから!これはハナに被せるの!」
見た目よりもずっと軽く、本当に乗っているのか不安になるほどだ。手でそっと触れると、確かにそこにある。初めて味わう不思議な感覚だ。
「どう?」
「かわ…に、似合ってるよ」
そう言って視線を逸らす。すると、熟れたリンゴのように真っ赤な耳が現れた。
「ふふっ、久遠照れてるの?」
「別にいいだろ、照れたって」
二人は、この壊れた世界で確かな絆を築く。今、この世界は二人だけのものだ。しかし、ハナはまだ知らない。二人の物語の終焉が、刻一刻と迫っていることを。