鴉と天使の思い出
「鴉は……彼のことはよく知らないけれど、私にとっても大切な人です」としか言えなかった
(小説の中の登場人物だなんて私なら言われたくないし、知りたくないかもしれない)それに観測者がこんな切なそうな顔をしてくるとは思わなかった。どうやって、彼らに伝えればいいのだろう?
「鴉はキューブと一緒にいます。なぜか、わからないけど黒い蝶が……道案内するかのように表れるんです」
「黒い蝶……鴉は生きているのか……そうか」
私は言える範囲で、この必死になっている天使に伝える
鴉のことを考えてくれる人がいることに、たまらなくうれしさで涙が少し出ていた。
自分ではよくわからない安堵と、感情が波を作って襲ってくるかのようだった
「なぁ、その鴉の居場所がわかれば、キューブのことがもっとわかるんじゃないか」と私の顔を健の袖で吹いてくるボタンの輪郭が触る。
さっきみたいにギュイーンとはなっていなかった。素手で触ってないからだろうか……でも今はその優しさが心を温めってくれるかのようだった
「黒い蝶が見えるのはどうやら私だけみたいで……」
「黒い蝶にはおそらく意味があるんだろう死と再生の意味がある」とタバコをつけるためにライターをともしている
落ち着かせるかのように深く吸い込んでいるようだった
「キューブは、鴉を閉じ込めているみたいだけれど、タランチュラは守っている風にも見えてよくわからないんです……黒い蝶は、いつもは姿を見せないが、鴉の居場所をいつも知っているかのようで」
「会いに行くと鴉は、いつも何かを書いており、楽しそうに笑う男だった」
「鴉ってどんな人だったんだ?」と天使に聞く健は、
「俺のことを初めて真面目に聞いてくれた人間だった。同族も理解できないことをすんなり受け止めて、なんてことないように笑う男だった」
「そっか、俺にとっての侑斗みたいな感じか、そしてら早く会いたいよな」
「お前といれば、鴉の居場所がわかるかもしれない」
「でも、たまにしか見えないんです……」
「それでも、鴉と合える可能性があるならそれだけでいい」
「キューブを追っかければ、鴉にも会うことになるじゃないか?」と健は言う
私はどこまで伝えるのか正解かわからないまま、いま天使と健と行動を共にすることになった
もしかしたら、帰る方法が彼らといれば見つかるかもしれないと手に汗をかく
——みんな大切なものを求めて旅をする




