沙月の思い
「危なかったね、沙月、藤怖かったよ」と秘密基地で抱き着いてくる藤をよしよしとなでる
ぐすっぐすっとすする音に、本当に怖かったのだと思う……怖かったのは私だけではないと思った
「そもそも、戦いには向いてないんだよ、白の魔法使いは、癒しの力がメインだから攻撃には弱いんだよ……
それにしてもラビットがあいつと一緒にいるなんて……」とルリは考え込んでいるようだ
私は思わず、「戦いが弱いの?」と聞くと「そうだね、修繕の力であり、破壊の力じゃないからね」と
初めて聞いた—
「だから、これからは勝手な行動をしないこと!樹は、訓練や慣れがあって攻撃もできるけど、沙月じゃ刃が立たないよ」と言われ静かに頷くと
「これからは、無鉄砲に飛び出さないでください……心配になるでしょう」と言われ、起こるより心配してくれるのを感じる優しい風で私たちを包みこんでくれかのように、奇麗な目をしていた
「ラビットって……知り合い?」と疑問に思っていたことを聞く、
「彼は、私の友人でした……それも生まれた時からの、だから……」とその落ち込みようがすさまじく、もう来てはならないと思うほどに悲しんでいるのが伝ってくるかのようだった……
「それにしても、沙月はどうやって、あそこにたどり着いたのですか?急に走り出したので、何か言っていたことは聞こえたのですが……」
「黒い蝶——前に見たことがある鴉へと続く蝶、」とだけ伝える
私が藤やルリを危険な目に合わせたのは変わらないことだった——それを考えるだけで、唇が震える
「ごめんなさい、勝手な行動して……あんなに危険のことが起きるとは思わなかったの。でもこれも、いいわけだよね」と藤のおでこに涙が落ちる
「冷たい、藤は大丈夫だよ。ケガしてないもん」と、私の洋服を握ってくる
「確かに、今夏は反省しなければいけないことは多いですが、あなたが無事でよかった。本ようにそう思いますよ」と少し困ったような顔で、私の頭をなでくるルリに呼吸が、少ししやすくなった気がする
そのかぜは、暖かいそよ風のような時間が流れていく
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「まったく、甘いよ。君は、逃がしてなんかやらなければよかったのに」
「あぁ、でもあちらも仕事だからな、こっちもむだに働きたくない」
「本当にそれだけかな~ラビットは怪しいと思ってるよ」
「そんなことより褒美はいいのか?いらないのか?」と手を差し出す男
「いるにきまってる!ラビット頑張ったもん今日」と欠伸をしながら、手を握ると歩き出す
その後ろを追うように、タランチュラーも動き出す
「お前を守るのが、俺の仕事だ」と蜘蛛に手をかざすとそれに反応するかのように小刻みに揺れるのだった




