side story ドキドキサマーデート 4
「交通事故だ!、女の子だぞ!」
と、誰かが叫んでいる。
(まさか、麻子?)
真司と翔は、ダッシュで外に出る。
事故現場には、人垣ができかけているところだったから、真司のところからでもよく見えたが、黒い車が退廃して、大量の血がアスファルトに流れてきていた。
女の子は、お腹から車にはさまれていて、苦しそうに歪んだ顔をしていた。腰まである長髪だったので、真司は、麻子ではないと判断して、ホッとしたが、女の子の苦しそうな顔を見ていると、急に麻子のことが、内臓がちぢみそうになるくらいに心配になってきた。
それに思い返してみると、今日は、レナのことといい、翔のことといい、亡くなった人のことばかり聞かされている。
これらが、真司の心の中で混ざり合って、真司は、麻子の家に向かずにはいられない思いだった。
傍にいた翔が、
「仁川、気分が悪いのか? 顔が青ざめているぞ……」
といい終わらないうちに、
「ごめん、帰る!」
と、真司の身体は、バス停の方に走り出していた。バスは見えていたのに、真司が到着しないうちに、発車してしまった。
バスの時刻表を見ると、桜ヶ丘町行きのバスは、昼間は30分に1本しかなかった。
(30分もじっと待っていられない!)
真夏のジリジリ照りつける太陽の下を、真司は走りだした。
暑さも距離も時間も気にせずに、たた、麻子のことだけが心配で走ったが、日陰もなく、太陽が容赦なく照りつけるアスファルトでは、真司の身体もそれほどもたなかった。
暑さと喉の渇きや、身体が動かなくなって、道路の白線の内側に、真司はペタンと座り込んで、
(どうしよう、これから……?)
と、悩んでいると、
「どこまで行くの?」
と、白い乗用車の窓が開き、30代半ばくらいの男性に声をかけられた。
真司は思ってもみないことだったので、目を疑ったが、天の助けと思った。その男性に経緯を簡単に話し、桜広場まで乗せてもらうことにした。
「ガールフレンドを心配してか。そりゃ、それだけ不吉なことが起きたら、心配になるな」
クーラーが効いた涼しい車に乗っても、さっきまで走っていた真司の体力はすぐには戻らなかった。だから、この男性の言葉に返事をする気力もなかった。
助手席に新聞をおいていたから、珍しいとも思わなかったが、真司は、その男性の職業を推察することも、勿論、できなかった。




