side story ドキドキサマーデート 3
トゥルルルル~、トゥルルルル~……
(電話!、真司からかしら?)
麻子が玄関の電話に向かおうとすると、
「うぇ~ん」
というリョウの泣き声がする。麻子は、電話が気になりながらもリビングに戻ると、リョウが、ガラスのテーブルの上においていたオレンジジュースを派手にこぼし、わんわん泣いている。
「リョウちゃん!」
麻子が駆け寄ると、リョウは麻子にピタッと抱きついて、
「あさねえちゃん、どこにもいかないで~!」
と、心細そうに、麻子の腕にしがみついている。麻子は、ハッと気づく。
今日のリョウちゃんは、家でも、おばあちゃんが倒れて、おばさんもいつものおばさんと違っただろうし、わたしも真司のことで頭がいっぱいだったから……。
誰もリョウちゃんに気が向いていなかったから、不安になったのね。でも、真司、どうしよう……?
真司は公衆電話の受話器をおいた。
麻子、どうしたんだろう? 電話に出ないということは、家を出たのかな? もう少し、待ってみようか。
そうこう考えて、また、表門の前に戻って外を見ていると、翔と目が合った。
真司はヤバいと思って、トイレにでも隠れようとしたが、逃げる間もなく、翔から声が掛かった。
「やあ、麻ちゃんとデート?」
「いきなり、何だよー」
真司は何だかバツが悪くなって、こんな答え方をした。翔は思ったことをそのまま口にしただけだが、真司は、からかわれているように解釈してしまった。真司が、またもや自意識過剰になっているだけだと判断できずに。
「でも、麻ちゃんがいないな。 待ち合わせ? これから来るの?」
「そんなことより、鈴木は何しに来たんだよ?」
真司は、話題を変えようと慌てていった。
「映画に決まっているだろう、『名探偵ドイル』」
「えっ?」
「仁川たちも?」
「そ、そうだけど……」
真司は、麻子と2人で見たかったのに、この展開は……?と、焦ってきた。
それを察したように翔は、
「一緒に見ようなんて、野暮なことはいわないよ」
真司は何て返したら良いのか分からなくなり、でも、余裕たっぷりの翔を見ていると、何かいい返したくなったが、言葉も見つからず、黙ってしまった。
翔も黙ったまま、周囲をおもしろそうなものを見るように観察しているようだった。
しかし、母親と父親の間にはさまり、両親に手をつないでもらい、楽しそうにはしゃいでいる小学1年生くらいの男の子をうらやましそうな目で追っている翔を見ると、真司は、いい返す言葉を見つけたとばかりに、
「何、うらやましそうな顔しているんだよ? 鈴木にもあっただろう?、あんな時期」
からかってやろうと、真司が翔の顔を見ると、
「ああっ」
と、翔がうわの空で返事をした。でも、顔は悲しそうだ。
(俺、何かヤバいこといった?)
真司が心の中で自答していると、
「仁川に変な顔見られたかな?」
と、翔は笑っていったが、目は悲しそうだった。
「何だよ、鈴木らしくないぞー」
「父さん、いないから、つい……」
「えっ?」
「自殺した。麻ちゃんから聞いていないの?」
「あいつは、人の秘密を、いくら俺でも、そんなに軽々しくいわないよ」
「そうか……」
翔は少し喜んでいるようだった。
「でも、俺が……」
麻子の彼氏だからなーと、真司が釘をさそうとすると、外の方から、ガチャンー!と、すごい物音が聞こえてきた。




