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その先に——

樹に送られて公園の前におろされると、「俺は、今から用事があるから」とすぐに帰ってしまった

名残惜しそうに手を振ると、腕に重たさが残っているかのようだった


何が悲しいわけでもないが、今日読んだ小説のことや、樹との会話を思い出す


——鴉とはいったい何者なのか 私は、不安と期待を持っているVRの世界で出会った鴉はどうやら記憶を失っているみたいで、悲しそうに不安げな瞳を思い出すと、心臓がきゅっと音が鳴るようなきがした

どれだけ心細いことだろうかと、なぜか、涙がこぼれてくる


顔に垂れた雫のなまぬるさに、あぁ、自分は悲しいのだと気づく


「私にはみんながいるけど、鴉は一人ぼっちでいる……」と思うと、次に会ったときにはカラスを助けたい

助けられるかわからないけれど、側にいて話を聞いてあげたい

そう思うのは贅沢なのだろうか

魔法使いとしてではなく友人になって彼の世界を覗きたいと思うのはわがままかもしれない

でも素直にそう思ったんだ

知りたいことはたくさんあるけれど、孤独にいさせたくない

——私が樹たちと、出会ったから変れたんだ


家に入ると、いつも通りの玄関のにおいを感じる

ほっと呼吸ができる

そこで自分の変化を感じる、リアルな世界で感じることは少ないのに鮮明に感じることができている自分に驚く

自分の世界は、鈍く感じづらいものだったのに

どうして変わったのかは、私にも分からない



自分の部屋に行きベットに座ると、うしろに倒れこむ


沈み込む間に、これから自分がどうしたらいいのか、考える

何かをつかみ取ろうと、手を開けたり閉めたりするこの時間さえも、進む世界に自分は追い付けられるか

不安になってくる

でも、私は一人じゃない

ただ、それだけは確かなことだ

私は、変わっていく、水に反響するかのように、映り込む世界に手をとどかせたい

やっぱり、小説の改ざんは許せないが、なぜ、それが必要なのかという疑問がわいてくる

キューブの特性と言ってしまえばそれまでだけれど……



——私の知らない真実まで残り僅かまで迫っていることを、私は知らないでいる

  そこにはいったい何があるのか

  私自身の砂時計の砂が落ちるかのようだった……














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