帰れない
沙月の胸に白いバラが咲き誇るのをいつかいつか止まっているかのようなつぼみと刺が沙月を覆う
「どうして、こんなことに」と父親が嘆く、見知らぬVRの機械が目につけられている。スマホも観たこともないものだった……。
*
*
*
沙月はそのころ、帰ろうとログアウトをしようとしたが、エラーです
故障しています
サーバー復旧をお待ちください
と、音が鳴り響き、パニックに落ちようとしていた
「私、帰れない……帰れなくなってるどうしよう」
「そんなはずはっと、いい」私のゴーグルの位置にあるボタンを探す
「なくなってる……どうして」と愕然とした顔で見てくるルリに私は、もうどうしたらいいかわからず
ぽろぽろと泣き出す私にどうしたらいいにかわからないような様子の藤——
「どうしよう、どうしよう」と天井を見ながら出れないことに嘆く
(安心できる自分の部屋に戻って、整理したい思いはいっぱいあったのに、お父さんや、お母さんにも
もう会えなくなちゃうの?)と思い、のどが焼けるように痛く感じる
「とにかく、ボスのところに行きましょう。戻せるかも」とルリが安心させようと、背中をさする
「樹にも、連絡入れてきましたから」といい私の体を支えながら歩く
あぁ、私が絶対に安全だと思って、無理なことをしたから、その罰なのだろうか
黒い靄が、私の心を黒く染め上げ行くかのようだった
「私のせいだ」と小さくつぶやく自分の声が妙に大きく感じた
「ボス、大変です。沙月が……」とルリの顔を見てすべてを理解したような顔をする
「ここから、出れなくなってしまったんだね、現実世界ではもう三日もたっていることになっている」
「病院にいる沙月の肉体のそばに樹がいる。こんなことは初めてだよ。紅と戦ったことがある樹でもこんなことはなかったのに……もしかしたら、攻撃されたときに心理的なロックがかかって、自己防衛モードに入ってしまっているかもしれない」と淡々というボスに、
怒りがなぜ湧いてくる。完全な八つ当たりだということは自分が一番わかっているのに……
「とにかく落ち着くために、整理いたしましょう」と私をゆっくりと迎え入れる
季節外れのこたつにはイラつくよりも、安心感が勝った
ここは、何も変わっていないことに、喜びさえ感じたほどに……
さっき会ったことを、話すと涙が出てくる
泣いたところで何も変わらないというのに、それでも感情を抑えられずなく。
熱くなる頭の中で、私は、こんなこといつぶりだろうかと考える
私の背をなでるアリアと、説明を一生懸命代わりにしてくれる樹
藤は、私に抱っこされながら、何を言ったらいいか迷っているようだった
私の体は一体、戻れるのかわからない、当たり前にいつでも戻れると思っていたのに……




