表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/46

世界が狂う日

 この世界は狂っている、それに気づいたのは弟が死んだ時だった

タバコに火をつけながら、肺に煙を入れる

「あいつが生きていたら、健みたいに動いていたんだよな……」と一人部屋にいる俺は隣の部屋続く扉を見る。

弟が死んだ日、俺の後ついてくる弟が可愛くて可愛くて、いつも一緒にいた

そしていつものように、遊びに行く俺について来ようとしていたが

道を渡るとき、後ろからドンという音が聞こえた、後ろを見るとお気に入りの青と白のボーダの服が赤く染まっている子供がそこにいった

「にちゃ」というつも言っていた唇がもう動かないことが分かり世界が灰色になったんだ

俺は、棺桶のもう動かない弟を触る。5歳のことだった

「おぎゃあ」と似つかわしくない声が響く

「大丈夫よ、クローンを作ったから安心して又、育て直せばいいのよ」といい

愛しそうに見る親の顔を見たときに、この世界は狂っている

「俺の弟は一人だけだ」と泣き叫ぶ俺に不思議そうな顔で見ると

「形も遺伝子も同じなのだから、一緒でしょ」という母を見て

同時に俺は家族をすべて失った——


苦い記憶を思い出していることにイラつきながら、タバコの火を灰皿に押し付けて消す


俺は健の部屋に続く扉を開けると、すやすやと寝ている音を聞くと静かにのぞき込む

疲れているようでよく寝ている健の、髪を触る

「……侑斗、待って」と寝言を言う目元が濡れている

あぁ、健は世界から誘拐されてきたのだということに、必ず健をもとの世界に

戻してあげたい……でも失うことは恐怖でしかない

少しの時間しかたっていないのに

心にあいた穴を埋めるようにいる健を俺は手放せるかわからない

あいつらと同じになってはいけない狂った世界に落ちるわけにはいかない

俺は正義側にいなければ——

健が起きないように、部屋を出ていく

自分の部屋のベットで、少し考えすぎた脳を落ち着かせるために、眠りにつく

「にちゃ」と懐かしい声がする。温かい夢を久しぶりに見ている

あぁ、太陽のように明るい弟を抱きしめて、俺は言う

「俺の大切な弟は、お前だけだよ」そんな俺に

「にちゃあ、大丈夫?」という声がこだまする

覚めたくない夢の中で、腕を思いきり伸ばすと、花が散るように崩れていく

あぁ俺は今でもこの世界に、生きている自分が、呼吸をするたびに呪われているかのようだった

「うぁ!!」と飛び起きると、健がそこにいって勝手に来ていた健を見ると

「どうして」と震える唇でいうと

「なにか、食べ物がないかと思って」と答える健にほっとした

「あぁ、何でも食べていい」と言いながら

食料を渡す、完全食ではなく、水耕栽培でできた野菜を渡すと喜んだように少し笑う

「ありがとう」とボソッと呟き自分の部屋に戻っていく健の後ろ姿を見送る前に、首根っこをつかむと

「俺が、料理を作ってやる」と言い引き留める手には確かな温かみを感じた















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ