紅の子守唄の少女と、一人の男
——混沌は魔力の力、そして文字は最初の始まりで、終わりである
何も知らずそれを食事のように摂取する人間どもは、その言葉が染み渡り歯車が繰り出すことを知らない
魔法は、言葉であり、言葉は言霊である——それを知っているものはどれだけいるだろう
そして物語を拒むものに訪れる混沌に抗うものあれば、中身が変わり新品に変えられるだろう
そして、それは従順なむなしき異形のもの、それは誰もすくうことは出来ない
光が差さない無機質な部屋で
「眠れ~眠れ夜明けが来ない永遠の眠りが解けるまで~」と歌う少女
「またここにいたんですね」と美しい白い髪の男が言う
「えぇ、ここは静かだから……」という着物の小女の周りには、異様な数なベッドと子供たちの
胸から咲く赤いバラが……それを眺めるように見る。日本人形のような美しい髪の少女に
「君はいつも一人で抱え込みすぎだ」と俺は少女の唇を触ると、受け入れるようにキスをする
「わたしには、あなたがいればいいわ」
「君は、嘘つきだ」
「今日は、いじわるみたいね」と小さく笑う彼女は奇麗だった
「ねぇ、あと、どれくらいの時を待てばいいのかしら、もう待てないわ」と寂しそうな声を出す
「もうすこしで、世界が変わる……俺たちが求めてたいた世界にもうすぐなるよ——あともう少しだ」と
俺は、安心させたいと思い、声を出す
俺たちも、言葉に縛られる奴隷に変わりないのだから——
ただ、あなたのそばにいられる、時間が生きる意味なのだから
意識を失うように、少女が眠りにつくと俺は、いつものように持ち上げ抱きしめながら運ぶ。
するすると幼女に戻っていく愛しい人、もうこの時間が来たのかと思う
時間が巻き戻るかのように姿が変わる。その様子は神の羽化だということを表すかのような美しさだった
どんな姿でも、愛しいことに変わりはない
その思いがどれだけ彼女に伝わっているかは、わからない
それでも、ただ待つんだ事が変わる時を
全てが、変わるとき、やっと息ができる世界が……あるのだ
歌を歌わなくなる時、言葉を映さなくなる時、文字が力を失う
文字は呪縛であり、心を逃がしてはくれない、永遠の檻となるそんな、永遠の時間をいつまでも待つ俺たちは、哀れな怪物なのだろうか——




