1、現在 亜希一人夜の丘の上に立つ
木乃実亜希は、寒空の下でうっすらと凍える体を抱えながら丘の上に立っていた。女の子一人でこの浜辺の見えない丘を登ってきた理由は、冬の美しい星座を次回作のネタにしたかったからだ。冬の大三角、オリオン座、そして寒さに負けて視界が狭まった星々。しかし、亜希の思考は星座のことよりも、今はとにかく体の寒さを乗り越えることに集中していた。
「風、冷たすぎるよ……。」亜希は独り言を呟く。
「3倍着てきても何の役にも立たないじゃない。ああ、死にそう!」カイロは持ってこなかった。言い訳ではないが、寒さを軽視していたのだ。
彼女の頭の中では、冬のダイヤモンドがどれだけ厄介なものか、と考えていた。侑斗の奴は適当に星をつなげばあの形になるだろうと簡単に言うが、明るい星が多すぎて一体どれがどれだか分からない。「無責任な奴!」
亜希は思った。寒さなのか、苛立ちなのか、体の芯まで響く感覚が伝わってくる。
そのとき、地平線の下から何かが聞こえた。見えない場所からの声。「助けて……」それは、何かを切望する響きだった。
「また始まった。もう本当に勘弁してほしい!」亜希は叫んだ。誰もいない丘の上で、一人の彼女には、声が次第に大きくなっていくのが分かる。心の隙間を突くような声だった。「私に何をしろっていうの!」
しかし、声はさらに強く響いてくる。何かを要請する声。
夜空の星々は、彼女の未来を待ちわびているかのように輝いていた。そして亜希はついに、丘を下りる決意を固めたのだった。