14 ちゃんと告白
校門近くの前庭の桜の木陰のベンチのところまで麻子をおぶってやってきた真司は、麻子に、翔がさっきくれたペットボトルの冷水を飲ませた。
「ありがとう。わたし、もう歩けるわ」
「無理すんなよ」
「それより、真司、一緒に帰りましょう」
「いいけど……」
2人は校門を出て、バス停まで無言で歩く。
バスに乗っても、どちらからも話しかけない。しかし、2人は何も話さなくても、居心地が良かった。
真司は、麻子を送って行こうと、桜ヶ丘町1丁目のバス停で麻子と一緒に降りた。
桜広場の桜の木が、風にそよいでいた。
「ねえ、真司、桜広場に寄ってみない?」
「でも、暑いぜ……。おまえ、体調が悪いんだろう?」
「もう、だいぶ良くなった。木陰があるから大丈夫よ。最近、真司とあんまり話をする機会がなかったし……」
麻子は真司の手を握り、12時の桜の木下のベンチに引っ張って行った。
麻子に手を握られて、真司はドキッとなった。
麻子は、大きく深呼吸をする。
今度はわたしからいわなくっちゃ……。本当の気持ちを自分の口でちゃんというの。
「真司、わたし……」
「待って、男の俺に先にいわせろ。
俺、麻子のことが大好きだー!
あの図書室で会った時からずっと好きだったんだ。それなのに俺、何か麻子のこと、からかってばかりで……素直じゃなかった」
「わたしも素直じゃなかった。真司が大好きだったのに……」
真司の顔が、夏の光をたくさん浴びたひまわりのように輝いている。
「でも、まだ、信じられないわ。わたし、あんなに誤解されるようなことばかりしていたのに……真司はどうしてわたしのことを嫌いにならなかったの? 何だか夢みたい」
「おまえなあ、そういういい方はよせ」
「でも、わたしなんて、成績も良くないし、運動だってできないし、みんなから嫌われていたし……いいとこ全然ないじゃない」
「あのなあ、前にもいっただろう……もっと自分に自信持てよ。俺が麻子とつき合いたいと思ったのは、最初は、おまえもホームズさんのことが好きだったし……それに、俺って正義感が強い方だから、かわいそうな麻子のことを放っておけないというスーパーマンのような気持ちだった。
でも、麻子とつき合っているうちに、分かったんだ。おまえといると何だかホッとするんだ。
まあ、俺は誰に対しても自然体のつもりだが、麻子といると、もっと自然体でいられる。気をゆるせるというのかな……。
どうして、そうなんだか考えたんだ。
麻子はあんなにつらい体験をしているだろう?
つまり、人の痛みを知っているんだ。だから、おまえといると俺は何だか安心する」
真司は、こんなことをいうのは少し照れくさかったが、麻子にもっと自信を持たせたいという思いと、さっき、好きと告白した勢いでいった。
「わたし、そんな聖女なんかじゃない。痛みは分かっているつもりだけど、怒ったりすると、実行しなくても、人を傷つけるようなこと、思ったりする」
「そんなの仕方がないんじゃないの? 感情ってそういうもんさ。怒ったら、誰だってそうなるさ。
でも、麻子の場合は、痛みを知っているから、自分が悪かったと思ったことは、後になって、後悔するんじゃないのかな?」
「どうして、どうしてそんなことが分かるの?」
「俺を誰だと思っているんだ? シャーロキアンの仁川真司だぜ! 人の心を察することができなければ、一流の探偵にはなれないさ。
まあ、今回のことでは、俺も『好き』って感情に振り回されてばかりいたけどさ……」
麻子の顔がポッと赤くなる。真司も自分で口にしておきながら、照れくさくなり、慌てて話題を変える。
「でも、ホームズさんはああいっていたけど、人の心を察するなんて、果てしないよな~。
俺、痛みだなんて偉そうなこといってるけど、今までけっこう幸せに生きてきた俺には、その本当のつらさなんて分からない。でも、分かりたいと思う。
人の痛みが分かる人が増えなければ、いじめなんて卑劣な行為はなくならないんだ。
だから、まだまだ、これからさ」
「今日の真司、何だか格好いい!」
「えー、そりゃないぜ。それじゃあ、今までの俺は格好良くなかったのか?」
「どうかしら……」
まぶしく照りつける太陽の下を、麻子がおどけた顔で走り出す。
「麻子のヤツ、待て~」
真司が後を追いかける。暑さなんて感じない。
また、いつもの俺たちに戻ってる!
悪口はいい合っているけど、麻子と真司は、心の中でつながっていた。
真司は、こんな瞬間を大切にしたいと思った。
読んでいただき、ありがとうございます。
麻子と真司、ようやく告白できましたね。
ここまで、2人を見守ってくれてありがたいです。
でも、この回でラストではありません。
「青いガーネットの奇跡」の本編は、もう1話あります。
よろしくお願いいたします。




