再生される前の世界
甲城トキヤは、**「枝の神子」**として地球の大樹を守っていた。しかし、かつての仲間たちを裏切ったのは彼自身だった。
目の前には、そびえ立つ地球の大樹。彼はその前で剣を構える。
クリアライン・ブレイド。
葵瑠衣が創り出した異能の剣。素材は、命懸けで切り落とした地球樹の枝。
彼女の力は、物理法則の範囲内で自由に物を創造するものだった。
「トキヤ、本当に瑠衣はもういないのか?」
仲間の一人、カナイが不機嫌そうに尋ねる。この剣を創る際、瑠衣の肉体を解放したことが気に入らないのだろう。
「今は集中しろ。敵が迫っている。」
トキヤの視線の先には、神子の頂点に立つノアがいた。
地球樹を守るため――そう言いながら、ノアは彼らを追ってきた。
「このままアイツらの思惑通りに進めば、世界は終わる。選択肢はない。」
トキヤの隣にはベルティーナ・ファラ・ラナイがいた。
ラナイの国最強の姉の強大な力で、このステッラの地球に飛ばされた少女。
ベルティーナの姉の力に憧れた葵瑠衣は、ついに姉のもとへ行ってしまった。
そのせいか、ベルティーナは幼い姿のまま、トキヤのためにできることをしようとしていた。
「ファラ」
トキヤはベルティーナを見つめる。
セカンドネームで呼ぶのは、彼女がそれしか名乗っていないからだった。
「トキヤ、ここまで来れば、後は私の差時間操作で食い止められます。今のうちに……」
姉の意思がこの空間を包み込む中、ベルティーナは自分の地球、ラナイの国へ帰る時が近づいているのを感じていた。
「大丈夫だ。俺たちはここで消えるが、お前だけは守る。だから、後のことは頼む。」
それが、ベルティーナが聞いたトキヤの最期の言葉だった。
トキヤは地球の大樹に向けてクリアライン・ブレイドを振るう。
――世界の終わりを告げるような地響きが鳴り響く。
巨大な木は、わずかな幹と根を残して倒れ、消えていった。
そして、世界は一度崩壊し――
再び再生を始めた。