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鴉と紅と白の記憶

彼の肩におそるおそる手を伸ばし触れると、部屋が現る


小説家らしい、本に囲まれている書斎で、 紙の本がひしめき合うように置かれている



分離している鴉は椅子に座り、自分がVRに繋がれていることに気づいていないようだった



くるりと私を見ると、少し驚いた顔をするとすぐに表情を戻してそれ以上に気なることがあるようで




「私を知っているのか?」ただそれだけを聞いてきた


その声は、まるで彼のために作られたかのようなきれいな透き通った声だった





からす」と緊張に包まれながら言う




「私は、どうしてここにいる 私は自分のことが分からない」とパニックに落ちるかのように呼吸が浅くなっている




沙月(さつき)はどこかの小説を真似して、「ゆっくり深呼吸をしてみましょう」と言いながら


肩をポンポンとリズムをとるかのようにやってみる




落ち着かせるために、沙月はゆっくりという




「あなたは小説家でペンネームが鴉といいます。 もしよかったらあなたの覚えている話を


 聞かせてはくれませんか?」




「ワタシが小説家……。どうりで本がいっぱいあるのですね」部屋全体を改めて見渡している




「自分のこと以外の、関係のないことなら覚えていることがあるんです」という




どうやら、自分の記憶はないらしいけれどどこから湧いてくる知識はあるらしい




少し、まだ警戒はされているようだが、拒否されていないので、本来人好きな性格をしていたのかもしれない




そこで、ボスの言っていた白と紅の戦いの話を聞くとは思いもしなかったんだ……。


少し落ち着いたのか、鴉と言われる作家が、忘れていても小説家の片りんを出しながら語り出す




「ワタシは、いつからこの部屋にいるのかわからない……。 気づいたら本と一緒にいた


 書斎に心地の良い雰囲気を感じていた、これが鉄筋の冷たい部屋だったら、


 耐えられなかったかもしれない。


 私には、はるか昔、平安の時代の映像がよぎる。そんなはずはないのに……」


 短い文の中に膨大な情報に沙月は、処理をするのが追いつかないでいる


 そもそも、鴉と会えたことだけでもパニックになりそうなの抑え、話を聞いているので


 頭が追い付かない…。なんとか、散らばった破片を集めて、話を聞こうと気合を入れる


                     *

                     *

                     *



(くれない)と白の戦いは、はるか昔、平安の前から存在する神たちの戦いが起きていた



物語それは魔術師が使う強力な魔法の形で、お互いに小説家などを囲い書かせていた。


魔術は昔、陰陽道ともいわれていた。平安の世で書物がいっぱい誕生したのも、


書くことをはやらせ、物語を読む人たちの想像力というエネルギーを奪っていた


寝ているときに、読んだことで鍵穴を作られそこから奪われる


 紅は、自らのために使う魔法で、いわゆる西洋で言う黒魔術


それと、対抗するのは白の魔法使いは、人のために使う 白魔術


その二つの勢力が、物語を使い、崇拝させることで力を得ていた




紅は、珍しい子供たちを集めて夜な夜な儀式をして力を得ている


平安の世で子供攫いが蔓延し、不安の渦が巻き起こりその原因は紅の鬼だといわれるようになった




時は、平安。雪から生まれたような綺麗な髪からまつ毛まで白い双子が生まれる。


それを、恐ろしがった双子の父親は、絶対に人の目に映らないように、かん口令をひいた。


双子は室内でしか生活ができなかった。不思議と食べ物や、生活に困ることはなかった。




それでも、子供たちはすくすくと育ち、母親は愛情を持ち、寂しさを感じさせることなく育つ


年が五つの誕生日いつもどおり、母親と双子の弟と楽しく不自由もあるがそんなことを感じないくらいに幸せだった、あの時までは……。


酉の刻に布団で、寝ようとしていたところ、足音と子供ながら殺気を感じて起きる。


ピチョンと額に赤いしずくが落ちるのをぬぐうと母の心臓にかけて腹が切りつけられている


「かあさま?? かあ……あぁあぁ」


その男は、邪魔だというように、母を足で蹴る。


皆が振りふりかえってしまいそうな美しい造形をしているであろう顔が歪むとこんなにも恐ろしくなるとは…。


「ねぇ、おきて、かあさま」という片割れ


「異形なものめ、俺の子だということ事実だけでも汚らわししい。何も有益なことはなかったが、


 これで俺は救われる」


異形?? という言葉は、子供にはわからないが、その男が恐ろしいのはわかった


母が息がまだあったのか、小さい声で「逃げて……」というと頭を踏む


「無駄に息をして、こんな女を一度でもいいと思ったのが汚点だ」




一緒に逃げようと双子は手をつなぐ


五つの歩幅など、大人に取ったら軽くつかまえられる




指をさして、どちらにしようかと選んでいるようだった。


弟が腹を殴られ、気を失っている


それに対して、悲鳴を上げるとうるさいと頭を殴られ、血を出す兄


「こっちは使えなくなった。そっちのを持っていく。あとは報酬だ」と血だらけの子供を投げつける


「売るなり、奴隷にするなり殺すなり好きにしろ」


「こんな美しい、男の子をもらえるなんて…。報酬としては十分です。ぐへへ」とあまりにも


 醜い下腹が出た男だった


「美しい? お前の趣味には反吐が出るな、お前のやっていることは聞きたくもないが……。


 抜かりがあったら分かってるな……」と美しい男に言われると、ちじみこむ


 それだけで、関係性が表れているようだった


 そこから、暗転したままだった 二人の子供たちの行方はわからない

 

                      *

                      *

                      *


「平安」 「アルビノ」という単語でボスが思い浮かぶと頭をフリフリと揺らす


 鴉にその様子に心当たりがあるのかと疑いの目で見られている気がする


 何かを待つかのように、私の答えを待っている


 鴉自身が自分のことを疑ているため、元気づけてあげたい


 でも、ボスの事を話していいかはわからない……。


 結局何も言えずにいると、


「私が、小説家なら?これが本当にあったことなら、僕の本も利用されているのか……」


「それを開放するために、私たちが動いています。何ができるかわからないけれど


 一人じゃないことを感じれれば……。伝え方が下手でごめんなさい」と沙月は


 一生懸命、自分の言葉で伝えようとしている。




それが、相手に伝わったのか。ほっとしたような顔でいる




沙月は、鴉がVRに繋がれていることを思い出し、伝えようとすると声が出なくなる。


まるで強制的に言えないようにされているようだ・・・。


もう一度言おうとしたら、何を言おうとしたか内容をパズルのピースが崩れていくかのように、


忘れてしまった。ピースはあるけれど、全体が分からなくなったように思い出せない


部屋が地震のように揺れ動く


「『鼓動」の本を探しているんです 正しい物語を修復しないと」


探そうと崩れ行く、部屋をかき分ける


一冊の本が光り出す そこに黒い蝶がひらひらと舞う


「ありました!」と振り返ると、部屋はなくなり鴉もいなくなっていた。




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