魔法訓練、ルリの正体は?
次の日、公園で待ち合わせをして会うと、昨日行ったVRで登録作業をさせられている。書類があって、ここに書くと登録完了らしい。
VRの世界で樹が、
「魔法使いにはバディがいて俺の場合、人工精霊のルリで、 沙月のバディは小鬼藤という事になる。
ここまでは問題ないな?」と言う樹に思わず、
「ルリって人工精霊だったの?って言う事は妖精?」と投げかけると
「妖精ではなくて僕は、魔法石から作られています」と説明するルリの瞳は揺らいでいたそんなルリのことを知ってか知らずか樹は、説明を続ける
「まずキメ台詞を決める、キメ台詞は契約の証だから、変更不可。」
いつかボスにも言われていたと思いながらうなずく「可愛いのにしてよね」と藤は
グレープ味の飴をなめながら言う。
「うーん、どうしようかな。あまり長くても忘れちゃいそうだしな~」
私はできもしないペン回しもどきをする。
「元の姿に戻って」と言うと、「お願いも」つけたらと、藤のアドバイスを受け
「お願い、元の姿に戻って」にしようかと考えていると
(これだったら、年とってもいけるかな)
「ちなみに、魔法使いの引退は二〇歳だから、二〇歳まで使っても恥ずかしくないセリフが良いぞ」とアドバイスに
「引退ってあるんですか?意外と早いんですね」と返すと
「イメージ力が衰えて変身が出来なくなる」と樹は言うと
「俺も、あと一年で引退だ、継ぐ人が出来て一安心だ」
沙月は、樹とは引退した後も会えるかもしれないけど、小鬼の藤とはあと、4年しかいられないことに愕然してしまう。魔法能力が無くなるという事は藤を見ることが出来なくなることに直結している。
私の中で雨雲が、広がっていくようだと眉間にしわが寄りながら考えていると
「沙月、大丈夫?」と藤に言われ目を見ると不安そうな瞳に
沙月はすぐに笑顔を作って、とりあえず、今だけの事を考えようと思った。
樹にとてもじゃないけど、ルリといられなくなるのは寂しくないのと野暮なことは聞けない。私は、藤と決めた「お願い、元の姿に戻って」と書き込んだ
「変身は済ましているから、飛行訓練をする。
いわば明晰夢を見るときと同じ訓練方法でジャンプした後の浮遊感を想像する」と言いながら、
「できた。」そうすぐに沙月は出来てしまったのだ二~三回ジャンプしてそのまま
延長するかのように想像したら言葉通り、すぐにできてしまった。
「おいおい、マジかよ、俺はだいぶかかったぞ」と頭をかく。
優雅にアフタヌーンティーをたしなむルリと順番をお構いなしに子供用いすに座りケーキを食べる。
「すごいね~」藤は相変わらずフォークを持ちながら手をたたきながら目までパチパチしている。
「樹は二日はかかりましたからね。早いですね、最初の頃はアメンボのようでした」と頷くルリに
ワナワナと肩が震える樹、レッサーパンダのように手を上げる
「俺は、普通だ。たぶん。沙月が異常なだけだ!」と威嚇している。
「そうですねぇ、確かに、異常な速さです」と、頷き紅茶をすする
「自分達だけ、優雅に過ごすな!」という口にマドレーヌを突っ込むルリ
「沙月も、たべよう」と言いながら、腕を引く藤と、
いつもの癖で、咀嚼が少なくて済みそうなものはないかと探す沙月、小さいプリンがあったので手に取りながら座る。もう沙月が目に入らないかのように、ケーキにくぎ付けな藤
そんな二人の様子を見る。「いくらでもあるから、落ち着いて食べなさい藤。」とほっぺについたホイップを取ってあげるルリをみながら、樹は魔法使い新人の沙月のことを考える。
ある日突然現れた少女は、規格外の速さで習得していることに、驚きと疑問を持っている。見た目は、大人っぽいが普通の女子高生で、魔法使いになることもいつも通り、断られると思っていたが・・・。
沙月は、ただ事の大きさが分かっていないだけかもしれないが、どこか違和感を感じる。 悪意など感じないはずなのに、ぐるぐるとかき回されるような、不安感と期待感でおかしくなりそうだ
(危なっかしいから、とりあえず、しっかりと見ておかないと。)
珍しく、考え込んでいる相棒の顔を見ながら、そろそろだなと心の中で呟く
いつもうるさいくらいに喚く男だが、どこか真剣身を帯びた顔を見るのは久しぶりだった。
出会ったあの日以来、こんな顔をまた、見れるなんて思わなかった
相棒といられるのも、あとわずかだという事を、説明を聞きながら、改めて実感する。
樹自身は、どう思ってくれるだろうか。ときおり不安になって、隠し見る
あとわずかな時間を僕は、何度も反芻して生きていけるのだろうか?
それは、この先どれくらい続けなければいけないのかと考えるだけでも途方に暮れそうで、物思いにふけるなんて人工精霊らしくない。いや、僕らしくないのだ
「まだまだ、説明しなければいけないことがあるのですから、休憩は終わりです」と本を閉じると、「今、休憩したばかりだ~」と勢いよくツッコミを入れてくる
いつも通りの相棒を見ると、安心できた。




