紅の時間
リンリンと音を鳴らす男がいる、その周りにはおびただしい人達
そんな人たちにうんざりしながらもいう。
お前の願いは……と問う口からは、まるで奇麗な天国の花畑にいるような幻想が映し出されているようだった
ある中年の男は、蝶を捕まえようと追いかける
花を摘んで冠を作るかのように手を動かす疲れたOL
どこかいびつで、満たされていない人間が集まっているかのようだった
口々にいう
「天国にいきたい」のだとあきれたフードと仮面で隠された男は言う
「おまえは、私に何をしてくれる?」
「なんでも差し上げます。ここにいたいのです」と縋りつく信者たち
——なら、お前の一番大事にしてるものをもらおう
その信者の頭をつかみながら、螺旋を抜く脳から出たフイルムをすべて取りきると仮面の男は去っていく
信者はうれしそうな顔をしている不気味さに誰も気にはしなかったのだった
*
*
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子守唄がきこえるかのようにVRの中で寝る、沙月
それは見たくない現実からの逃避行のようだった
神の、アリアの力で眠っている少女と小鬼もすやすやと寝ている
それを小さい手でなでるボス
「紅の行動範囲が、広がってきてる。今まで通りにはいかないかもしれない
みんな、気を付けるように」
「ルリ、何か言いたげだね……ボスは、思ってることはわかるけど。
みんなの意見を聞く器の広さがあるからね。なんでもいいなよ」
「沙月が来てから、紅の動きやキューブが加速的に成長している気がします」
と疑問に思っていることを言うと、
「それは、ボスも気づいていたけど、今ここのままにしとくのは危険だ
現実世界でどんな影響が起こっているかわからない」
「沙月を全力で守るつもりです。だからこそ紅のことを敵のことをもっと知っておきたい。それに、ラビットがどうして紅の男と一緒にいるのかも
知らなければいけないんだ……」と力強く声を出すと、
「そうだね、もう少しルリには、話しといたほうがいいかもしれない。
本当は樹がいる時がいいのだけれど、どこまで話していいか。
影響が計り知れないし、恐怖は紅の大好物で、恐れれば恐れるほど戦えなくなる魔法使いではいられなくなる恐怖と快感は紙一重だからね」
そう口をボスが開こうと開けているとき……
物語を改ざんしている機関も大騒ぎの真っ最中だったスーツを着た幼児たちが
キーボードを一心不乱にたたいている。
「なんで、僕の担当はいつも大変なことになるの?ひどいよ徹夜だよ
エラーを探し出して報告しろなんて、なんで僕ばっかり」キーボードをたたく幼女は、周りもエラの音で赤く光っている
(大体何が起きてるのかもわからないのにどうして、僕の責任なんだよ)と
オオカミのぬいぐるみをなでる
ここ最近僕たちの世界で、平和な時間がない気がする
みんな徹夜でイライラしてるし、お部屋に帰れてない同僚もいっぱいだ
「なんだかおかしい気がしないか」と上司はチャイを僕に私ながら言う
間違えてないということは相当参っているのだろう
(あっ、チャイおいしい)と思いながら聞いてると
「真面目に聞け。世界がぐるぐると回っている気がする」
「回っているのはあなたですよ倒れないで。急患・急患です」と医療量AIに電話をしたら、オーバーヒートですねと運ばれていく上司
——本当に、何かがおかしいみたいだ




