side story ドキドキサマーデート 2
シーサイドシアター表門に着いた真司は、辺りを見渡した。平日だから、カウンターの前にはまばらに列ができていて、親子連れや中高生の友だちグループや年配のおばさんグループがいた。
中には、真司たちのように、中学生らしいカップルも何組かいて、その中でも目立っている一組を目で追っていると、「名探偵ドイル」ではなく、「紺碧の海」という恋愛映画の方に入って行った。
(俺にはできないや)と思いながら、(自意識過剰になっているだけだが)、真司は、また、表門の方に目を移した。
麻子が来る様子はない。代わりに、また、中学生のカップルが入ってきた。
(本当だったら、今ごろ、俺だって)真司は心の中で毒つくと、腕時計に目を移した。
12:50。「名探偵ドイル」の開始10分前だった。
(こりゃ~、間に合わないな。でも、麻子ん家に電話してみよう)
と、思って公衆電話の所に行きかけた。すると、
「おにいちゃん!」
という幼い女の子に呼ばれ、ズボンを引っ張られた。
(誰だっけ?、俺に幼い女の子の知り合いなんていたかな?)
と下を向くと、実習体験の保育園にいたレナが真司の顔を見上げていた。
「レナちゃん!」
真司が驚いて声を上げると、
「レナ、誰なの?」
と、レナと一緒にいた50歳前後のおばさんが立っていた。
「おにいちゃん」
レナはそのおばさんにもさっきと同じことをいった。おばさんが首を傾げているので、真司は慌ててシーサイド保育園での実習体験でのことを説明した。レナのおばさんは納得して真司を見た。
「レナちゃんも、ドイルを見に来たのですか?」
真司がレナのおばあちゃんに聞くと、
「レナは『うぐいすパンマン』の方よ」
と、レナのおばあちゃんが微笑んだ。
真司が「うぐいすパンマン」の館の方を見ると、大きなショルダーバッグを下げた若い母親と幼い子ども連れが多かった。
「娘が生きていたらね……。私じゃね。レナには可哀想なことになったけど、たまには映画くらいと思って。『うぐいすパンマン』をこの子に見せてあげたかったの」
真司は、レナの両親が交通事故で亡くなったことを思い出して、何といったらいいのか分からなかった。
レナちゃんに出会うといつも、浮かれている自分を思い知らされる。
真司が立ち尽くしていると、レナのおばあちゃんが、
「まだ若いあなたに、こんなことを言って悪かったわね。でも、レナは、今年の保育園で、中学生のママのことばかり話していたわよ」
(麻子のことだ)真司は、もう一度、レナに麻子と会わせてあげたいと思ったが、まだ、麻子の姿は見えなかった。
「うぐいすパンマン」の上映10分前のアナウンスが流れたので、レナたちは真司と別れた。
麻子のヤツ一体どうしたんだろう?
真司は、館内の売店前の公衆電話に急いだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
この物語は、家電話や公衆電話が出てきます。
携帯電話もスマホも中学生にはあまり普及していない時代です。




