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青いガーネットの奇跡  作者: 村松希美


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4 砂漠のオアシス 2

 それは、理科の時間だった。先生に、これからいろいろな実験をするので、5人一組のグループを作るように言われた。1年生の時は、出席番号順調で決められていたが、理科の相楽(さがら)先生は、型にはめようとする教師ではなかったので、自由にグループを作らせた。


 ほとんどの生徒は、好きな子とグループを組めるので喜んだが、麻子たちは、困り果てて、理科実験室の8つある大きな机にポツリと座っていた。


「わたしたちと一緒に座ってくれる女子なんていないよね……」

 はるかが頬杖(ほおづえ)をついていった。

「そうね」

 麻子も途方に暮れた。

「どうしよう」

 はるかがため息をついた。


「よう、どうしたんだ、お二人さん!」

 麻子とはるかが後ろを向くと、真司が公平と一緒に立っていた。

「この席、空いているだろう?」

「真司、いいの? 菅野君たちと一緒じゃないの?」

「あいつらは、お目当ての女子がいるんだとさ。だから、俺たち、あぶれちゃった訳。俺たちより、恋を選んだのさ。男の友情も恋の前では何とやらだよな~、公平」

「そんなこといっていいのか? 真司だって、いつそうなったって、おかしくないんじゃ……」

 公平が茶化すように真司の顔をのぞき込んだ。

「な、何だよ、公平、変なこというなよな」

「まあ、いいさ」


 公平は、はるかの隣の席に腰をかけた。真司がその隣に座った。

「あれ、真司はあっちじゃないの?」

 公平は、麻子の隣に空いているイスを指した。

「バカ、俺はここだ」


 公平は、麻子に笑いかけた。公平は、小学生の時、女子たちの噂を鵜呑みにして、麻子のことをあまり良く思っていなかったが、真司と友だちになって、真司をいいヤツだと思い、その真司が気にかけているのが麻子なので、考えが変わってきたのだ。

 麻子は、公平が自分を見る目が以前と違うので、何だか嬉しかった。


「でも、あと1人足りねえな」

 真司が腕組みをした。そこに翔がやってきた。

「ここ、いいかな?」

 翔は麻子に声をかけた。

「いいよね、みんな……」

 麻子がみんなに訊く。はるかと公平は気持ち良くうなずいたが、真司はうなずきながら、胸の中がモヤモヤした。


 翔は、男子たちから一目置かれ、女子たちにも人気があったので、当たり障りなくつき合っているが、特別仲のいい友だちを作ろうとはしなかった。

 誰も話しかけない時は、1人でポツンと空を眺めていることが多かった。その表情は、麻子に見せる時のそれとは違い、どこか冷めていた。


 麻子は、そのことが少し気になった。でも、だいぶ慣れたとはいえ、これ以上嫌がらせをされるのは快いものではなかった。翔と話をしていたら、女子たちににらまれる。麻子は、こんなことを考える自分の臆病なところが嫌でならなかったが、感じるものはどうにもならなかった。


 それに翔は、別にみんなから浮いている訳ではないし、自分がしゃしゃり出ることもないと思った。でも、サッカーをやめていたことはやはり気になった。


「サッカー、どうしてやめたの?」

「まあ、いろいろあってね。でも、また、続けることにしたんだ」

「良かった。でも、翔君、あんなにサッカー好きだったのに、どうしてかな?って気になったの」


 麻子のヤツ、何いってんだ。最近の俺には、あんなにやさしくないぞ。鈴木にあんなにやさしいこといって…… あれじゃあまるで…… 俺って何考えてんだ?


 真司は勝ち気なところはあるが、自分は冷静な理性の持ち主だと思っていたが、このことになるとどうしようもなくイライラしてくる自分が嫌でならなかった。

 こんなことでは、ホームズさんに近づけない。


 そんな真司を公平がおもしろそうに眺めていた。


「あの美山先輩には参ったよ」

 翔はペンケースから、ミサンガを取り出した。

「これを受け取ってくれるまで、毎日でも僕の家に来るっていわれてさ、本当に毎日来たんだよ。それで僕もとうとう根負けしちゃったという訳」

「そのミサンガ、美山先輩が作ったの?」

「まさか、違うよ。先輩の彼女だってさ」


 翔のいつもの冷めた表情はどこかへ行き、昔の無邪気な笑顔に戻っていた。


「それで、僕も、麻ちゃんにいいとこ見せようと思ってさ。放課後のグラウンドで練習やっているから、良かったら、見に来てね」


 えっ、今のはどういうことなの?


 麻子は豆鉄砲を食らったハトのような顔になった。


「麻子、早く返事しなさいよ。鈴木君が直々に誘ってくれているなんて、行くっきゃないよ」

 はるかが麻子にささやいた。

「鈴木君、わたしも行っていい?」

「もちろん」

 翔はそういいながら、真司の方をチラッと見た。


 何だよ、あいつ、何でこっちを見るんだよ。


 真司は一瞬、翔の目をにらんだが、そらすように、持っていたマンガに目を向けた。


「それより、麻ちゃんは大丈夫なの?」

「えっ?」

「何か嫌がらせとかされてない? 江波さん以外、女子の麻ちゃんを見る目が変だし……」

 翔が小声でささやいた。

「だ、だいじ……」

「麻子、何をいうの」

 はるかが入ってきた。

「わたしたち、とっても大変なんだから」


 はるかが麻子と席を代わって、綾乃たちのことを話し始めた。

 翔は驚いた顔をしている。女子たちは、翔の前では、麻子たちに普通に接していたからだ。麻子は、また、冷たい視線を感じた。綾乃と利香が、キッと、麻子たちをにらんでいた。


 桜小路さんは、翔君と話をしていたら、いつもより特にすごい目でわたしをにらむ。どうして? 1年生の時よりも嫌がらせが酷くなったけど、それは、はるかとの仲を割くためなのか、それとも……桜小路さんは翔君が好きなのかしら……?


 酷い言葉や暴力で、綾乃を傷つけた覚えはないのに、どっちにしても、麻子は、何でこんな目に遭わなければならないのか、理不尽だと思った。







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