「鼓動」の世界へ
「Q.主人公の名前の由来は?」と文字が浮き出す
「A.侑斗 自ら道を切り開き、人を許せる人になってほしい」と答える
「正解です。 鼓動を修復します」 と文字が映し出される
あっけなく、鼓動の話が修復される
目を開けると、樹たちが時間が動き出す。 自分の体に戻ってきたことを手をにぎったり開いたりすることで確認すると藤を思わず落としそうになったがなんとか耐える
タランチュラーが突然消えこけそうになる樹と何が起こったのかわからず唖然としてるルリが私を見てくる
「いったい、なにが起こったんですか?」といつもより大きい声でいう精霊と
「あぶねー」 と言いながら体を起こし、変身を解く。
大きかったキューブはキーホルダーのようになったコロンと音がした
修正完了しました、鼓動開きます。と沙月と藤が、吸い込まれていく
本だけが置いて行かれ、心配する声が聞こえてくる
周りを見渡すとそこには、侑斗がいて……。ここが『鼓動』の世界なのだと再認識する
周りには私と藤の事は、見えていないようだった。「沙月、どうしよう」という藤の頭を
撫でながら、自分も落ち着くために感触に集中する
思い切って、車いすの侑斗の肩に手を置くと
巻き戻しをされているかのように世界が目まぐるしく変わる
チンと音がした。
平等警察が去ったあと、侑斗が連れてかれてトイレのタンクに入れられていた
辞書は兄が持ち出していた。
弟の侑斗が、自分のしている性格と少しずつ変わっていることには、気づいていた
それが何かはあの日までわからなかった…。
勝手に部屋に入ることは禁止されており、プライベート空間は平等に守られると決まっているからだ
監視カメラが付いているというのに守られているというのは矛盾を感じる
ある意味、監視カメラがあるから、部屋に入る必要もないし、置いてあるものも、部屋の間取りさえ同じだ 子供たちの部屋は学年ごとに一年に一回リニュアルされる
業者のロボットが来て、家具や色までもミリ単位で同じにするのだ
夫婦であっても朝まで一緒に寝ることはなく、用事がすんだら同じ間取りの部屋に戻る
異常性を感じているのは、俺だけなのだろうか?
矛盾を感じることは、平等の世界に会ってはならないことだということは小学生の高学年のころから
なんとなくわかっていたことだ
疑問は持ってはいけない、質問も平等に行われる。俺の質問を嫌がっていることはロボットの反応で分かっていた。自分が考えた質問に対して答えが帰ってこなかった時、俺は質問をするのやめたのだった…。
俺はあいまいな世界で、考えることをやめて不確かででも、安全な世界にどっぷりとつかっていた
それなのに、弟は見る見るうちに退屈そうな意志の弱い感じから、はっきりとした性格になっていた
弟の親友が奇病になった後、弟の様子があまりにも酷く
監視カメラを確認したところ、キッチンから何枚もの袋を持って行った
錯乱状態な弟がトイレの中で、一体何をしていたのだろうか?
確認しに行くとトイレには時間が経っているからだろうか見た目は、いつもと変わらなかったが
タンクの蓋の周りが少し湿っていた
開けてみると、そこには袋に何重にもしてある本が入っていたのだ……。
急いで取り出しよく見ると、辞書の用だった。俺が知っている辞書は厚さ薄く、文字も空白が目立っていた。重さがあるそれを持ち出すと監視カメラに映らないように、俺も違和感がないように
鞄に入れる
次の日、弟も奇病にかかるが俺は働きに出なければいけない
弟が心配だから、そばにいてやりたかったが、もしこれが見つかったら、弟は何されるかわからない
だってこんなことは前代未聞なのだから……。
監視カメラの確認したログをどうしようかと思ったとき、ある人を思い出す
唯一俺の疑問にうれしそうに答えてくれたあの先生の事を。
昔使っていたスマホで俺は急いで連絡を取る
先生が教えてくれた、オリジナルアプリでチャットをする
小学生の高学年の時、やってはいけない時間にスマホをやっていたと半ば言いがかりのような扱いで
取り上げられたときに入れられていたにアプリだ。
家に帰り、打つと秘密のやり取りができるが緊急用だった。チャットの中で念押しされたからだ
直接、先生の脳内にデーターが行くそうだ。
先生だけにはいってもいい、信用できる大人だ。
今は侑斗の担任をしているのを聞いて驚いたが、安心感があった
「先生、侑斗の親友が奇病で平等警察に連れていかれました。
侑斗が、トイレに隠していた本を見つけました
監視カメラの調べたログや、内容を見られたら……。持ってはいけなものを持った侑斗は
どうなるんでしょうか?
何か罰を受けるのでしょか?捕まってしまうのでしょうか?
先生……俺はどうしたらいいのでしょうか?」
しばらく何事もないように装うのに精一杯だった。
「監視カメラのことは、こっちで何とかする。安心しろ 辞書は職場のロッカーに入れて
おいてくれ、取りに行く。こっちで保存しておく」と短いが確かに先生の言葉だった
みんなにはなるべく隠しているが、ぶっきらぼうにでも、安心できる話し方を俺は知っている
工場につくとロッカーに鞄を入れる。
先生を信じて、祈る気持ちで置いていく。




