緊急事態 隠れ家へ行く
誰もいなかったので急いで取りに行き、受け取ると思ったより軽かった。
開けてみると、ブルーの可愛いフリル柄のスマホと、クマが書いてある折り畳みのVRゴーグルが入っていたポーチつきで。
「かわいい~」と思わず言葉が出る。
アプリの通知音が、鳴る。
「届いたか? それでどこでも、安全にできるみたいだ。俺はもっとシンプルなのがよかったから、
クリーム色のシンプルなものになったけど、色変更はできなかった。でも、くまとフリルだけは
阻止した」と、私は読みながら苦笑いをしている樹が思い浮ぶ。
「ボスに伝えてくれてありがとう。それもすごい早い。でも、どうして?」と驚きながら打つ。
「あるなら、早く渡してくれればいいのに。そのままでいいのかと思ってて聞かれなかったからだとボスに言われた……」
なんとも、困ったことだがその話を聞いてボスはかわいいという思いが先に来るのはやっぱりヅレているからなのだろうか?
樹はこれで今回の問題が解決することと、VRまでラブリーなのは阻止したけど、
色は変わらない。そしてそんな樹を見て笑うルリを想像し、自然と口元が緩んでしまう。
「色を変えられない理由は、誰のかわからなくなるかららしい」
「ありがとう」と思いを込めて文字を映し出す。
お辞儀しているくまスタンプを押して上からなぞりスマホを置く。
早速、部屋でVRを使てみることにした。
沙月様 ログインします。ようこそ
「さつき、おはよ~う」と藤藤が手をブンブン降っている。
「うれしいね~」と手を引きながら、歩いていくと樹やルリがいったが、
なんかいつもと違う様子だった。
「早く、行かないと。発生源はどこだ」
「落ち着いてください。こういう時はいつも通りに、行動するのがいいんです。」
切羽詰まったような雰囲気に飲み込まられそうになる。
「あっちから、俺たちを探しに来ようしているかのように行動するなんて初めてのことだろ!」
タランチュラの背に四角い箱を乗せながら移動している。
「やみくも感はありますが、あちらから動いて近づいてきているので、いつもと様子が違いますね」と言いながら藤と私を抱きかかえて移動する
「サーバー的に見つかることはありませんが、かなり近くまできているようです」
藤は、小さい手を静かににぎにぎしながら空気を読んで静かにしている。
色とりどりのお菓子の町につく、甘い香りが鼻を通ってくる。
「ここ、逆に目立ちすぎませんか?」と、思わず言うと樹は苦笑いしながら
「まあな、でもここはぼボスが監修しているから一番安全だろうから。」
樹も、いつの間にか、変身している。どうやら聞こえるか聞こえないかの蚊の鳴くような声でも、緊急時には許されるみたいだ。
藤も思いついたかのように、本を開き、魔法のスッテキを取り出し、フンと鼻息荒くこちらを見ている。ブンブンとステッキを振りながら沙月に渡してくる。意気込みがすごいのはわかったが、
「いつでも逃げられるように、変身はしておいて、とりあえずお留守番
藤は、沙月を守ること。お互いはぐれないこと。以上」という
「わかりましたね。ここは安全だと思いますが万が一何かあったら
約束釣り逃げること一番に考えて、全力でお願いしますね」
一足先に出っていた樹を追うルリ。
二人とりのこされ、顔を見あってとりあえず、言われた通りにすることにした。
「お願い、元の姿に戻って」というと部屋の中でブルーの服を着ている私の周りに風船が落ちている。
「樹は、さっき変身するときは出ていなかったよね?」と藤を見ると
「省エネ変身だから、いろいろ省けるの」
「なら、いつもそうすればいいのでは?」
「すごいエネルギーを使うから現実世界に戻ったときすごい疲労するの~」と藤は口を触っている。
本を再び開くと「否定は力なり。樹とルリをみせて」というとページが動き出し、姿が映し出される。
樹とルリははっきりと輪郭を持った蜘蛛の前にいた。
*
*
*
タランチュラが思ったより、動きが早い。ルリが戦っているところを初めて見た
蔑みの目をしながら「汚いですね、触らないでください」 自分が攻撃されそうになると、物理的に思いっきり本の角で殴っている
「ほら、来ますよ、本気出してください」と樹に声をかけている
「分かってる」というと魔法のステッキが剣に変わる。
蜘蛛の足と剣がぶつかり合う
『カキン』足とは思えないような金属の音がする
「ありえない、ほとんど実態がないはずだろ……」
「いつもと違いすぎますね。気を付けてください樹」
「あぁ、」
躊躇なく、足で体を貫こうとしてくる黒い巨体に、襲われる。下からはい出し
頭を蹴り、飛ぶとタランチュラの図体が見えた。
俺は、互角には戦えているが、今までこんな考えを持った動きをしてこなかったからだ。
ルリの言う通りいつもと違いすぎる。剣も緊急時以外は出さないのに躊躇なくステッキを剣に変えるように判断した相棒を見るとかなり焦っているみたいだ。
見ることしかできない沙月は、歯がゆさと爪痕が食い込むくらい手に力を入れる




